*。*:゜ ニニコ論文 「赤紅朱」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットは、長い旅を終えた。
すべては伝説の復活のためだ。
ようやく。
ようやく4つの宝玉を集めることが出来た。
そしていま、石盤にそれをセットしたところだ。
石板じゃないぞ。
石「盤」な。
そっちのがカッコいいからさ。
ひとつは、紅 (あか)の宝。
ふたつめが、蒼 (あお)の宝玉。
3つ目が、翠 (みどり)の宝玉。
最後が、黄今 (き)の宝玉。
いま4つの宝玉が、石盤にセットされた。
4つの秘石を集めたことで、伝説のゲームが遊べるという。
長かった。
とても長い旅だった……
念願が叶ったいまだからこそ、強く感じる。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 黄今の宝玉。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 黅……?
ノノ 人С川 w )
.。.:*・゜゜・*:.。..。.:
なんや、この字?
. 。.:*・゜゜・*:.。..
いやー、黄だけカッコいい漢字が無くってさあ。
やっぱなんていうの。
赤だったら、赫とか紅とかさ。
オシャレな漢字を使いたいじゃん?
緑だったら、翠か碧の漢字でさあ。
青だったら、蒼か藍にしたいじゃん?
いや、青の宝玉でも問題ないよ?
だけどさ。
私は、蒼の宝玉って書きたいのよ。
赤の宝玉?
ノーノー、紅の宝玉って書いて「あかのほうぎょく」だ。
緑の宝玉?
ノーノー、翠の宝玉って書いて「みどりのほうぎょく」だ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 黄がさあ……
ノノ 人С川 w )
無かったのよ、黄色のオサレな漢字。
いや、あったよ?
それが「 黅 」って漢字なんだけどさ。
黄に今って書いて、黅。
これが黄の、むずかしい字らしいのよ。
見たことないでしょ?
実際、私もはじめて見た。
探してやっと見つけたんだ。
日本で使ってる漢字じゃないんだわ。
ちゃんと表示されてる?
ブラウザ環境によっては表示されてない可能性もある。
しょうがないから「黄今」って書いたわけ。
あーあ、シャキっとしないなあ。
もっと日本で浸透してる漢字で、黄色をかっこよく書きたかった。
私はさあ!
何回も言うけど、中二病なの!
わざわざ難しい漢字を使いたいのよ!
炎の魔法だったら、焔の魔法って書きたいの!
伝説の竜なら、伝説の龍って書きたいの!
スピード特化の敵が出てきたら、「は、迅い!」って叫びたいの!
「は、速い!」じゃダメなの!
あいつは俺が守ってやる……じゃないの!
あいつは俺が「護って」やる……がいいの!
あえて難しい漢字を使うのって、イカすじゃん。
ちょっと読みにくくなったとしても、べつにええやん。
カッコいいかどうかのほうが大切じゃん!
川を、河って書きたいのよ。
花を、華って書きたいのよ。
友を、朋って書きたいのよ。
一号機じゃないんだよ。
壱號機なんだよ。
そっちのほうがカッコいいじゃん。
……たださ。
カンチガイしないでね?
べつに古文書みたいにしたいんじゃないんだよ。
ていうか、画数の多い漢字にしたいわけでもないんよ。
紅の宝玉じゃなくて、朱の宝玉でもいい。
朱って書いて、これも「あか」って読むんだよ。
パンドラの箱、じゃないんだよ。
パンドラの匣なんだよ。
これで「はこ」って読むんだ。
戦闘民族じゃないんだよ。
戦斗民族なんだ。
これで「せんとう」って読むんだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● わかる?
ノノ 人С川 w )
画数の問題じゃないの。
難しい漢字の使いかたを知ってるんだってアピールしたいのよ。
「へえ、これで○○って読むの!?」
「こんな漢字、はじめて見たなあ」
って思われたいんだ。
これが中二病なんだ。
好きなようにさせてくれ。
ほっといてくれ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 ₋ )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● だからさ。
ノノ 人С川 ₋ )
だからせめてさ。
小学一年生で習う漢字くらいカッコよくいこうぜ。
カッコよく書けるように、進化表を作ろうぜ。
小学一年生のならう漢字は、ぜんぶで80個。
せめて小1の漢字くらい、中二病化できなくちゃな。
私が漢字の再教育をしてやるぞ。
小1の漢字を中2でおさらいだ。
さあ、覚悟してもらおうか。
どういつもこいつも今日からみんな中二の春だ……!
