*。*:゜ ニニコ論文 「カバン」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットは、物を粗末にするのが嫌いだ。
とはいえ、社会の大量消費化にべつに異議はない。
経済とは消費によって回すものだからだ。
この世の中は、消耗品によって支えられている。
だからこそまだまだ使えるものを捨てるのは、なんかイヤなのだ。
たとえば古川の家には掃除機がある。
購入したのはもう20年近く前だが、まだまだ現役だ。
しかし、たとえば電源のボタンが壊れたら?
ほかの部品はまったく無事でも、買い替えるしかなくなるではないか。
電源だけ修理できればいいのだが、買いなおしたほうが安くつきそうだ。
第一、とっくに保証期間外は終わっている。
さすがのメーカーも修理に応じてくれないだろう。
私に電気工学の知識があれば自分で直すのだが……
さすがに無理だ。
分解したところでどうしようもない。
もったいないもったいないと思いつつ、捨てるしかないだろう。
そう。
ようするに私は「 もったいない精神 」が強いのだと思う。
べつに環境問題とか節約とかなんて話じゃない。
単にそういう性格なだけだ。
まだ使えるものを捨てたくないだけだ。
だからこそ、自分で直せるものは出来るかぎり直すことにしている。
たとえば、これ見てよ。
古川のおさがりのカバンだ。
私的には、あんま好きなデザインじゃないんだけどね。
たくさん持ち歩けるカバンが必要なのよ。
だから古川が仕事で使ってるのを昨日もらったんだ。
うん。
ポケットもたくさんあるし、作りもしっかりしてる。
機能的だし気に入りました。
取っ手のネジがねえ!
かたっぽ外れてやがるじゃねえか!
作りがしっかりしてるって言った瞬間にコレかよ!
いるかこんなもん!
チャップリンの小道具じゃねえぞ!
……いや、待て待て。
たかがネジが外れてるだけだ。
直せばぜんぜん使える。
私としたことが取り乱してしまった。
とりあえずネジを探すとしよう。
あるとしたら古川のトラックのなかに決まってる。
勘弁してくれよ。
こん中から探せってか?
どこよ……ホントにあんの?
もし無かったらサイドブレーキへし折るからね。
ん……?
んん!?
あった!
こんなとこに!
汚すぎるトラック、どうなってんの!?
なんかシフトレバーの根っこみたいなとこにあったぞ!
ちょ、ウソでしょ!?
指が入ら……ネジが取れん!!
どうすんのコレ!
え、どうすんのコレ。
運転席を分解しないと取れなくない?
あ、分解で思い出した!
さっきの掃除機使えば取れるんじゃない?
ブオーン。
ブオーン。
ブオーン。
ぜんぜんネジ取れない!
しかもキレイにもなってない!
こんなんで取れるわけないだろ。
じゃあなに使えば取れるんだ!
うーん、弱ったな。
なに使っても不可能な気がする。
どうしたもんかな。
あ、そんな難しく考えることなかった。
いいこと考えた。
ドライバーの先に両面テープ巻いて引っつけよ。
こいつめこいつめ!
どうだ!
トラック分解されたいんか!
ダメだ、取れない。
もうどうしようも……
あれ待てよ?
ハサミでつかめないかな、ネジ。
取れた!!
取れた取れた取れた!!
やったやった!
このネジを抜いたものがアーサー王!
ネジを締めて……
チマチマめんどくせえ!
いまからでも捨ててやろうか!
直った!
直った直った!
ほら見てこれ!
やったやった!
もうネジは瞬間接着剤で固めてやったわ。
どうだっただろうか、今回の論文。
論文になってないけど、たまにはアリだろう?
澳加純さんに私を描きまくってもらったんだ。
いいだろ今回の私も。
自慢したくてウズウズしてたんだ。
ありがとう、澳加純さん!
ちなみにカバンの中はこんな。