昼のパーティーで初戦を終える
第一層の敵は弱い。動きは単純で鈍く、小さく軽く、柔らかい。
基本パーティーは4人。これは砦の強制制約であるが、離れたパーティ同士であれば共闘は可能だ。
しかし冒険者ギルドでは、共闘を推奨していない。理由は歪んでいる。砦を攻略を難しくさせるためだ。
冒険者ギルドにとって、黄金の城が攻略されては不味いのだ。この冒険者の街フィレオの経済を支えるのは、間違いなく黄金の城があるが故なのだから。
妨害手段としては、4人を基本とするクエストを作ること。報酬が4人以上だと割が悪いことなどだ。
パーティーは基本、前衛のメインタンク(MT)、サブタンク(ST)、それにアタッカー(AT)を二人の構成になる。
職は、盾と剣の騎士、両手剣の剣士、両手槍の槍士、弓使いの弓士、二刀流の短剣使い、素手で戦う闘士の6種類のみ。
俺のパーティーは、MTがドワーフのモドーラで盾と剣の騎士、STが人間のフィルで両手槍の槍士、ATがエルフのヴァルレルで弓使いの弓士、そしてATの俺で二刀流の短剣使いだ。
レッサーゴブリン、とにかく弱い。
モドーラは、レッサーゴブリンの棍棒を盾で受ける。
「ほら、ゴブリンの後ろに回って、短剣で攻撃するんだよ」
素人を演出するために、指示待ち人間と化している。
後ろに周り、短剣で急所をわざと外し、出血を浴びて驚き転ぶ。
「こらっ!! 魔物から目を背けるなっ!! 回避っ!!」
ダメージを受けたレッサーゴブリンは、怒りの形相で俺を見る。
地面に転んでいた俺を最大の敵と認識して、なりふり構わず棍棒を振り上げた。
フィルが槍を片手に突撃して、レッサーゴブリンの首を切断する。
血しぶきを上げて倒れるレッサーゴブリンを恐怖の表情で見つめる俺。
うん? ちょっと演技がオーバー過ぎたか?
「まぁ、初戦で魔物に接近して、短剣突き付けられたんだ。上出来だろう?」
何もしていないヴァルレルは、俺に拍手する。
「いつまでも、ボサッとしているな。立ち上がれ」
あくまでも厳しく接するフィル。手を差し伸べ俺を立たせると、血まみれの顔を拭く。
「言っていることと、やっていることが違うよね。これが人間界のツンデレってやつ?」
茶化すヴァルレルを無視して、モドーラは次のターゲットに注視していた。
「おい、小僧、次の獲物がきたぞっ!!」