夢への一歩
「頼む。この店のために千代、お前の力が必要だ」
「んー分かった。えっ、今なんて?」
今にも雨が降りそうな曇り空の下、いつものようにお店のお手伝いをしていた俺は父様の唐突なセリフに思わず素で聞き返してしまう。
「この店の儲けを増やす為に千代の案が必要なんだ」
「あ、あぁ。なんだそういう事なのね……」
てっきり店の跡取はお前だ、とかそんな意味かと思ったよ。
「というかさっきからお客さん居ない時に頭抱えてうんうん言ってたのはそれが原因?」
「あ、あぁ。本当、よく見てたな千代。流石俺の娘だ」
「えへへへへ〜♪」
なでなで最高〜♪っとと、いけないいけない。
「それで父様、私は何すればいーの?」
いつの間にか膝の上に座らされ頭を撫でてもらっていた俺は、本題に戻るべく頭を撫でる父様の腕を両手で持ち上げそう尋ねる。
「正直この間の事もあって気が引けるが……千代、女性から見たこの店にないあったらいいものはないか?」
女性から見たあったらいいもの?
「……それ、私に聞く?」
この間それで喧嘩したのに。というか知らないだろうけど俺元男なのに。
「いや!それに関しては本っ当に申し訳ないと思ってるが、最近色々と新しい商品を仕入れようと思っててな、そこで千代に意見を貰おうと……ダメか?」
しゅんとした父様……なんか、可愛い……!じゃなくて、確かにウチに買い物にくるメインの客は女性も多いからなぁ……
「それならまぁ、少しくらいは手伝えるよ?」
「本当か!?ありがとうな千代ー!」
「わわわっ!父様苦しい苦しい!はーなーしーてー!」
「す、すまん!千代ももうベタベタされるのは嫌なのかもしれんな……」
「?」
「いや、なんでもないぞ千代。それよりこれ、来月から仕入れようと思ってる商品の表だ。目を通してもらえるか?」
「りょーうかいっ!」
父様にそう言われびしっと敬礼を取った俺がいつも通り父様のお膝の上に座ると、なんだか父様はいつも以上に嬉しそうに、そして優しく俺が表を読んでる間腰に手を回して落ちないようにしてくれる。
「なるほどねぇー」
「お、読み終わったか、相変わらず早いな千代。んでその手に持ってるのは……」
「読みながらあったらいいもの書き出してみた!」
「……流石だなぁ」
「でしょでしょー?」
しょーうじき女の人がどんなのがいいかとかは俺じゃあはっきりとはわかんないけど、俺があったらいいなぁって思うやつは……
「それでとりあえずあったらいいなって思ったのはキッチンペーパーだね」
「きっちんぺーぱー?」
おっと、この時代じゃキッチンペーパーって呼び方じゃ無かったな。
「リードって言うやつ、お料理で使うからキッチンペーパーって呼んでみた。オシャレでしょ?」
「あぁー、あれか。去年の十一月くらいに発売されたやつ」
「そうそう」
本当の歴史通りなら去年の七月辺りだった気もするけど、まぁ小さな頃から数ヶ月くらい何かがズレてたりするし今更気にしても仕方ない事だな。
「これがあると色んな料理が手軽にできて便利なの。だからこれあるとすっごい助かるし、今の所これ扱ってるお店ってこの街にはないから飛ぶように売れると思う」
「なるほど……これはあれか、千代とか一恵さんが料理に使ってるあの紙か」
「そうそう。助かるだけじゃなくて沢山使う消耗品だから、さっきも言ったけど直ぐに売れると思うな」
「ふむ、分かった。これは入荷を前提にちょっと考えてみよう」
「やったぁー!」
俺の意見が初めてお店に影響を与えたぞー!自分のお店への第一歩だー!
「はっはっはっ、そんなに嬉しいか?」
「うん!」
「そうか、そんなに喜ぶなら父様も嬉しい限りだ。さて、書き出してあるものの説明、どんどん頼めるか?」
「任せて!えっとね、このラップとかはね────」
父様にそう言われ、俺は意気揚々と紙に書き出していたハンドクリームや学校で流行り始めてる紙石鹸なんかを説明し、途中────
「このナプキンって言うやつは────」
「女の子の必需品なのっ!絶対売れるしないと困る奴だから!」
毎度毎度無くなる度に街で買うの大変だからうちの店で扱ってたらいいなぁと思って書いたけど、いざ何に使うか聞かれると恥ずかしいなこれ!
女性の気持ちがまた一つ……
「そ、そこまでいうやつなのか……ちなみにどんな────」
「母様にきいてっ!」
「は、はい!」
なんて事もあったが、父様は俺の説明をちゃんと聞いてくれ、その数週間後、お店にはその商品達が並んでおりまた一歩夢に近付けたと思う俺であった。
ちなみに本当に母様に聞いたらしく「娘にセクハラ紛いの事をした」と言わんばかりに落ち込んでいたのは、また別のお話。
元が男なのであーいうのを聞かれると普通の女性以上に恥ずかしがる、というイメージです
( ˙꒳˙ )イロンハミトメル




