ゴブリンの集落
神闘気に《無限》の権能を使った俺は轟音と共に吹き飛ばされてしまった。
「いってぇ…何が起こったんだ?」
<権能により増えた神闘気が体から溢れだしてしまったのが原因です。なので、今後《無限》に神闘気を使うのならば神闘気の熟練度をあげる必要があります。>
「ああ、分かったよ。」
やっぱり、《無限》の権能を使うには早かったか…。魔力や闘気と同じく神闘気も《無限》を使っても"誓約"により放出量までは無限にすることはやはり出来ないようだ。
これからは、魔力や闘気、神力、神闘気などの同時放出量を増やす訓練をする必要が有りそうだな。魔物を狩ってレベルアップするのも同時進行でやった方がいいだろう。
「おい!大丈夫なのか!?」
色々と検討していたらクレアが部屋に入ってきた。
「大丈夫だ。少し散らかしてしまったが」
「そんなのは直せば何とかなるが…。まさか、神闘気を習得したのか!?」
「ああ、習得出来たぞ。」
「なっ!…そうなると修行の内容を考えないと行けないな…」
「その事なんだが少しレベル上げをしようと思ってな。ん?おい、聞いているのか?クレ…」
クレアは少し考えた素振りをした後こちらに向き紫色のオーラを纏った拳で殴りかかってきた。
ドゴーン!
「ほう、基礎は出来ているみたいだな。」
緋色の神闘気を纏いクレアの拳を手のひらで受け止めた。
「もし、俺が神闘気を使用していなかったら怪我じゃすまなかったぞ?」
「すまん、少し試したかったんだ。だが、基礎は出来ていたから合格だ。これなら、あのスキルも完全にものにするのも時間の問題だ。それに、もうすぐ海を渡るから先に食料の調達のため一度地上の街の近くに降りる。お前はその間に魔物を狩ってくるといい。」
何だかんだ認めてくれたのかな。これでより一層強くなって古き迷宮への不安が減った。
「おう、分かった。あー、そうだ!ダンジョンまでどのくらい掛かるんだ?」
「本当なら半年ほどかかる予定だったのだが、ウルスの魔力を吸収して余っていた分を回したおかげで二、三ヶ月後には着く予定だ。」
「結構掛かるんだな。」
「少し寄るところがあってな。それに元々この天空城はそこまでの速度は出ないし、危険地帯は避けながら物資を補充すると、どうしても時間が掛かるのだ。」
まあ、この星は前世のアースランドの数十倍は広いからな。修行する時間も取れて丁度いいな。
そんな話をしていると小さい地震のような揺れを感じた。
「ちょうど着いたようだ。誰かを連れていくか?」
「あー、どうするか。心配しそうだからユヅキだけでも連れていくよ。」
「そうか。私はアンナに変わって修行をつけてくる。いいか、夕方には帰ってくるんだぞ」
「分かった、なるべく早く切り上げてくるよ。」
話が終わるとクレアはアリア達の元へ向かった。
早速ユヅキに伝えに行かないとな。
<ユヅキには念話で伝えました。今、外に向かっているそうです。>
おー、ありがとう。助かるよ。
俺は、転移を使って最初に転移してきた場所まで来た。ユヅキをマップで探し転移して連れてこようと思ったが、ユヅキがすごいスピードで動いていたので無理だった。
暫く待っているとユヅキがローザを担いで走って此方に向かってきた。
「主殿!」
「走ってこなくても俺を待っていれば転移で一緒に来れた筈だぞ?」
「す、すみません。呼ばれたので急いでしまいました。」
「うっ、ぎもぢわるい…」
俺が転移出来ることを完全に忘れていたみたいだな。それに、相当な速度で走ってきたのだろう担がれてるローザが気の毒だ。
「どうして、ローザを連れてきたんだ?」
「アンナ様からローザにはまず魔物でレベル上げとスキルを増やしてきてほしいと言われました。修行の主体は近接戦闘でしたので」
「なるほどな。今のローザだと厳しいか。」
どうせ俺たちと同じくらいの修行レベルだったのだろう。ローザは遠距離攻撃が主体だからな。俺は改めてローザのスキルを見る。
〈永続追尾〉:一度認識した者又はモノへの遠距離攻撃は自動的に追尾し続ける。
「まぁ、いいか。アミンから話を聞いているな?」
「はい、魔物を狩るためにと」
「そうだ、早速行くとするか。どの辺りがいいかな」
<マップに魔物を表示します。西の森が一番魔物が多く強いようです。>
《管理者》のマップ機能で魔物の居場所を探すと西にかなりの魔物が集まっているのが分かった。一匹だけ周りよりも圧倒的な強い魔物が居た。
「よし、そこにいこう。ユヅキもローザもそこでいいな?」
「はい!主殿の赴くところ何処までもついていきます!」
「わ、私も同じく…うっ気持ち悪い」
少し過激な気がするが二人とも一緒についてきてくれるみたいだ。
「じゃあ、森の近くに転移するぞ」
俺は千里眼で森の近くを見てから〈森羅万象〉を使って転移をした。転移の魔眼を使ってもよかったがあれは、使用者本人または他者といった一つの対象しか転移させる事が出来ない。
