デートで定番?なお昼ご飯
「ふぅー、面白かったねぇー」
「あぁ、ルマン三世はやっぱり最高だったな。あの大量生産されたルマン三世を川石五左衛門と二次元太助が足止めするのすげぇかっこよかったよな!」
「ね!私はあのミモーのカラクリを破るシーンが凄くよかったなぁー」
まちについてからデカデカと映画のタイトルが張り出されている映画館から出てきた俺達二人は、興奮冷めやらぬといった状態で互いによかったシーンで盛り上がっていた。
まさか令和の時代でも作られ続けてるルマン三世の一番最初の映画を生で見れる日が来るなんて思わなんだ。人生何があるか本当にわかんないねぇ。
「っと、いい時間だしそろそろお昼ご飯にしようか」
「お、いいな!俺も丁度腹減って来た所なんだよ」
「とか言って、さっきポップコーンあんなにもしゃもしゃ食べてたの知ってるんだからね。お昼ご飯食べれるの?」
「ふっふっふっ、女子にはわからんだろうがこれくらいで男子は腹いっぱいになるなんてありえないのさ」
むっ……言うじゃないか礼二。せっかく美味しいお店教えてあげようと思ったのに……よし、そこまで言うなら……
「よしっ、お昼ご飯は私が奢ってあげよう!」
「えっ、いやでも……」
「いいのいいの、トイレ行ってる間に映画の代金私の分も払ってくれてたからそのお返し!ほら、美味しいお店知ってるからいこっ!」
そう言うと俺はいつものように礼二の手を引っ張り、俺イチオシの店へと礼二を連れて行くのだった。
そしてそのイチオシのお店は────
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「へい、味噌チャーシュー麺とギョーザお待ち」
「いただきまーすっ!んー、これこれ!これが美味しいんだ〜♪」
お昼時なのに人も少ない、だが少な過ぎるという訳でもない、高い所にテレビが置かれ、ポスターや値札がある壁には首振り型の扇風機が設置されたいい感じに歴史を感じるラーメン屋だった。
「千代といえ、女のオススメの店っていったらこう、オシャレな店だと思ってたんだが……」
「そんなお店も勿論知ってるよ。でもそんなお店よりもこういったお店の方が礼二はいいでしょ?」
「へい、特大ギョーザと特盛チャーシュー麺お待ち」
「まぁな……って特盛?!それも二つって、お前俺にそんなの頼んでたのか?!」
「ふっふっふー、女子には分からないんでしょ?中二男子の腹具合とやらは」
さっきそんな事言ってたの聞いてたもんねー。
「く……やってやらぁ!」
ニヤニヤと割り箸を割りながらそう煽る俺にカチンと来たのか、そう言うと礼二は勢いよく割り箸を割り麺を啜り────
「んんっ?!なんだこれうっっっっまっ!えっ、うまっ!」
「でっしょー!」
このお店、案内されないとわかんないレベルの場所にあるから本当に知る人ぞ知るお店なんだけど、ギョーザとラーメンは最高に美味しいんだよね。
教えてくれた先生とマスターに感謝だ。
「さっ、礼二たーんとおたべっ」
「ん!」
先程の煽りに釣られた怒りはどこへやら、今はもう目を輝かせラーメンとギョーザを礼二は頬張り始めたものの、流石に映画館で食べたポップコーンが効いたのか……
「うっ……やべぇ。あと少しなのに腹が……」
ギョーザ残り一つといった、もうあと少しといった所で奮闘虚しく礼二はそう言ってテーブルに手を付いてしまう。
「元凶の私が言うのもなんだけど、大丈夫?」
「なんとかな……勿体ねぇから勿論全部食べるけど……す、少しだけ待ってもらっていいか?うっ」
こいつったら無理して食べようとしやがって……
「仕方ないなぁ……ほら礼二」
「……?」
「あーん」
「?!ちょっ、お前!」
「どうしたのさ礼二、ほら食べさせて上げるから。あーん」
「さっ、流石にそれはっ!」
「なぁにー?やっぱりもうお腹いっぱい?」
「いや、そう言う訳じゃ……」
「じゃあ大丈夫だね。ほら、口開けてー。あーん」
「あ、あーん」
「ん、食べきれて偉い!ごめんね無理させて、ちょっと意地悪したくなっちゃって」
「いや、いい。あの最後の一個は今までで最高に美味かったし」
「ふふっ、そう言って貰えると店長さんも喜ぶよ」
「……そうじゃねぇんだけどなぁ」
「さて、それじゃあ何処かで休憩でもしてからもう少しデートと洒落こみますか」
どこかガッカリとした、しかしなんだかとても嬉しそうな礼二を前に、俺はそう言って微笑むのだった。




