ヴァルレル その1
俺は岩陰に隠れている。この場所からだと砦の外壁までは250mぐらい離れている。外壁と一番近い岩場で10m程度だ。
冒険者同士で言い争う声がする。リ・ポップ・カーニヴァルの最中だというのにPKが現れたようだ。
岩陰から望遠鏡で覗く。PKは…エルフのヴァルレルだった。
やっぱりというか、なんとなく普通じゃない気はしていた。
中級冒険者でもヴァルレルに近づけない。だが弓士である以上、矢の残数という制限が必ずあるのだ。
例え冒険者たちを全て倒しても、リ・ポップ・カーニヴァルで出現するゴブリンたちをいつまで凌げるのか?
PKは裏ギルドからも嫌われた存在だ。
一般人からすれば、裏ギルドもPKも大した差はないのだが、裏ギルドからすれば仕事の邪魔でしか無い。
そんなこと考えながら、ヴァルレルの戦いぶりを観察している。
思った以上に、回避の能力に長けてた。空間を把握する能力と実際の筋力が高いのだと推測する。
よく見れば、数本の矢を回収しながら戦っていたため、矢が無くなることを期待できない。
早打ちも最大で三連続まで…もっと回数を増やせるのかは不明だ。
結局、無傷のまま冒険者たちと全滅させてしまった。
こちらとしても無理に戦う必要はなく、どうしても戦闘が必要ならば、リ・ポップ・カーニヴァルで体力を消耗したところを討てばよいのだ。
岩陰に戻りヴァルレルの消耗を待つことにしたのだが、矢が岩に当たる。
望遠鏡で再び覗くと、床に寝っ転がって、指でクイクイとこっちに来いと指図している。
つまり、こちらの存在を認識しているということと、この岩場には登れないということだ。
相手にするのは時期尚早だ。
先にも言った通り体力の消耗を待つということ、他の冒険者と遭遇する可能性があるということだ。
リ・ポップ・カーニヴァルが発生したと知れれば、外部から冒険者は入ってこないし、中の冒険者も逃げるか死ぬかであり、これも時間の経過次第となる。
時間はあるので、ヴァルレルとの戦い方について考える。弓矢の使い方、脚の運び、立ち位置、その全てで戦いの流れを支配していた。
最終的に、俺のシミュレーションだと、魔法を更に4つほど使うことになった。
完全に赤字だが、ヴァルレルの完全な実力がわからないのだ、確実に倒すためには仕方ないだろう。
このまま決戦の時まで、2日ほど休むことにする。
彼がしびれを切らして、何処かに行ってしまえば、それでも構わない。