「よし、ここからは二人とも気をつけて行くぞ。え、そうだ。その前にローザにはこれを渡しておく。」
転移してすぐにローザが武器を持っていないことを思い出した。
「ん?これ使ってもいいの?」
俺はストレージからゼウスに貰ったミスリル製の弓を出して渡した。
「いいぞ。この弓は魔力を矢として放つものだ。だから、矢は必要ないぞ。もしもの時の為にこの短剣も渡しておく。」
弓の説明と同時にこれまたミスリルで出来た短剣を渡した。
「ご主人様、ありがとー!大切にするね!」
「ああ。それじゃあ、早速森に入るとするか。前衛は俺が、後衛はローザがやってくれ。レベルの高いユヅキはローザの護衛を頼む。」
「分かりました!」
「了解!!」
森に一歩踏み出すと多数の魔物の気配を感じた。
~~ピコーン~~
(スキル〈気配感知〉を取得しました。)
(スキル〈敵意感知〉を取得しました。)
いきなりスキルを手に入れて驚いたが、マップを見ると感じた気配と同じ数の魔物が居た。
「二人とも魔物が近づいてきてるぞ。相手は俺たちを標的にしているみたいだ。準備はいいな?」
「はい。」
「あたぼーよ!」
俺はストレージから"太陽刀・滅火"を取り出し構えた。二人にも《管理者》と《魂ノ系譜》により《世界収納》を使えるようにしてあるのでストレージから武器を取り出していた。
「来るぞ!」
俺は、木々の隙間から飛び掛かってきた黒い狼の魔物を"滅火"で一刀両断した。その後から続々と狼の魔物が襲ってきたが〈森羅万象〉で地面から土の槍を生やし突き刺した。
それも避けて攻撃してきたものは全身に闘気を纏い、まとめて叩き斬った。
「ふぅー、これで第一群は殲滅完了かな?大体30匹位だったかな?」
「ご主人様、強すぎ!本当にLv1なの?」
「ああ、今はだったになるけどな。」
殆どLv20位みたいだけど、Lv1の俺のステータスと比べると俺の方が圧倒的に強いのに加えて武器の性能でより力の差が開くからな。
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種族:ダークウルフ
レベル:28
状態:呪い(隷属)
[スキル]:〈咆哮Lv2〉〈噛みつきLv3〉〈統率Lv1〉〈身体強化Lv2〉〈回避Lv2〉
称号:森の主の配下
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このステータスとマップを見る限り、森の主って言うのがこの森で一番強い魔物のだろうな。
《略奪者》は、筋力や魔力といった基礎ステータスも奪えるから雑魚でも、それなりの数がいればかなりの収穫になる。少しローザにもステータスを分けるか。
<お任せください。>
アミンが自動でステータスを振り分けてくれるみたいだ。
「すまんな、ローザの出番が無かった。けど、次がもうすぐ来ると思うぞ?」
「?」
俺の言ったことに疑問を持ったローザと先程から敵を捉えて黙ったまま戦闘態勢に入っているユヅキ。
いくら格下でもユヅキは敵には容赦しないようだ。
「ローザは敵を見つけたら近い奴から順に攻撃をしてくれ。ユヅキはそのままローザの護衛。俺は少し奥の敵を倒す。いいな?」
「ダメです!主殿に何かあったら私は!」
やっぱり、反対されたか…。まぁ、俺のレベルだと心配されても仕方がないがな。
「大丈夫だ。少し暴れるかもしれないから援護に徹してくれ。」
「わ、分かりました。」
「ご主人様、頑張ってね!」
俺はこの前の修行で手に入れた〈天駆〉を連続で使い、先程よりも多い魔物の群れの中心部に降り立った。
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種族:ゴブリン×59匹
レベル:15
状態:呪い(隷属)
[スキル]:〈棍棒Lv2〉〈繁殖Lv1〉
称号:森の主の配下
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種族:ゴブリンソードマン×24匹
状態:呪い(隷属)
レベル:28
[スキル]:〈剣術Lv3〉〈身体強化Lv3〉〈繁殖Lv2〉
称号:森の主の配下
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種族:ゴブリンメイジ×9匹
状態:呪い(隷属)
レベル:31
[スキル]:〈魔力操作Lv2〉〈魔力障壁Lv1〉
[魔法]:〈火魔法Lv3〉〈水魔法Lv2〉
称号:森の主の配下
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〈魔力障壁〉はかなり使えそうだな。〈繁殖〉は使いたくないし魔法系は〈森羅万象〉と被ってるから《略奪者》奪っても意味がないな。一応、スキルをON・OFF状態にすることも出来るし、なんならスキルポイントに変換すればいいか。
〈身体能力強化〉と〈身体強化〉の違いは何だ?
