研究資料
俺達は一通りスキルは確認しておいた。アリア達のオリジンスキルは、後々実戦で確認して行こう。
「アリアさん達も大分チート性能になってきたわね!」
「ああ、そうだな。ローザのオリジンスキルもかなりチートだがな。」
「え~、ご主人様と比べると天と地くらい差があるけどね。」
「当たり前です。ご主人様ですから」
「アリアさんも相変わらずね」
スキルを見れば分かると思うが、アリアは特に俺への思いが強いからな。流石のローザも呆れる程だ。同じ思いを持つユヅキと仲が一番良いみたいなのが証拠だ。
過激なスキンシップをしてくるリーベルは論外。ローザはネタキャラ。意外なことに、サクラは超が付くほどの刀マニアで俺やユヅキの刀を見る目がヤバい…。
そう考えると、シアが一番可愛いな。俺を兄のように慕ってくれている。アリア達の影響でこの先どうなるか分からないが、出来るだけ毒されない様に努力しよう。
<すでに、アリア達の影響を受けている様です。>
マジですかぁ~。
「で、ウルス達があのマーリンの研究所を見つけたというのは本当か?」
「ああ、そうだ。これらの戦利品に加え、色々な研究資料があったぞ。」
「ふむ。なら、その研究資料を世に出さない方がいいぞ?」
「何でだ?」
「行方不明になった後もマーリンの研究成果を欲しさに各地で戦争が起きたほどだ。それがどんなに下らない研究でもだ。」
そこまで影響力があるのか。
「分かった。外へ流出しないように気をつけよう。」
「それがよかろう。」
「でも、この研究は少し気になっていたんだ。」
そう言って俺がストレージから取り出した研究資料は、『スライム核の改造』『スライムの液体を操る』『スライスの液体の武器化』という物だった。
「これ、面白そうだけど。耐久力とか操作技術に問題があるって書いてあるね。」
「ああ、耐久力の問題は魔力量でカバーできるし、操作技術は魔力操作のスキルレベルが10になれば余裕だろ?」
「なるほどね。魔力量で硬度も変わるみたいね。全身に纏えば全身武器人間になれるね!」
「殺し屋が欲しそうな物だな。」
この実験をする上で魔術(術式で魔法を行使する術)を永遠に定着させることが前提だからな。そんなことが出来たら色んな事に応用出来そうだけどな。
「これなんかも良いんじゃないか?」
「どれどれ…『人型金属液体生命体の製法(可能性)』ね。人造人間や機械人形の実験途中に偶々発見したものみたいね。ご主人様、これ作ってどうするの?」
「可能ならアミンに肉体をあげられたらな…と思ってな。」
「なるほどね!」
少し面白い方がいいと思うし、出来たらかなり使えそうだからな。
<ありがとうございます。マスター。>
色々世話になってるお礼だ。肉体があった方が何かと便利だろ?
<はい。では、素材をピックアップしておきます。>
この研究資料から分かった素材をアミンにピックアップしてもらいそれに軽く目を通すと殆どのものがレア度の高い物だった。この中で"神魂"と呼ばれる物があった。それは、神を殺す又は神の称号を持つ魔物を倒したときに稀に採取される魂の結晶体だ。
ただでさえ、神クラスの魔物は少ないのにな…。
「ウルス、一応言っておく。生命を創造するなら最後まで責任を持つのだぞ?」
「ああ、分かってるよ。今のところ欲しいのは魂が宿っていない肉体だ。俺の権能に肉体をあげようと思ったんだ。」
「なるほど。それなら大丈夫どろうが、もし新たな生命を創ったとなると異端審問官がちょっかいをかけてくるぞ。」
「ああ、気を付けるよ。」
"異端審問官"と言えばあの唯一神の所でも聞いた名前だな。
<異端審問官は、唯一神直轄の組織の一つです。基本的には表で出来ないことを率先してやっている様です。>
他にもそんな組織があるのか。
<表の"聖十字軍"、裏の"異端審問官"。この二つの組織が唯一神の直轄として動いています。一応唯一神の下には、クレア様を含めた使徒に教会の教皇や冒険者ギルドのグランドマスターなどがいます。教会と冒険者ギルドなどの組織は基本的には中立組織で、二つとも権力から隔離されています。>
なるほど。所属するなら冒険者ギルド何かが手ごろだな。そう言えば、あの国の名前は何なんだ?
