青春ってなんですか
せっかくの桜の並木道もあいにくの雨模様で全く映えない。傘を開けばある程度の音は出るであろう雨の景色を眺めながら、俺はバスの中でゆらされ、入学式のため長濱高校に向かっていた。俺は県内で最も難しい公立高校には落ち、必然的に私立高校に入学した。まー、ぶっちゃけ高校はどうでもよかったからなんとも思わないんだが。そんなことを考えていると気がつけばもう高校前のバス停についていた。電子マネーで料金を払い、サッとバスから降り、バッと傘を開いた。うん、やっぱりうるさい。そう思いながら、俺は校門をくぐる。
「悠くん」
そう呟かれる声は雨の音で聞こえるはずがなかった。
そろそろ俺のの名前を知りたい頃だろう。俺は中島 悠。ちなみに「島」は「じま」って読む。周りからはイケメンって言われるが、自分自身では中の上から上の下と捉えている。中学ではサッカーをしてたが高校ではする気がない。一応、キャプテンで県大会に行くくらいの実力をもっているが正直、飽きた。趣味は読書だ。以後、よろしく。自己紹介はこのくらいにして、話を戻そう。
入学式が終わり、それぞれのクラスに移動となった。俺の席は1番後ろにあった。これはラッキーだな。授業中に本が読めるではないか。本を取り出そうと
「ねぇ」
ーカバンに手を突っ込み
「ねぇってば」
ーあっ、あった。これ、おもしろいんだよなー。はやくよm
「無視すれば、画鋲であんたの目をぶっ刺すぞ」
「初日から物騒なことを言ってる奴は誰だ」
そう言いながら声のする方へ顔を上げると
「あんたが無視するからでしょ」
茶髪のポニーテール女子がいた。どこにでもいそうな女子だが、ふつうにかわいい。しかも胸は大きすぎず小さすぎずの実に俺好みのものだった。少しばかり見とれていると
「何ずっとみてんの。きもちわるい」
「いや、画鋲で目を刺そうとしてくる奴にいわれたくない」
「そ、それはあんたが無視するからでしょ!!!」
なんだその反応は。典型的なツンデレか。
「...で。俺になんか用か」
「名前」
「あ?」
「だから、あんたの名前。教えて」
「なんで」
「なんでって。あんた、隣の席の人の名前も覚えようとしないの!?」
「いや、いいだろ、別に。今後覚えればいいんだから」
実際そうだろう。どうせホームルームの時に自己紹介はするだろうし、しなかったとしても出席確認の時に名前は呼ばれるからその時に自然と覚えるだろう。一人一人、個人的に自己紹介をするのは効率が悪いったらありゃしない。
「そうかもしれないけどさぁ...」
彼女はぶーたれた。
「まー、いい。けど人に名前を聞くときはまずは自分から名乗るのがマナーじゃないのか」
「わ、わかったわよ。私は氷野。氷野 さくら。はい、これでいいでしょ」
もう喋り方がツンデレなんだが。まあいい。
「俺は中島 悠」
「中島ね。わかったわ。これからよろしく」
「ああ。よろしく頼む」
何故か俺はこの時、懐かしさを感じた。何故かはわからない。けど、確かに感じた。こいつと一緒にいるとめんどくさいことが起きる予感がするのだが、それは起きないと願うしかないだろう。