*。*:゜ ニニコ論文 「かすかな光の中で」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットはずっと不思議だった。
アレって、なんのためにあるんだろう。
生まれてから14年間、一度も使ったことがない。
にも関わらず、強制的に作動するんだもん。
オンとオフのあいだに、かならず割りこんでくるアレ。
なんで毎回毎回、いちいちアレを経由しなきゃならないんだ。
ルーティーンに加える意味がわからない。
いや、そもそも存在意義がわからない。
だってぜんぜん役に立たないんだもん。
役に立つ場面が思いつかない。
……こないだまでは、な。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● こないださ。
ノノ 人С川 w )
こないだ、友達の家に泊めてもらったのよ。
夜までいっしょにスマブラして、めちゃ楽しかった。
さんざん遊んで、さあそろそろ寝ようかとなったわけだけど……
私はマジで驚いた。
友達:
「おやすみ~」
私:
「待って、ちょっと。ついてる」
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● まだついてる。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 〇 〇 え、消してよ。
ノノ 人С川 w )
私ことニニコ・スプリングチケットは本気で驚いた。
まだ電気ついてんぞ。
消してくれんかオイ。
友達:
「え、なにが?」
私:
「なにがってなにが?」
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 〇 〇 いや……え?
ノノ 人С川 w )
寝るときって、真っ暗にして寝るよね?
いや、電気消すでしょ完全に。
真っ暗にしてから寝るよね?
常夜灯っていうんだってな、これ。
子どものころから、このオレンジの小っちゃい電灯が不思議だった。
これ、なんのためにあるんだろう。
いやたしかに電気はついてるよ?
ついてるけどアンタ、こんな暗い電気……
なんも見えないじゃん、こんなんじゃ。
なんのために存在してんの、この機能。
だって、起きてるときは蛍光灯をフルパワーにするでしょ?
で、寝るときは消すじゃん?
寝てるときって明かりいらないからね、消すじゃん?
ウチの電灯はアレだ。
ヒモを引っぱったら電気がつくレトロなやつだ。
どういうスイッチの仕掛けになってるんだろう。
ひとつの動作で、オンオフや強弱を入力するって不思議だよね。
いや、今日はひとまずそれはいい。
なんなん、この小っちゃいオレンジの電気。
ヒモを引っぱることで点灯消灯するシステムじゃん?
1回引っぱったら全部の照明がつく。
2回引っぱったら、1個だけ照明が消える。
3回引っぱったら、照明が消えて小っちゃい電球がつく。
4回目でようやく消灯だ。
つまり消すときは、かならずこの小っちゃい電気をつけなきゃならん。
3回目がいらなすぎるんだよ。
なんでだよ。
いらないよコレ。
いちいち消す前にこれを点灯させなきゃならん無意味さよ。
なんの儀式だよ。
しかし、なんのために存在するのか小っちゃい光。
たぶんアレかな?
黄色信号みたいなもんかな?
インターバルというか……
ワンクッションというか……
なんかセーブポイントみたいな感じなのかな。
だから完全消灯する前に、いったん豆電球を光らせてるのかな。
そんなふうに、私はずっと自分を納得させてきた。
14年間ずっと。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ちがった。
ノノ 人С川 w )
そうじゃなかった。
あのボヤーっとした電気を、つけた状態で寝る人がいるのだ。
マジでビビった。
いや、友達の家に泊まったことではじめて知ったんだ。
私:
「いや、あの、電気消して」
友達:
「へ? 消えてるやん」
私:
「ついてるやん、まだ小さいのが。オレンジが」
友達:
「え? これはつけとくけど。え、つけるやろ?」
私:
「え、ふだんからコレなん?」
友達:
「真っ暗やったら怖いやん」
驚いた。
ほんとうに驚いた。
寝るときに、うっすら電気をつけておきたいタイプの人がいるらしいのだ。
どうやらあの小さい電球、そのために存在してるらしい。
私は寝るとき完全に消灯したいタイプだ。
だからそういう必要性に、まったく気づかなかった。
友達:
「えっ! ニニコちゃんの家、まだヒモなん?」
私:
「しゃあないやん。昭和の家やもん」
友達:
「ウチのはリモコンやから一瞬でつけれるねん」
私:
「じゃあ、そのホコリだらけのリモコンで電気消して」
友達:
「なんで消すのん」
私:
「まぶしくて寝られへんやん」
友達:
「ウチのやつLEDやからそんな明るないやん」
私:
「明るい。消して」
友達:
「真っ暗やったら寝られへんもん」
私:
「だからそれやと私が寝れ……もうええ、電気外す」
友達:
「ちょっと触らんといて!」
私:
「ほんだら消してよ! よし、カバーは取れた」
友達:
「やめてって! ワーワー!」
私:
「なんこれ、電球ちゃうやん! ワーワー!」
友達:
「もう帰って! ワーワー!」
私:
「帰るわ! ワーワー!」
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ ムッカつく!
ノノ 人С川 ꐦ w )
さすがにやりすぎたのは反省してるが、なんやねん照明くらいで。
なんかもうムキになって、この世界にハラ立ってきた。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ なんやねん!
ノノ 人С川 ꐦ w )
なんやねんあの常夜灯とかいうの!