<アルゴート神公国です。唯一神がおり、神々からの信託が多く、強者である使徒や聖十字軍などがあり、繁栄したため中央大陸で一番の大国です。>
それはそうだろうな。でも、"神公国"って名前だから教会の者が色々とやっているイメージだな。貴族とかも腐ってそうたし…。
<いえ、殆どの貴族はあまり権力を持ちません。そして唯一神がいるため教会も神である唯一神に逆らえません。他の宗教国家は、マスターの言うとおり神の名を使い悪さをしている所が多い様です。>
なるほどな。これで、あの唯一神のおじさんの株があがったな。
「ふ~ん。テンプレ的な宗教国家は私も嫌だからな~」
「俺もだ。宗教関連は結構めんどくさいからな。特に俺の前世がバレるとな…」
「あはは。ご主人様は信仰される側だもんね。」
ローザの言うとおり信仰される側も結構面倒だからな。"滅竜神"を信仰する国はあるのか?
<竜人族やエルフ族など長寿の種族は信仰している国が多いです。>
はぁ~。バレると面倒だな。
「どうしたのご主人様?そんなやつれた顔をして」
「あったんだよ…」
「何が?」
「俺を信仰する国が…」
「え!ってことはユヅキさんやアリアさんみたいな人がいっぱいいるの!?」
「いや、ほとんどは恐怖の対象らしい。」
「でも、少しは居るんだ。」
アリアは現在ユヅキと共に俺の後ろで直立していたが、俺とローザの話の内容を聞きあからさまに反応していた。
<マスター。アリアからマスターを信仰している国を教えてほしいと言われていますが、どうしますか?>
はぁ~、まじかよ…。面倒だからその辺はアミンに任せるよ。
<了解しました。マスター>
「あ!主人!!これ、なんかどう?」
俺達が話していると、先ほどまで研究資料を見ていたシア達が幾つかの資料を持ってこっちに来た。
「ん?…へぇー。これを考えるってことは、そう何だろうな。」
「どうしたのご主人様?…え?もしかして!?」
「可能性はあるな。」
俺たちが見ていたのは『超電磁砲』や『空中船』、『機動要塞』など前世でSF小説などに出てくる物の製造についての資料だった。
素材を見れば到底造れるとは思えないものだったが、大国なら数百年掛ければ一つ位は出来るだろう。そう考えるとかなり危険なものだな。
「大賢者マーリンは転生者なのかもな。」
「でも、時系列的にあり得るの?」
「俺達の居たアースランドかどうかも分からないが、もし同じだとしても"世界の壁"は時間の概念を超越しているから時系列は当てに出来ないな。」
「そうだよね。他の世界がいっぱい在るんだったよね。あまり、現実味がないけど…」
「私はゼウス様から知識を貰っているので理解しています。」
「ご主人様に聞いて驚きました。」
「私もですね。流石、ウルス様です。」
「僕も驚いた!」
「わっちも驚いたでありんす。一度、行ってみたいでありんす。」
世界がいっぱいある事は知っていてもランクがあることを知らない人が多い…いや、本来は知らない筈だ。
アミンによると今は、原初の世界〉〉〉天界・魔界・冥界・竜界〉〉〉最上位世界〉〉〉上位世界〉〉〉中位世界〉〉下位世界となっているみたいだ。
天界・魔界・冥界・竜界は他の世界とは少し違うが…。
この前、クレア達にも話してしまったが余り驚いていなかった。魔界に行ったことがあるからだそうだ。魔界(天界)は幾つもの世界と隣接しており永遠とも思えるほど広大な世界でもある。だから、世界が沢山あることをある程度知っていたらしい。
「師匠、"使徒"ってのは何なんだ?」
「あ!私も気になってた!詳しいこと知らないんだよね。」
意外なことにローザも知らないようだ。周りを見るとアリア達も詳しいことは知らないらしい。強いってことは知られてるらしいが…。
