冒険の準備
エルフのヴァルレルは、お気に入りの道具屋で短剣職に必須な毒を吟味していた。
「毒は即効性が重要なんだよね。でも比例して金額も高くなるんだ。あと魔物なら毒の相性もあるからね」
3つほど棚から毒の瓶を手に取ると、俺に渡した。俺は店の籠にそれを入れる。
「気をつけてくれよ? 扱いには注意が必要だ」
購入予定の毒と同系統の解毒薬、遅効性治療の薬草と即効性治療の薬瓶を選ぶ。
簡易トラップ用の糸、汎用性のある油、寝るときに体温を保ち敵の攻撃からも見を守れるマント、水を入れる皮袋、火打ち石、食事用の簡易食器類などを購入した。
「おっと、これはサービスだ、若いの…」
腰が曲がり切った老人は、埃の被ったズタ袋を指差した。
買った道具をズタ袋に入れる。結構、重量がある。
エルフのヴァルレルは、重量を確かめる俺を見て言った。
「マジックボックスまで、辛抱だよ。と言っても、かなり先の話だけどね」
「ヴァルレルさんは、マジックボックス保有者なんですか?」
「まあね。おっと、俺のは駄目だよ?」
「ヴァルレルさんの狙うなんて、どれだけ勇者なんですか…」
「ふふっ。一応、強者として見てくれるんだね。おっと、僕は、ここで失礼するよ。砦に入ればしばらくお酒が飲めないからね」
そう言い残すと歓楽街へ消えていく。ヴァルレルの姿が完全に消えると、再び闇市を目指した。
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闇市で、オール・グランとの連絡用に伝書鳩をレンタルする。
配達先にノクターンを指定し、”昼の仕事仲間見つかる。しばらく冒険者の街フィレオに留まる”と書いた紙を鳩の脚に付いている小さな筒に入れる。
「どのぐらいで着きますか?」
「3日、いや4日あれば、着くかな。だが必ず着くことは保証できないぞ」
「あ、はい」
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宿に戻ると、アイテムボックスから、暗殺者用の道具を一式取り出す。
黒い外套、白く赤い線が十字に入った面、魔法の触媒、金貨、食料、高級薬草など…。
いつでも取り出せるように、アイテムボックス内に丁寧に配置していく。
そういえば、あのエルフ、マジックボックスって言っていたな。アイテムボックスと何か違いがあるのか?