*。*:゜ ニニコ論文 「スカイハイランドリー」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットは、いまから洗濯物を干す。
タオルを!
シャツを!
パンツを!
シーツを!
干すのだ、干すのだ!
あの方法で……夢にまで見たあの方法で!
あこがれの、あの方法で洗濯物を干すのだ!
諸君、お待たせした!
これより「 スカイハイランドリー作戦 」について説明する!
私ことニニコ・スプリングチケットは、外国生活にあこがれている。
古い外国映画を見るたびに、心がトキめくのだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ヨーロッパだ!
ノノ 人С川 w )
パリだ、バルセロナだ、アムステルダムだ!
ウィーンだ、ブリュッセルだ、カリフラワーだ!
レンガ造りの街並み。
石ダタミの道路。
中世を思わせる建築物。
ただのアパートさえも美しくて……
それらが密集、密集、密集!
レンガ建築が街を埋めつくしているのだ。
.。*゜+.*.。 ゜+..。*゜+
めっちゃ憧れる。
なんてステキなんだろう。
.。.:*・゜゜・*:.。..。.:*・゜
表通りでは新聞売りの少年が、花屋の少女に愛を語り。
上品な身なりの紳士は、カフェで葉巻をたしなみ。
美大の学生が、絵道具をつんだ自転車を走らせ。
裏通りでは、ギャングが債務者をボコボコにしている。
.。*゜+.*.。+..。*
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 三 三 ステキ……
ノノ 人С川 w )
.。.:*・゜゜・*:.。
みんなは、イタリアを舞台にした映画を見たことはあるだろうか。
イタリアの市街は、おどろくほど道がせまいのだ。
もちろん日本でも、細い路地の町はいくつもある。
だが日本は、せいぜい2階建ての住宅が密集してる程度だ。
しかし!
しかしだ!
イタリアの、それもナポリのような都市は別格である。
中世時代から産業、観光の中心地として人口が集中してきた市。
さらに城塞都市として、軍事防衛の必要もあった。
そのため、居住スペースに割ける用地はとても限られた。
建物は高く高く、路地は窮屈になるしかなかった。
だから3階建て、4階建てのアパートは当たり前。
それがギュウギュウ詰めなんだぜ?
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 暗いんだよ……
ノノ 人С川 ꐦ w )
すさまじいアパート密度で、およそスキマというものがない。
そんなだから、路地には日光がほとんど入ってこない。
路地ウラはおそるべき薄暗さだ。
日照のことを考えると、日本はほんと恵まれている。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ では諸君!
ノノ 人С川 w )
そろそろ行こうか。
「スカイハイランドリー作戦」について説明しよう!
日照権という言葉を知っているだろうか。
ある日、自分の家のとなりにマンションができました。
で、太陽がさえぎられて、一日中ウチが日陰になりました。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 管理会社コラ。
ノノ 人С川 ꐦ w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 〇 〇 告訴してやる。
ノノ 人С川 ꐦ w )
これが日照権だ。
各家屋の陽当たりを保証する権利である。
となりのビルが高すぎるせいで、それより低い家に日が当たらない。
これを侵害行為と訴えているわけだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● おっと!
ノノ 人С川 w )
誤解しないでほしい。
日照権という法律は、日本国憲法に存在しない。
あくまで建築基準法のうえで、日影の規制があるだけだ。
どうちがうねんとか私に聞くなよ。
行政書士に相談しろ。
さ、今日はここまでにするか。
最後まで読んでくれてありがとう。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 〇 〇 いや、待って!
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 忘れてたわ!
ノノ 人С川 ꐦ w )
諸君、お待たせした!
これより「スカイハイランドリー作戦」について説明する!
外国の映像で、こういうのを見たことはないだろうか。
アパートとアパートに、ロープで洗濯物である!
……なんか変に怖い絵になったな。
まあいいや。
下の画像見てよ。
まずアパート。
そんでだ。
アパートとアパートの間に、洗濯物。
いったいナニさらすねん。
建物と建物のあいだに、ロープを渡している。
そして、そのロープに洗濯物を干しているのだ。
限られた日光をムダなく使うための、生活の知恵なのだろう。
それは理解できる。
このやりかた、仕組みはなんとなく想像がつく。
長いロープを往復させ、大きな輪っかにしているのだ。
ロープウェーのように洗濯物を出し入れしているらしい。
なるほど、考えたものである。
なるほどなるほど。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● いえね?
ノノ 人С川 ₋ )
調べてみたら、このロープ。
雨どいとかベランダとかに引っかけてあったのよ。
ユーチューブとか動画で確認したから、これは間違いない。
向かいの建物の適当なとこに、ヒモをくぐらせてるのだ。
で、干すときは窓から洗濯物をロープウェーだ。
待って。
それはわかったけど待って。
こんなん勝手にやっていいの?
いや、ということはだよ?
反対側の住人は……
さらにべつの建物にロープを張ってるのか?
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1周して結界みたくならない?
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これホントに無断でやってるんだろうか?
いや、そこを調べろよと言われたらそれまでなんだが。
わかんなかったんだもん。
しょうがないじゃん。
え、マジでいいのコレ?
向こうの住人に許可とかもらわなくていいのだろうか。
たとえ住人が許しても、大家が許さないと思うけど。
ていうか行政が許すのか?
調べても調べてもわからなかった。
ってことは、本当に明確なルールそのものがないのか?
マジで無断でロープ渡しても、文句言われないわけ?
ナポリではそういう文化なのだろうか。
日本だったら考えられない。
知らない人が、いきなりロープ持って訪ねてくるんだぞ?
(´◉◞౪◟◉) ← 知らない人
(´◉◞౪◟◉)
「どうも、向かいのアパートの古川です」
「お宅のベランダの手すりに、ロープかけますね」
「いやあ、今の季節はなかなか乾きませんね」
(´◉◞౪◟◉)
「ところで厚かましいお願いなんですが」
「パンツ干すの手伝ってもらえますか、フヒヒ!」
実際このロープウェーみたいな干しかた、名前あるのかな?
私は勝手に「スカイハイランドリー」と呼んでいる。
みんなもそう呼んでくれていいぞ。
ていうか、日本でもこれ普及しないかな?
さすがに現在、日本でこれを実践している人はいないだろう。
だが現代の住宅事情を考えてほしい。
ふつうに一般的な方法になってもいいと思う。
だって日本の都市部でも、高層マンション化が進んでるんだもん。
スカイハイランドリーこそ、合理的な干しかたではあるまいか。
私が最初にやってもいいんだけどさ。
あいにく平屋に住んでるんだよね。
この際、タワーマンションにでも引っ越そうかな。
で、スカイハイランドリーを実際にやってみるのはどうだ。
しかし第一人者になるのは、なかなか勇気がいる。
消防法とかに引っかかったりするのかな?
まずマンションとマンションの間にロープを張って……
知らない人が見たら、ルパンが盗みに入ったと思うかもしれないな。
そもそも向かいのマンションに、なんと言ってお願いしたものか。
「どうも、となりのスプリングチケットです」
「お宅のベランダの手すりに、ロープかけますね」
(´◉◞౪◟◉) ← 向かいのマンションの人
(´◉◞౪◟◉)
「洗濯ヒモですか? どうぞどうぞ」
「いやあ今の季節はなかなか乾きませんね」
「パンツ干すの手伝いましょうか、フヒヒ!」
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ゜ ゜ ふう……
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 ₋ )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 出したかった。
ノノ 人С川 w )
アパートの密集してる感を出したかった。
そのためにがんばったんだ。