「使徒には"◯◯神の使徒"と"世界の使徒"がいる。勿論私が言うのは後者だが簡単に言うと、私たち使徒とは『世界または人類滅亡の原因を排除する』のが目的だ。その為、使徒になるには現使徒二人以上と唯一神の推薦が必要になる。」
世界の使徒はゼウスの使徒と言うことだろう。神々は一人か二人程度しか使徒を持てないが、ゼウスなら十人程度は余裕か。
「へ~。そんな奴らと戦ってるんだね。使徒が強いってのは納得かな。」
「流石はご主人様の師匠になるお方です!その使徒の中でも第一位にいるなんて!」
アリアは何があっても平常運転だな。ユヅキも後ろで激しく頷いているし…。
「そうだ!唐突だが、ウルスは使徒になる気はないか?」
「本当に唐突だな。ん~、今のところなる気はないな。」
「創聖教の教会がある場所なら、使徒はどんな国に行っても国賓扱いされるし、色々と便宜をはらってもらえる。国を造るなら必要だと思うぞ?」
この世界で創造神を崇める創聖教の教会が無い国は基本的には無いらしい。世界神三柱のいずれかを奉る場所が殆どだそうだ。無いところは、他の神を主神としているらしい。中には、邪神・魔神教もあるみたいだ。
そんな奴らを野放しにしていても大丈夫なのか?
<ゼウス様がこの世界では宗教の自由を認めたので宗教に入っているだけでは処罰出来ない様です。問題を起こしたら駄目ですが。その為、それらの教徒達は異端審問官や国が監視しているらしいです。>
異端審問官ってのは、思っていた以上に忙しそうだな。
「ん?何で国を造る事になるんだ?」
「お前の力は組織の上に立つことに向いているし、人望もある。ウルスがなにもしなくても勝手にユヅキやアリアそれにアミンと言ったか?あの権能が造ると思うぞ?お前を守る為に拠点となる国が必要だしな。」
マジか…。アリア達が"古き迷宮"のダンジョンマスターとしての力を知ったら確実に国を造ろうとする。
<はい、その予定でした。先程、ゴブリンの巣で助けた者達を調きょ…教育し、奴隷または眷属を増やしていきマスターを守る国を造る予定でした。>
そんなこと考えてたのか。ユヅキやアリアを筆頭にやりそうなことだな。
「俺が先程ここに送った者達はどうなったんだ?」
「あの者達は私の部下が面倒を見ています。目を覚ました子の中に『ご主人様の為に色々学びたい』と申す者が居ましたがお知り合いですか?」
「いや、そう言うわけではないが」
どうなってるんだ?俺が救ったとき、何も教えなかったはずなんだがな。
<その者達は隷属されていたのでマスターがベヒモスを倒したことで、所有権がマスターに移りました。その為、《魂ノ系譜》が発動しました。《魂ノ系譜》は所有物になった奴隷も含まれます。奴隷の場合は、《魂ノ系譜》が自動的に発動する様です。>
そうだったのか。
普通は相手の了承が必要だけど奴隷は関係ないのか?ってことは、隷属すれば誰でも強制的に《魂ノ系譜》の影響をうけるのか…。
《魂ノ系譜》は相手を眷属にして能力の共有することが出来るが、眷属になったものは俺に逆らえない。よって、隷属魔法を手に入れた俺は基本的には誰でも俺に逆らえなくなるって事だな。
やたら無闇にそんなつまらない事はするつもりはないが、敵対者に関してはかなり使えそうだな。
「後々使えそうなら造ってみるのもいいかもしれないな。」
一先ず迷宮を攻略してルー…ルナに謝ってからだな。ウルベルトの事も一応は心配だし、何かやらかしてるかもしれないからそっちも心配だ。
「計画に加えておきますので、お任せください主殿。」
「ご主人様のお心のままに。」
「ウルス様の為ならなんだって殺ります。」
「僕も協力する~!」
「流石はご主人様!私も賛成!」
「わっちは、この資料を使って刀関係を作ってほしいでありんす。」
皆も賛成をしてくれた。リーベルは意味が違う気がするが放置しよう。尋ねると怖いからね。
《魂ノ系譜》
ー 相手を眷属にして能力の共有することが出来るが、眷属になったものは逆らえない。ー