*。*:゜ ニニコ論文 「完全漢字」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットは昨日、すごいニュースを聞いた。
新しい完全数が発見されたというのだ。
マジで驚いた。
発見されたのは最近ってわけじゃないが、私が知ったのは昨日だ。
なんで私に隠してたんだよ。
教えてよ。
完全数って知ってる?
たとえば「 6 」がそうだ。
6の約数は、1、2、3である。
では、1+2+3は?
答えは6だ。
このように「その数字」の約数の合計が「その数字」になる数。
まさに完全なる数字。
完全数である。
6は、もっとも小さい完全数だ。
6の次の完全数は、28だ。
1+2+4+7+14 = 28。
その次は、496。
1+2+4+8+16+31+62+124+248 = 496。
次は、8128。
次はいっきに飛んで、33550336。
つぎはもっと飛んで、8589869056。
完全数は、とんでもなく特別な数字だ。
紀元前以来、わずか51個しか発見されていないSSレアだ。
だが2024年、52個目の完全数が発見されたのだ。
数学界をゆるがす大ニュースだ。
その数値たるや、41024320桁である。
41024320ではない。
41024320「ケタ」である。
4102万字以上の数字ってどんなんだよ?
さっき、小説家になろうの閲覧数1位の作品見てきた。
600話以上の超大作だった。
その作品の総文字数が210万文字くらいだったぞ。
ちなみに源氏物語が100万文字くらいだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● やるな紫式部。
ノノ 人С川 w )
新しい完全数の発見はすばらしいことだ。
チープな言いかたになってしまうが「探せばある」んだよ。
あきらめなければ、きっと欲しいものは見つかるんだ。
だから私も探しつづけたいと思う。
完全漢字をな。
まず、4つの完全漢字を紹介しよう。
① 女子 …… 好き
② 重力 …… 動く
③ 山鳥 …… 嶋
④ 木目 …… 相
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ わかったか!?
ノノ 人С川 ꐦ w )
完全漢字、こういうことなんよ!
「 好 」という漢字に注目してみよう。
女と子、ふたつの漢字によって構成されてる文字だ。
こういう漢字を、会意文字 (かいいもじ)という。
会意文字は、まったくありふれた漢字だ。
言+売で、読む。
木+黄で、横。
こんな漢字いっぱいある。
わざわざ探す価値などない。
ただ、そういうことじゃないんだよ。
「 言 売 」なんて熟語ないだろ?
「 木 黄 」なんて熟語ないだろ?
完全漢字はちがう。
2字熟語の文字ふたつを合体してできた漢字なんだ。
女子 (じょし)という2字熟語がある。
そして女と子の2字があれば「 好 」の字を作れるのだ。
重力 (じゅうりょく)ありて「 動 」あり。
山鳥 (やまどり)ありて「 嶋 」あり。
木目 (もくめ)ありて「 相 」あり。
2字熟語のふた文字が合体し、ひとつの漢字となる会意文字。
私はこれを完全漢字と読んでいる。
ほかにも6つ紹介しよう。
とは言え、ちょっとイマイチなやつだけどね。
① 田丁 …… 町 (でんてい、農夫のことよ)
② 日月 …… 明 (じつげつ、歳月って意味)
③ 角虫 …… 触 (ツノムシって虫がいるの)
④ 土成 …… 城 (徳島県阿波市にある地名)
⑤ 木立 …… 柆 (ろう。折れた木って意味)
⑥ 文鳥 …… 鳼 (ぶんちょうのオサレな字)
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ……な?
ノノ 人С川 w )
なんか「うーん」って感じだろ?
田丁、日月は、ふだん使わない難しい言葉だ。
ツノムシなんて、生物学的に正式な名前じゃないしな。
土成町も、阿波市の住人以外にはピンと来ないんじゃないかな。
柆は、漢字がマイナーすぎる。
漢字検定1級の字だもん。
それに鳼は、ちょっとズルいぞ。
この漢字作ったやつ、面白半分で文と鳥を悪魔合体させただろ。
あ、ちなみにこの完全漢字。
文字の形が重要だからな。
漢字の成り立ちとか意味とかは、まったくどうでもいいのよ。
たとえば「 浜 」。
左の点3つはサンズイと言って、水をあらわす部首だ。
ゆえに、水兵と書いて「 浜 」だとも言える。
だがこれは完全漢字ではない。
だって浜の左半分、どう見ても水って字じゃないもん。
完全漢字は、形が変わらないまま合体してるのが美しいのだ。
それなのに。
ああそれなのに。
水はなんか点3つになっちゃうし。
人は「イ」になるし。
手は「才」みたいになるし。
刀は「リ」みたいになるし。
結婚してあなたは変わってしまったパターンだ。
昔はこんな人じゃなかったのに。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ もう別れて!
