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幼馴染がいつの間にか人間辞めてた話  作者: パシリーダー
第2話 都市伝説始めました。
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第2-3話 うっかりミスとその被害者

「いってきまーす。」

 時刻は16時を過ぎた頃、擬態だけではどうにもならない部分を補完するための道具を買うために、意気揚々と駅前の大きなドラッグストアに向う。この姿になって初めての外出だ。


 出かけるにあたり、自分の姿が周りにバレて騒ぎにならないように、出発前に異形の身を内側からごりごりとこねくり回し、全身の外見を出きる限り元の姿に寄せている。全身まるごと擬態させるのは、一目で異形とわかる上半身と全身に走る傷跡をごまかす意味合いが強い。特にまるごと触手になっている右腕、勝手に蠢き、人の顔面のパーツがたまに表れる左腕を()()()なんとかするには慣れなどもあるかもしれないが、こうしなければならないのだ。

 それでも完全な擬態には程遠く、髪は白いし、つるつるのお肌も死体のように真っ白、左目は異形のまんまでグロくて人外丸出し。私を知っている人が見れば目を疑うこと請け合いだろう。

 先の実験でもそうだったが、全身を弄る時はパーツだけの時と比べてかなりの手間がかかる。大まかなシルエットだけ見れば、今の姿もそこまで以前の姿からかけ離れているという訳ではないのに、一度の擬態のために毎回全身をぐずぐずに崩してから再構成しなくてはならないのは疲れるし、そのくせまだ()()()()()()()()()()もんだからなぁ……でも、そのうちこんな面倒なんて必要なくなる気がする…なーんてね。


 ん?…何かおかしいぞ?今何かとんでも無いことをやらかしている気がする。状況を確認しよう。


私、人外。目を見られれば一発でバレる。

周り、屋外。夏なのでまだお日様さんさん。

行き先、駅前。天下の往来、人多し。


 あれ?なんで私こんなに堂々と外に出てるの?人目につかないようにするために、人目につきにいってるじゃん。目的と手段の段取りを間違えてるじゃん。

 ここでようやく自分の犯した大ポカに気づく。

 次の角を曲がれば、もうすぐ目の前に駅が見えるところまで来てしまった。とりあえず、人気のない細い路地裏に身を隠し、ここからどうするかを考えよう。

 

 人に見られないよう、奥へ。建物と建物の小さな隙間。かろうじて道としての体をなしてはいるが、細く暗く埃っぽいそこは身を隠すには丁度いい。


 行き止まりまで進み、周囲に人気のないことを確認すると、髪留めのリボンとヘアピンを外し、ポニーテールにしていた髪がほどけ、毛先が毒々しく染まった白髪がだらりと垂れ下がる。気休めにしかならないが、これで目に視線がいくのを少しでも抑えられればいい。そう自分に言い聞かせて気を落ち着かせ、建物の壁に背中を預けて一息いれる。


 さぁ、この後のことを考えよう。このまま今日のところは買い物を諦めて引き返すのが最善なのだろうが、わざわざ手間をかけて準備したのにそれを無駄にしたくないという気持ちが邪魔をする。


 しょーもないことでぐぬぬと唸っていると、ふと、今いる裏路地の入り口の方から声が聞こえてきた。聞く限り、男が数人近づいてきているようだ。


(嘘でしょ?なんでこんなとこに人が来るの?まだ日も残ってるよ?)


 こちらはか弱い人外系美少女が一人。こんなに人気ない路地裏、わざわざこんなところに来るような男たちに見つかり、捕まってしまったらどうなるかわからない。身の危険を察知して慌てて隠れ場所を探す、が。


「おん?女の子?結構可愛くね?」

「うわすげー、髪の毛真っ白じゃん。」

「ねぇねぇ、こんなところで何してんのー?」


 見つかってしまった。

 相手は見るからにチャラついた、ガラの悪そうな男が三人、道は細く脇を抜けるのも難しそうだ。


「ねーねー、今君一人?もしよかったら俺たちと遊ばない?」

「すげー、なにその左目、最近のカラコンってなかなかキマってるじゃん。」

「この辺の良いお店紹介したげようかー?」


 そいつらはこちらの顔を見るなり遊びに誘ってきた。ウザいことこの上ないが、左目や髪色をファッションだと思ってくれるのは相手がバカで助かった。


「おーい、なに黙りこんでんのー?」

「お兄さん達がすげー楽しいとこ連れてってあげるよー?」

「怖くないよー?一緒に遊ぼうぜー?」 


 何かきーきー言っているが関係ない。異形であることがバレてないのならそれで良い。外には危険がいっぱいだし、さっさとやり過ごして、今日のところは家に帰ろう。


「ごめんなさい、そこ通してくれない?早く帰りたいの。」

 そう言うと、さっきまでニヤついていた男達の顔が険しくなる。

「はぁ?何言ってんの?この娘。」

「すげー優しくしてやってたからって調子乗んなよ?」

「無理矢理にでも連れてくか?」


「…帰るね。」


 退く気は無いらしいので、無理矢理隙間を抜けようとすると、男の一人に羽交い締めにされ、引き留められる。


「…手、離してくれない?」

「おい、さんざんシカト決め込んだくせにさっさと帰りたいとか俺達のことなめてんの?」

「このままはいそうですか、って帰すとおもったのかよ?」

「なぁ?このままヤっちまおうぜ?」


 あぁ、もう面倒くさい。


「……もう帰らせて。じゃないと全力で抵抗するよ?」

「はぁ?抵抗ってなにするんだ?泣きわめいてもここには俺ら以外来ないぜ?」

「寧ろ俺達の友達がすげー増えるかもな!」

「ほら、何かしてみろよ?その格好で何か出来るんならな!」


 正面に立つ男がそう言うと、手をわきわきさせながら、身動きのとれない私に詰め寄ってくる。

 どこの馬の骨とも知らん奴に身体を触られるのは絶対にごめんだ。


「わかった、じゃあ『抵抗』させてもらうね。」



 もういいや、人に見られるのはマズいけど、目撃者が残らないなら問題はないよね?



 瞬間、樹の右腕が五つに裂け、五本の触手に形を変えたと思うと、正面に立っていた男の頭と体が分断された。


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