<〈身体能力強化〉は人類が習得するスキル。〈身体強化〉は魔物のスキルとなっています。>
魔物のスキルは人には使えないのか?
<特殊なスキルでも無いと不可能です。ですが、人型に近い魔物や知能のある魔物は人のスキルを習得する事が出来ます。スキルにより千差万別なので例外はかなりあります。>
効果はほぼ同じみたいだし重ねてスキル発動させればかなり使えるな。
突然現れた俺に未だに混乱している。魔物の総数は大体百匹くらいだな。なら、あれを試してみよう。
「じゃあ、取り敢えず"死ね"」
俺は範囲を絞り〈絶望之化身〉を全力で発動させた。そうすると、バタバタと次々に魔物たちが死んでいった。
うわっ…本当に死んだのか?〈絶望之化身〉は威圧スキル何だが、これじゃあ威力が高過ぎだな。
<死因はショック死です。〈絶望之化身〉は使用者の魂を具現化し、恐怖や絶望等の感情を植え付ける威圧スキルです。その為、魂の格によって威圧の強さが決まります。>
<通常は相手に恐怖や絶望させ行動を封じたりできますが、マスターの場合は世界神の魂と幾重もの転生体の魂が合わさったので対象が死を錯覚させるだけに止まらず対象を殺してしまったのです。(世界神の時の魂だけでも異常でしたが…。)>
なるほどな。威力を抑えたり出来るか?細かい操作は苦手なんだが。
<お任せください、マスター。>
範囲を絞ったお陰で10匹くらい逃したがローザが確実に仕留めてくれたようだ。
こんだけのゴブリンが居るってことは最低でもジェネラル、キングが居ると思うのだが、マップで見たかぎりでは森の主はゴブリン種では無かった…はずなんだが。
「ご主人様~!」
「お、ゴブリンを倒せたようだな?」
ストレージに魔物の死体を収納しながら、ローザに聞いてみた。
「うん!この弓凄いね!一撃だったよー!」
「それは良かった。だけど、気を付けるんだぞ?いくら当てることが出来ても致命傷にならない奴もいるからな?」
「む~。もう、そんなこと分かってるよ!」
まあ、何かあったらユヅキが対処してくれるだろう。
「これだけのゴブリンが居るのはゴブリンの集落が出来ているということでしょうか?」
先程俺が考えていた事をユヅキが聞いてきた。
「恐らくジェネラル、キングクラスは居るだろうな。だけど、森の主がゴブリン種では無かったから恐らくもっと強い魔物が居るのだろう。」
「ご主人様は、マップで正確な位置を確かめないの?」
「それじゃあ、つまらないだろ?」
「そうかな~?まあ、ご主人様らしいかな。」
俺の気持ちは余り理解されなかったみたいだな。
「この先にゴブリンの集落があるからそこをまず潰すぞ。ユヅキとローザには気配感知と敵意感知を、それに加えてローザには特別に〈滅神ノ瞳(千里眼)〉を与える。俺が攻めるから俺のいない間は気を付けろよ」
「はっ!」
「あたぼーよ!」
これでローザはかなり離れた位置から一方的に蹂躙出来るだろう。恐らく千里眼を使わなくてもマップを使えばローザのスキルは使えると思うがやってみないと分からない。
俺たちは少し急ぎながらゴブリンの集落へ向かった。
「これは、予想以上の数だな」
俺たちは崖の上からゴブリンの集落を見ていたが想定以上の数の魔物がいた。
これは、エンペラーでもいるのか?それともこの森の主が森の全てのゴブリン種の魔物を隷属させている存在が居るのか?…恐らく後者だな。
「ここは木々が少ないから威力が高くて一番小さい魔法をぶっ放つ。だから、少し下がっていてくれ。そこからなら、先にローザが攻撃をしてくれてもいいぞ。それと、ローザはスキルとマップの併用可能か試してみてくれ。俺は少しやることがある。先制攻撃は任せた」
「オッケー!魔力が無くなるまで射ち尽くすから!」
「私はローザの護衛に努めます!」
「頼んだぞ。」
ローザのスキルなら千里眼と同時発動する事によってどんな所からでも狙撃しても勝手に当たるからな。
俺は〈天駆〉を発動し集落の丁度中心部の上空に翼だけ出すように〈竜化〉してその場に留まった。
~~ピコーン~~
(スキル〈飛翔〉を取得しました。)
これは、便利なスキルが手にはいったな。ローザも矢を打ち始めたからこちらも面倒後とを片付けるか。
