迫る脅威
「しばらくは、大人しく貴族として過ごして頂きましょうか」
オール・グランからの報告では、正体不明であるが、かなりの実力者であろう集団が商業都市オハロに入り込んだというのだ。二刀流の短剣使ライゼーナからの報告もほぼ同様だが、どうも異なる組織が複数入り込んでいるようであるとのことだ。
という訳で、エミリアは、エルダリスに付き纏われないように、古代文字で書かれた魔法書を解読すると宣言し、書斎に篭もることにした。まぁ、解読に関しては本当なのだが…。並行してクラリスの研究の再現も行うことにしている。
暇を持て余すエルダリスには、護身術として銃の訓練をさせようと考えていた。アースファクト兄様におねだりをした結果、講師は完全に腹黒だろうと人目で判る風貌のストラネスだ。銃以外の事を言われたら、直ぐに報告してと、エルダリスには念を押して警告しておいた。
しかし、余りにも離れすぎているのも問題で、自由に使える時間は数時間もない。午後3時ぐらいからは、いつものようにエルダリスと同じ時を過ごす。
常に死と隣合わせの生活から解放され、性的快楽を覚えてしまったエルダリスは、日中の舐め回すように見てくるストラネスのストレスからか、更に快楽を求めてくる始末だ。
「ねぇ、エミリアは…その…処女じゃないの?」
答えがわかっていながらも、聞かずにはいられないのだろう。エルダリスは、ばつが悪そうな表情で尋ねてきた。エルダリスには、ノクターン以外の嘘や隠し事をしたくないと思っていたので、素直に「処女じゃないわ。平民が…貴族になったのよ」とだけ言った。
体を求められた事を悟ったエルダリスは、ぎゅっと抱きしめてくれる。きっと可哀想だと思ってくれているのだろうが、正直、体が汚されることなど気にしていなかった。
同じ13歳のエルダリスの体は、私と違い、大人の女性に近い変化を遂げていたのだ。
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それから数日のうちに、ノクターンの庭である商業都市オハロに暗躍する集団の正体を掴んだ。
一つは、オーゼスフェスタ大公の直轄の部隊である。その正体は、この国の息がかかる裏ギルドからではなく、貿易相手の国から呼び寄せた工作員達だ。
次の集団は、オーゼスフェスタ派のブレンフォール家デバリア男爵が、贔屓にしているギルドの”白き霧”のメンバーだ。どうやら、裏ギルドを壊滅させようと計画しているオーゼスフェスタ大公の放った間者を追って来ただけのようだ。
最後は、”職業ギルド”の一つである”商人ギルド”が結成した部隊である。これは傭兵を中心にした集団だ。オーゼスフェスタ大公の領地から伸びる半島にある砂漠。その砂漠に住み着く蛮族と戦う傭兵たちを集めたらしい。また何故この時期に商業都市オハロで活動するのかは、現時点で不明らしい。
「全て敵だと考えた方が良いでしょう」とオール・グラン。
「えっと、”白き霧”も?」
「おい、逆に何故、見方だと思うんだよ」両手剣の剣士デファーニアの荒々しい回答に、目を細めるエミリアだが、既に”白き霧”と開戦状態なのだろうと、それ以上は何も言わなかった。
この際、”白き霧”や、”商人ギルド”などは問題ではない。
この国を正常に動かしているのは間違いなく、オーゼスフェスタ大公だ。イーガルヴィレド王、ギュレン伯爵、フィルン侯爵では、隣国に飲み込まれてしまうだろう。
ノクターンが、オーゼスフェスタ大公との関係をどのように築けるか…。