待って、どゆこと!?
寝てるんだから明かりいらないじゃん。
真っ暗でも支障ないじゃん。
なんか困ることあんの?
友達が言うには、怖いからとのことだった。
眠りに落ちるまでは、当たり前だがまだ意識がある。
そのとき完全に暗闇だと、なんか怖いんだそうだ。
いや意味わからんわ。
ほかには、夜中に目を覚ましたときとか。
夜中にトイレに行きたくなった時、完全な暗闇だとたしかに危ない。
うっすらと明かりがついてたら、最低限だが見えるから安全だというのだ。
ネットで調べてみたんだ。
リアルでも聞いてみた。
驚くべきことに、けっこうな割合の人がつける派だった。
日本人の半数くらいが、寝るときに小っちゃい電気をつけてるらしい。
子どものころからずっとそうだって。
おいおいマジかよ。
そんなにオレンジ電球の愛好家がいんのかよ。
ちょっとしたカルチャーショックだな。
いや、どんなシチュで寝ようがその人の勝手なんだけど……
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 待って。
ノノ 人С川 w )
ちょっと待って。
そう言えば、古川はどうやって寝てんの?
あいつは豆電球つけて寝てんのかな?
ちょっと見てこようぜ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ ……ついてる。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● シー……静かに。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ぐっすりだな。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ ムッ!?
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 忍法、おふ遁。
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● えー、はい。
ノノ 人С川 w )
みんな使ってんだな、あの電球。
私はいいや。
これからも真っ暗で寝かせてもらうぞ。
うーん、常夜灯ねえ……
もし2人以上で寝てるんなら、まだ意味あるかもしれない。
相手を起こさないように動かないといけないこともあるだろう。
いろいろ様子を確認せにゃならんこともあるだろうし。
あ、べつにエッチな話じゃなく。
子どもたちだけ先に寝かしてるとか、そんな場合のことね。
そういう状況の話だ。
なんという、はしたない想像をするんだキミは。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● エッチ!
ノノ 人С川 ꐦ w )
「 常夜灯 」
じょうやとう。
夜の明かりとはよく言ったもんだ。
あいにくだったな。
私はこれからも完全消灯して寝るぞ。
もう習慣になってて、あんなわずかな明かりでもついてたら眠れん。
ただなんか損してる気分だな。
せっかく初期装備されてる部品なんだし、私も使わないと損な気がする。
あの明かり、なんか役に立つことないかな。
うーん。
たしかに夜中に起きたときに明かりがあったら便利かもだけどさ。
アレがついてるだけでも私、ホントに寝れないんだって。
私の神経はデリケートなんだぞ。
真っ暗じゃないとおやすみ出来ねーんだよ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● うーん……
ノノ 人С川 w )
ホントに使い道が思いつかないな。
誕生日にケーキのろうそくを吹き消すときとかに使うとか?
いやいや、寝室でバースデーケーキやってたら怖いわ。
居間でやれそんなこと。
1DKだったら危なくて余計やらないだろ。
ダメだ。
常夜灯の使い道、いまは思いつかん。
将来、結婚したら使うようになるのかな。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ あッ!
ノノ 人С川 w )
あ、いいこと考えた!
非常時とか、必要なときだけ勝手に点灯してくれればいいんだよ。
常夜灯がないと寝れない人は、最初からつけとけばいい。
寝たのをセンサーが確認したら、勝手に消灯する仕組みにすればいい。
今の技術なら出来るんじゃないの?
スマホで脳波をチェックするとかしてさ。
そうじゃない人は、最初から真っ暗で寝ればいい。
夜にトイレ行くとか、必要なときだけ点灯してくれたらいいんだ。
地震だとか火事だとかの場合に勝手に点灯してくれんの。
あとは誰かがドアを開けたときとか。
天井のセンサーで確認すんの。
なんか動きがあったときだけ、自動的に点灯してくれたらいいんだ。
待てよ、じゃあ常夜灯って名前やめろ。
つねにって。
常にじゃないじゃん。
必要なときに、必要なひとだけ使うんだから。
夜の常にじゃないだろ。
そうじゃない人もいるんだからな。
名前がおかしいから、私は友達とケンカするハメになったんだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ ぃよおし!
ノノ 人С川 w )
よおし、ふさわしい名前をあたえてやる。
うーん、どうしようかな。
また私のネーミングセンスが問われるのか。
そもそもなんであれ、オレンジの光なんだ?
わざわざ色つけるのって無駄じゃない?
調べたら、オレンジの電球光は熱を持ちにくいからだそうだ。
しかも目に優しい。
だから睡眠を邪魔しないために、オレンジ色にしてるらしい。
マジで寝るとき用に特化して作ってあるな。
まあ、そこまでしてもらっても私は寝られないんですが。
じゃあ、いよいよ常夜灯って名前はおかしいだろ。
私がちゃんとした名前をつけてやる。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ふーむ……
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 来た!
ノノ 人С川 w )
よし、考えたぞ。
これしかない!
スモールライトだ。
いやいや、小っちゃい光なんだからスモールでしょ。
これからはみんなもそう呼んでほしい。
スモールライトぉ!