飛来してくる沢山の魔力の矢を見て直ぐ様行動に移った。
千里眼と転移の魔眼を同時に使いゴブリンの集落に居る精神が壊れていない人間をこちらに強制転移させ、転移魔法で連れてアリア達の所へ送り届けた。すぐに戻ってきてアリア達への説明はアミンに任せることにした。
下を見ると俺を発見したゴブリン達が騒いでいた。魔法や石礫などを飛ばしてきているが、先に手に入れた〈魔力障壁〉で全て弾いた。
〈魔力障壁〉は魔法ではなく、魔力だけで構成された膜の様なものが魔法・物理攻撃を防ぐものだ。そしてレベルに応じて自由に形を変化させることができる。
複雑な形にすればするほど魔力を使用するし、強度も使用魔力によるものだから普通の人間は勿体なくて〈魔力障壁〉に魔力を割かない。が、俺には関係がない。だから、何重にも複雑に動く〈魔力障壁〉を作ってみた。
俺は〈魔力障壁〉の考察をしているとローザの矢の雨がいつの間にか終わっていた。俺は〈竜化〉を解き始めて使う魔法を発動させようとした。
「喰らえ!極小・太陽爆裂」
指先に収束した超高密度の魔力が圧縮され小さな太陽と化し、ゆっくりとゴブリンの集落に落ちていった。
小さな太陽が地面にぶつかると「ズドーーン!」と轟音と共に超高熱の火柱がゴブリン達を呑み込み全てを焼き付くした。
~~ピコーン~~
(レベルアップしました。)
(レベルアップしました。)
(レベルアップしました。)
…
<ゴブリン×283、ゴブリンソードマン×62、ゴブリンメイジ×24、ゴブリンナイト×56、ゴブリンキャスター×48、ゴブリンジェネラル×19、ゴブリンキング×4、総数496匹です。〈剣術〉や〈槍術〉などのスキルを〈武術Lv-〉に統合してもよろしいですか?>
「ああ、頼んだぞ。はぁー、かなり手加減したんだがな…」
~~ピコーン~~
(スキル〈手加減〉を取得しました。)
「まぁ、なんだ。少し予想できてたな。にしても、この火柱いつまで続くんだ?」
俺がそんな下らないことを考えているとローザとユヅキが駆け寄ってきた。
「終わったぞ。」
「流石です!主殿!」
「ご主人様、オーバーキルなんじゃ…」
ローザはかなり不満が有るようだな。まあ、やり過ぎた感はいなめないが。
「お?やっとお出ましかな?」
集落を囲う木々の向こうから「ドスン!ドスン!」と大きな音をたてて此方に向かってくる一匹の魔物に気づいた。
強靭な四肢、暴力的なまでに力強い太く捻れた角に鋭い牙と爪。その木々の隙間から見せる姿は、"ベヒモス"と呼ばれる化け物だった。
習得したスキル:〈気配感知〉〈敵意感知〉〈飛翔〉〈手加減〉〈武術Lv-〉
奪ったスキル:〈咆哮〉〈噛みつき〉〈統率〉〈身体強化〉〈棍棒〉〈繁殖〉〈剣術〉〈身体強化〉〈魔力障壁〉〈火魔法〉〈水魔法〉〈風魔法〉〈土魔法〉〈回復魔法〉〈呪術〉〈槍術〉〈盾術〉〈弓術〉〈威圧〉〈筋力強化〉〈鼓舞〉
(スキル〈〉を取得しました。)
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名前:ウルス・ルシフル(ウルス・ドラゴン)
年齢:15
種族:滅人【世界神(滅竜神)】、唯一神(太陽神)
レベル:1→254
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名前:結月
年齢:0
種族:滅人[月神]
レベル:2000
[スキル]:〈刀術Lv6〉new!〈気配感知Lv10〉new!〈敵意感知Lv10〉new!
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名前:ローザ・エドワース(佐々木・瑞希)
年齢:14
種族:ヒューマン
レベル:30→153
[スキル]:〈弓術Lv3→6〉〈気配感知Lv10〉〈敵意感知Lv10〉〈魔力操作Lv4〉〈魔力感知Lv3〉
[オリジンスキル]:〈滅神ノ瞳(千里眼)Lv-〉
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〈永続追尾〉
ー 一度認識した者又はモノへの遠距離攻撃は自動的に追尾し続ける。ー