入部失敗!?
4月、入学式が終わり、上級生達が新入生の部活勧誘に励む中、俺、写田真も新入生の一人として、先輩方からの熱烈な歓迎を受けていた。
「君!入学おめでとう!新生活のスタートと同時にサッカーを始めてみてはどうかな!?」
「いえ、やりたいことがあるので…」
「そうか!プリントだけでも受け取って!」
「アーチェリーに興味はないかい?」
「いえ、特にはないd「ならば君にはこのステキなプリントを進呈しよう!」
…気づけば勧誘書類は両手いっぱいになり、気を抜けば盛大にぶちまけてしまいそうだった。
だが、どんなに強い勧誘を受けたとしても俺の気持ちは揺るがない。入学する前から決めていたんだ!俺は前々から興味のあった写真を本格的に始めると!それならば入る部活はただ一つ、写真部しかありえない!
仲間と切磋琢磨し技術を高め合う熱い日々、一枚の写真から始まる甘い青春…考えるだけで顔が緩んでしまいそうだ。そうと決まれば善は急げだ!溢れかえりそうなプリントの山からなんとか写真部の募集プリントを見つけると、俺はこれから始まるリア充生活に胸を躍らせながら、一目散に写真部のある部室へと向かった
トントンッ
俺が、部室のドアを軽快なリズムで鳴らすと
「どうぞ」
中から無機質に入室許可の声が聞こえてきた
「失礼します!部活勧誘の書類を見て入部しにきました!」
中学三年間地味に過ごしてきた自分でも驚くほど元気の良い声で要件を伝えると、教室にいた、やや長身の丸眼鏡を掛けたいかにも文化部部長のような風貌をした男性が
「そうか、君はカメラを持っているかい?」
と、いきなり話題を振ってきたので、
「いえ、持っていません!でも、写真が大好きです!」と頭の悪い返事をすると、
「ならば悪いが君を写真部に入れることはできない」と衝撃的な事を言ってきた
「ど、どうしてですか!?カメラなんて持ってなくても学校や部活のを借りればいいでしょ!?」
「確かに写真部はカメラを持っているし、貸し出すことも可能だ、だがそれは校内でだけの話だ。写真部というのは校内活動よりも課外活動の方が圧倒的に多い。私生活や課外活動で撮った写真を持ち寄って皆で感想を言い合い、コンクールに向けて部員同士で技術を高め合うのがうちのスタンスだ。よってカメラを持たない人を写真部に入れることはできない」
「そんな!写真を撮るだけなら携帯でもできるでしょ!」
「確かに、写真を撮るだけなら携帯でもいいかもしれない、だが携帯の写真というのはいくらでも編集が可能だ。編集に編集を重ね、盛りに盛ったもはや原型のない物を良い写真とは呼べない。良い写真というのはふとした一瞬の奇跡を捉えたものだ。」
ぐうの音も出ないくらいの正論である
「よって残念だがカメラを持たない君を写真部に入れることはできない。カメラを手に入れてからまたきたまえ。待っているよ。」
まさか門前払いを食らうとは…カメラを買えるほどの金も持ってないし、一体どうしたものか…。
俺の描いたリア充カメラマン生活は一歩目から崖っぷちだった。