第三層へ
丁度昼を過ぎたところだろうか? 第二層に降りても食事休憩しているパーティーが目立つ。
「今日は、冒険者の数が多いのぉ」
ドワーフのモドーラは定番の顎髭を整えるように触りながら言った。
「これは第三層の入り口付近まで行ってしまった方がいいね」
人間のフィルは、両手槍を背中から外し、先に進むことをアピールする。
「一気に行くからね。はぐれないことと、余計なことはしなくていいからね」
フィルは俺に指示を出すと、モドーラの後に続いて、安全地帯から出る。
安全地帯とは何か? これも砦の強制制約の一つで、魔物が別の階層に移動しないように、階層の出入り口に結界を張っているのだ。注意点としては、常時結界が張られているわけではないことだ。
この階層の魔物もレッサーゴブリンのみだ。入り組んだ迷路を攻略することが第二層の醍醐味で、レッサーゴブリンは出現頻度も低く、ちょっとしたスパイス的な位置づけになる。
モドーラはランプを左肩に付け左手で盾を構えて進む。右手には剣を持つが、いつもの斬撃を繰り出す姿勢ではなく突きの構えだ。これは迷宮の壁に剣がぶつかることを嫌がってだろう。
フィルも両手槍を片手で短めに持つ。しかもモドーラが見ていない方角を必ず見ることでパーティーの死角をなくしていた。
なるほど。伊達に中級冒険者を名乗っていないんだなと感心する。
俺はとんでもない方角を見たり、途中で止まったり、驚いたりして、後ろで俺を観察しているエルフのヴァルレルの目を誤魔化す。
このエルフ…。何か違和感を感じるのだ。
「今、ここで迷子になったら、第一層への入り口まで戻れるかい?」
「えっ!? 無理ですよ…いろんな意味で…」
「最初に言っておくべきだったね。この道は何度も通るから、そのうち慣れると思うけど…。普通は死ぬ気で覚えるべきなんだよ?」
「はぁ、そうなんですか…」
ヴァルレルに理解していないような返答をする。
途中、他のパーティーが戦闘中のために待機したり、前が詰まっていたり、情報交換したりして、第三層への到着は、予定よりも大幅に遅れていた。
「混雑具合と野営準備の時間を考えると、第三層の安全地帯まで行ってしまった方が良いかもね」
「そうじゃのぉ。小僧の体力も緊張で、自分が思っとるより削れているはずだからのぉ」
「そうね、あと1時間ぐらいだわ。頑張れる?」
「はい。大丈夫です。俺、第二層では、歩いているだけですから…」
「見てるだけ? 何を言っているのっ!! 私たちの動きを見て勉強しなさいっ!!」
フィルに凄い剣幕で怒られてしまった…。