ノノ 人С川 ꐦ w )
とは言え、完全漢字のなかでも美しさにはレベルがある。
なかでも「動」なんてカンペキだ。
重に力で「動」。
そのあとに、また力をつけて「 動力 」って熟語も作れるもん。
ああ、私がもし物理学者だったなら。
新しいエネルギー理論を発見したら、「重動力」と命名するのに。
「重」+「重」+「力」+「力」。
こんな美しい熟語見たことあるか?
いや、存在しないんだけどさ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ……さて。
ノノ 人С川 w )
言うまでもないが……
この完全漢字には、 X軸 と Y軸 がある。
いままで紹介してきたのは、X軸の完全漢字だ。
Y軸の完全漢字も紹介しよう。
① 中心 (ちゅうしん)…… 忠 (ちゅう)
② 不正 (ふせい)…… 歪む (ゆがむ)
③ 木口 (こぐち)…… 杏 (あんず)
さっきの横フュージョンに対し、縦フュージョンだ。
この論文は横書きだからな。
だから横合体のX軸から紹介したわけだが、Y軸の完全漢字も美しい。
だが、やっぱり「 忠 」だけ格がちがうな。
忠心ってタテに書いたら、「中」+「心」+「心」だぞ。
もうひとつ、アタマに「中」を足してあげたい。
ああ、私がもしサムライだったなら。
中途半端な仕事して、殿さまから「中忠心め!」って毎日怒られるのに。
私は完全漢字を愛している。
なぜなら美しいからだ。
だからこそ悲しい。
両手で数えられるほどしか存在しないことが悲しい。
完全数がそうだ。
新たな発見のために、人生をささげた数学者もいたという。
必死にさがしたのだ。
無限に続く数字のなかから、もっとも美しい数を。
その過程で、さらに多くの数学理論が誕生した。
友愛数。
婚約数。
社交数。
いずれも数学史に永遠に刻まれる、美しい数だ。
現在も、新しい完全数は探され続けている。
コンピューターの発達により、いまや億のケタまで調べられているのだ。
なにが人類をそこまでさせるのか。
理由なんかない。
完全数を探すのが楽しいだけだ。
美しいものを発見する喜び。
それは学問だろうが埋蔵金だろうが変わらない。
かならず次の完全数を見つけるんだという情熱。
私もおなじだ。
ほかにも完全漢字を見つけたい。
ただそれだけだ。
と言っても、そう簡単に見つかるもんじゃない。
もしかしたら、もうすべて探し終えちゃったのかもしれない。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ・・・・・・
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● かまわない。
ノノ 人С川 w )
まだこの世界にあるかもしれない、その可能性だけで十分だ。
何年でも待つ。
何十年でも待つ。
紀元前3世紀の哲学者エウクレイデスは『 原論 』を記述した。
はじめて完全数を紹介したとされる数学書だ。
原論の発表から2300年。
我々が発見した完全数は、わずかに52個だけ。
44年にひとつしか発見できてないペースだ。
そんなもんなのだ、完全の発見とは。
だから私も待つことにしよう。
次の完全漢字との出会いを、ひたすら待つことにする。
私がこの世を去る前日でもいい。
いつか出会おうではないか、次の完全漢字よ。
まだ見ぬ完全よ、それまでほかの誰にも見つかるなよ。
さて……今日の論文も長くなってしまった。
疲れたからフラペチーノでも買いに行くとしよう。
いつもみたく、古川の財布から出すか。
チッ、しけてやがるぜ!
小銭とレシートしか入ってねえ!
ほとんど駐車料金の領収書じゃねえか。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ……え?
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 〇 〇 え!?
ノノ 人С川 w )