闇市場
一度、宿屋に帰り、闇市場が開く時間まで待つ。
闇市場なのに、営業時間が日中だけとは、どういうことなのか?
冒険者の街フィレオの表通りから外れ裏通りに入る。さらに裏通りの脇道を進むと、袋小路に行き当たる。付けられていないか確認した後、壁にある仕掛け扉を開け、両手を上に上げ躊躇なく中に進む。
中には光源がないが、移植されている眼球の暗視能力によって、武器を構えた数人の傭兵の配置を把握する。
「血盟、ノクターンだ」
手を上げたまま、手に持つ裏ギルド・血盟ランクプレートとノクターン公認のプレートを振る。
また裏ギルド・個人用ランクプレートは、依頼受注用なので買い物には不要だ。
ここで言う裏ギルドとは、西の血族、魔導の母、死の教団、闇の制裁の4ギルドを指す。主な活動内容は順に、人肉の採取と捕食、暗黒・黒魔術の研究、拷問と快楽、暗殺となる。
稀にだが、表ギルドの傭兵、狩人、冒険者、兵士とも敵対することがある。ちなみに表ギルドの主な活動内容は順に、護衛・戦争、動物・魔物の狩り、迷宮探索、国に派遣される雇われ兵士となる。
ノクターンの血盟ランクは銅であり、立場の弱い血盟となる。詳細は、”西の血族:銅、魔導の母:銀、死の教団:銅、闇の制裁:銀”である。
右側の扉が開くと、真っ暗な室内にうっすらと光が入る。
「確認は取れた。で、どのようなご用件で?」
中からは黒いローブを来た老人が出てきた。
「右足の指を全種類、付け根から欲しい。サイズは…Mで、品質は低で構わないが、骨に異常がないものが欲しい」
黒いローブの老人は、今来た部屋に戻ると、扉を閉めてしまった。また部屋は静寂と闇に包まれた。
老人が戻るまで、邪魔にならないように奥の壁際で待つ。
しばらくすると、室内に光が入り込む。それは表の扉からであり、新しい客が来たということだ。
客が入ると、すぐに扉は閉められ、また空間を闇が支配する。
「血盟、カラミティだ」暗殺と拷問を専門とする血盟。
チャックが終わる前に、俺を見つけて近づいてくる。流石というべきか暗視できるのか?
165cmの俺より、遥かに体は大きく2m近くあるだろう。武器は…両手剣か。
「ほぉ、こいつが、ノクターンご自慢のホモンクルスかぁ?」
大きな手のひらで、好き勝手に体をペタペタ触る。
「はい。今後ともよしなに」
「ほぉ…。しゃべるのかっ! こりゃ、マジですげぇ…な」
大男は無言で大剣をバターナイフのように扱い、俺の右腕を切断する。
「うほっ、顔色一つ変えねぇーのか…。まいった」
俺は左手を差し出すと、「業務に支障が出ます。右腕の保証代金…金貨10枚を要求します」
大男は一瞬、血管をピクつかせるが、大人しく金貨10枚を渡してきた。