4つの顔のエミリア
隣で裸で寝ているエルダリスの裸体を見ながら、新しく届いた悪魔からの手紙の内容を思い出す。前から疑問であったエルダリスに取り付いた悪魔のことだ。10人も存在しなと言われていた悪魔なのに、人に取り付く悪魔の数は、かなりの数がいるのだ。その答えは手紙にあった。
最上級(2名):虐殺の悪魔、迷宮の悪魔
上級(1名):爆炎の悪魔
中級(3名):人形の悪魔、疫病の悪魔、墓地の悪魔
下級(2名):毒沼の悪魔、南風の悪魔
つまりエルダリスに取り付いていた悪魔は、人間が悪魔と呼んでいるだけであり、悪魔からしてみたら、ただの下級の魔物なのである。悪魔が認める悪魔には条件がある。例えば、精神汚染術、幻影術、召喚術の力量が一定以上必要であり、同級の悪魔が認めなければならないのだ。
しかし…エミリアの場合は、悪魔の力は強制的に組み込まれ徐々に使用可能となり、女神であり夜の女王であるノクターンの権力または圧力により、虐殺の悪魔か迷宮の悪魔のどちらかに、最上級として認めさせたのだ…。悪魔にとっても迷惑な話なのだ。
そしてエミリアは、混沌の悪魔と呼ばれる存在となる。
また、どの能力も平均的である下等な人間と違って、悪魔の能力はピーキーらしいのだが、これはまた別の手紙でと書かれていた。
次にノクターンの活動状況だが、確かにノクターンは、裏ギルド界ではトップランカーだろう。これは、七灑守護者メンバーが6名残っていたため、壊滅状態であった裏ギルドを早急に蘇らせることが出来たのが大きい。しかし、現在エミリアがやっていることは、先代のクラリスが築き上げたシナリオを再度なぞっているだけなのである。
冒険者としてのエミリア。貴族としてのエミリア。ノクターンの主としてのエミリア。悪魔としてのエミリア。
自分は一体何者で、何を求めているのだろうか? いや、元々、何かを求められるほどの立場ではなかったのだ。
ライナス、シリス、レグナル…。フィルン侯爵。オール・グラン。ノクターン…。それらに生かされているのだ。そして恩返しをしなければならない…。そう思った。
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やらなければならないことは沢山ある。ノクターンのランクアップを兼ねて、ソウルエナジーを収集するため、まずはどの条件で効果的に収集できるか、それを調査する。
二刀流の短剣使ライゼーナからの報告を聞く。
不倫された新妻が旦那に捨てられ復讐を決意する。死の教団に依頼した案件をライゼーナが受注し、いよいよ大詰めらしい。
「エミリア様。依頼主とその旦那、そして浮気相手が、ノクターン地下屋敷の拷問部屋でお待ちです」
「わかりました。依頼主を待たせすぎてはいけません。早速行きましょう」
ノクターン地下屋敷の拷問部屋。そこにはありとあらゆる拷問器具があり、死の教団からも評価が高く、利用者が多いため予約は半年先まで埋まっている状態だ。しかし、今回は営業時間外の利用であり、ノクターンが優先的に使える時間だ。
重い扉を開けると、裸の男女が縛り付けられ、依頼主と言い合っている。エミリアは部屋に入ると依頼主に軽く会釈をして、その言い争いが終わるまで静かに待っていた。
「あ、あなたはっ!! もう知りませんよ。最後に…最後に、許してあげようと…」
泣き崩れる依頼者にエミリアは、そっと手を差し伸べ、「拷問はあなた自身で実施しますか? 私達が代行いたしますか?」と質問した。