「一」 → 「壱」
「二」 → 「弐」
「三」 → 「参」
「四」 → 「肆」
「五」 → 「伍」
「六」 → 「陸」
「七」 → 「漆」
「八」 → 「捌」
「九」 → 「玖」
「十」 → 「拾」
「百」 → 「佰」
「千」 → 「仟」
「円」 → 「圓」
「玉」 → 「珠」
「月」 → 月は月でいい。
「火」 → 「焔」
「水」 → 水は水でいい。
「木」 → 「樹」
「金」 → 金は金でいい。
「土」 → 土は土でいい。
「日」 → 「陽」
「年」 → 年は年でいい
「人」 → 人は人でいい。
「子」 → 子は子でいい。
「男」 → 「漢」
「女」 → 女は女でいい。
「王」 → 「皇」
「口」 → 口は口でいい。
「目」 → 「眼」
「耳」 → 耳は耳でいい。
「手」 → 手は手でいい。
「足」 → 「脚」
「力」 → 力は力でいい。
「上」 → 上は上でいい。
「下」 → 下は下でいい。
「左」 → 左は左でいい。
「右」 → 右は右でいい。
「大」 → 大は大でいい。
「小」 → 小は小でいい。
「中」 → 中は中でいい。
「学」 → 「學」
「校」 → 校は校でいい。
「先」 → 先は先でいい。
「生」 → 生は生でいい
「字」 → 字は字でいい。
「文」 → 文は文でいい。
「本」 → 本は本でいい。
「名」 → 名は名でいい。
「山」 → 山は山でいい。
「川」 → 「河」
「田」 → 田は田でいい。
「石」 → 石は石でいい。
「雨」 → 雨は雨でいい。
「夕」 → 夕は夕でいい。
「空」 → 「天」
「天」 → 「空」
「音」 → 音は音でいい。
「林」 → 林は林でいい。
「森」 → 「杜」
「花」 → 「華」
「草」 → 草は草でいい。
「竹」 → 竹は竹でいい。
「犬」 → 「狗」
「貝」 → 貝は貝でいい。
「虫」 → 「蟲」
「見」 → 「観」
「立」 → 立は立でいい。
「入」 → 人は人でいい。
「出」 → 出は出でいい。
「休」 → 休は休でいい。
「白」 → 白は白でいい。
「赤」 → 「紅」
「青」 → 「蒼」
「早」 → 「迅」
「正」 → 正は正でいい。
「糸」 → 「絃」
「気」 → 「氣」
「村」 → 「邑」
「町」 → 「街」
「車」 → 車は車でいい。
小1の初歩みたいな漢字でさえ、38個しか中二化できなかった。
過半数にも満たなかった。
上の80文字、調べてキーボード打ちこむのに1時間かかったぞ。
なんだったんだこの時間は。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 私は悲しい。
ノノ 人С川 w )
哀しいじゃなくて、悲しい。
哀しいは、かわいそうだと思う気持ちのことだ。
悲しいは、つらいとか苦しいときに使う。
この場合は、悲しいが適切だ。
私は悲しい。
1時間をドブに捨てたからこそ思う。
.。.:*・゜゜・*:.。..。.:*・゜
そこまで苦労して、
読まれづらい漢字を使う価値はあるのか?
.。.:*・゜゜・*:.。..。.:*・゜
もっとむずかしい字は無いか?
もっとカッコいい漢字を当てられないか。
そこまでして探してきた漢字なのに、ちゃんと読んでもらえん。
「鎗」だとか「劔」だとか。
フリガナが無かったら読めねーぞ、こんな字。
それじゃ意味ないじゃん。
じつは、知ってたんだよね。
ホントは私、ちゃんと知ってたんだ。
赤と紅、どっちも「あか」って読む。
青と蒼、どっちも「あお」って読む。
緑と翠、どっちも「みどり」って読む。
でも本当は、ぜんぜんちがう色なのよ……
赤と紅、ぜんぜん違う色やねん。
青と蒼、ぜんぜん違う色やねん。
緑と翠、ぜんぜん違う色やねん。
わかってたんだよ。
そもそもちがうモノなんだ。
箱と匣もそうだ。
箱は、容器の総称だ。
べつにフタが無くても箱と呼んでいい。
だが匣は、箱のなかでもフタがあるものだけを言う。
火もだ。
火とは、固形物が燃える現象だ。
いっぽう炎は、気体やガスの燃焼を意味する字である。
そして焔は、火や炎が勢いを増すって意味の漢字だ。
べつに、火→炎→焔みたいに火力がパワーアップしてるわけじゃない。
ぜんぶちがう意味なんだよ。
火のことを焔って書くこと自体が、カンチガイなんだよ。
私は誓う。
もう二度とカッコつけて難しい漢字を選んできたりしない。
これからは、正確にその事象にふさわしい漢字をつかうと約束する。
これは赤の宝玉。
これは青の宝玉。
これは緑の宝玉で、これは黄の宝玉だ。
最初からそう呼べばよかった。
肩の荷が下りた気分だ。
すべての宝玉がそろったとき、伝説のゲームが復活するという。
目覚めよ!
いまこそ我の前に姿を現せ!
電源オン!
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ……オチがさあ。
ノノ 人С川 w )
スイッチ入れた瞬間、本体が大爆発するってオチにしたかった。
ドカンと火を吹いてる画像を出して終わりたかった。
AIでそういう画像を作って貼ろうかと思ったのよ。
直前でやめたわ。
メーカーから告訴されそうで。