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*。*:゜ 論文ニニコ ゜:。*  作者: ニニコ・スプリングチケット
28/84

*。*:゜ ニニコ論文 「テレビを見た夢」 ゜:。*





挿絵(By みてみん)




私ことニニコ・スプリングチケットは、過去の記憶について語ろうと思う。



と、こんな書き方をすると、哲学的なテーマと思われるだろうか。


もっと軽い話だ。




過去に見たテレビ番組について話したい。


正確に言えば、見たと「思う」番組だ。



たしかに見た覚えがあるのだ。

だが確証はまったくない。


あれは現実の番組だったのだろうか。





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●   それとも夢?

ノノ 人С川   w )




それをリアルだったと錯覚しているのだろうか。


はたして本当に放送された内容だったのか。



あるいは夢だったのかもしれない。



なぜそんなに自信がないのかって?


奇想天外すぎる番組だったからだ。



あまりにもブッ飛んだ、なんというか……







挿絵(By みてみん)






今から話すのは私が「夢で見た番組」の話だ。


決して事実ではない。



……と思う。








挿絵(By みてみん)






ただ聞いてほしいだけだ。



私もそれ見ました! みたいな感想はいらない。


なにそれ? みたいな感想はいらない。



聞いてほしいだけなのだ。

すごい不安なので、夢の話ということにしておく。


3つ、夢で見たテレビ番組の話をしよう。







挿絵(By みてみん)





南の島の話だったと思う。


島の伝統儀式を取材したドキュメントだ。



テーマは「 成人の儀式 」。



その島では毎年1回、17歳になる少年が海岸に集められる。


その年は20数名の若者が列をなしていた。



海岸には、弓を持った老人もいた。


島の長老である。



長老は海の神に祈りをささげると、人数分の矢を海に放った。


ただの矢ではない。

矢には、少年ひとりひとりのお守りがくくりつけられている。






挿絵(By みてみん)






このお守りには、船の精霊が宿っているという。


もし失くしたら、二度と海に入れなくなる。


精霊を失ったことになるからだ。



すなわち島から出られなくなってしまう。


漁業どころか、渡航もできなくなってしまうのだ。


精霊を失った者は、貝拾いの仕事をして一生を終えるのだという。



あろうことか、それを海に捨てるジジイ。






挿絵(By みてみん)






つまり精霊の矢を探してくることが、島の成人の儀式なのだ。



よりによって、その季節は海流がやってくるのだ。


潮の流れが、テレビ画面からも確認できるほどだった。



挑戦者らは、地獄の海に飛びこんでいく。


島の若者はみな泳ぎの達人であり、修練のすべてはこの日のためにある。


荒海から矢を奪還した者だけが、一人前の男子と認められるのだ。




「ぼくはシンガポールに留学するんです!」


「結婚を約束している人がいるんだ」


「漁船の免許をとるために、首都にいくのさ」



誇らしげに矢を構える新成人たち。


それぞれの夢を、外国から来たレポーターに語る。

その姿は、まさに若き勇者たちだった。




そのなかに、わずか10歳足らずの少年がいた。


場ちがいとしか言えないような、幼い少年だった。



泣きながら海岸に立ちつくす彼に、長老は現地の言葉でどなり続ける。


聞けば、少年は長老の孫だというではないか。



レポーターが彼にマイクを向ける。


「君はどうして、成人の儀式に参加しているの?」



少年の答えは、耳をうたがうものだった。






挿絵(By みてみん)





「本当はお兄ちゃんが参加するはずだったの」


「でもお兄ちゃんはカナヅチなんだ」


「昨日、お兄ちゃんは家出しちゃった」


「なんかイギリスに行くって置き手紙があったよ」


「家宝の、サンゴの仏像も無くなってた」


「おじいちゃんがキレて、勘当だとか言い出したの」



「で、家族の名誉のために、僕が代わりに参加しろって」


「……おじいちゃんが怒ってるからもう行くね」






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●    だれか止めろ。

ノノ 人С川   w )








挿絵(By みてみん)






はたして少年は矢を回収できたのか?


家族の名誉は回復したのか?


アニキはどこへ?



すべては不明だ。


なぜなら、このあとの内容を覚えていないから。



そもそも本当にこんな内容だったかどうかもわからない。







挿絵(By みてみん)






たしかにこういう番組を見たような記憶があるのだ!


だが、実際に見たのか自信がない。



だってこんなアホな……





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇    なんコレ??

ノノ 人С川   w )





やらせにしても異常きわまる内容。


まさか、まさかこんなアホな番組を放送しないだろう。



と、思うんだが……



でも見た覚えがあるのよ。


こまかいとこが違うかもしれないが、たしかに見たんだ。



問題は、夢かリアルかわかんないのよ。


……できたら夢だと言ってほしい。






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇   ・・・・・・

ノノ 人С川   w )





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇   ……次いくぞ。

ノノ 人С川   w )








挿絵(By みてみん)





バラエティだったと思う。

スタジオには、10人の人間が集められていた。


全員が素人である。



テーマは「泣くこと」。



10人のうち、だれがいちばん最初に泣けるかを競うゲームだ。


企画意図がまったくわからん。






挿絵(By みてみん)






スタジオには10個のイスが用意されていた。



円陣を組むように、と言えばわかるだろうか。


参加者たちはイス取りゲームのように向かい合っていた。



そして参加者は全員、思い出の品を持ってきたんだ。




ある老人は、ボロボロの包帯を手にしていた。

隊長がくれた包帯である。


彼は戦争中に被弾し、隊長から手当てを受けて帰国した。


その隊長は自分より5歳も若い士官だったという。


だが若者が日本に戻ることはなかったそうだ。




またある男性は、映画スターのサインを持参した。


彼は、あこがれの女優に会うためだけに渡米したそうだ。


映像会社でアルバイトを続け、3年後ついに女優と対面できた。

そのとき彼は、もう死んでもいいと思ったそうだ。




ある老婦人は、母の編んでくれたマフラーを。


ある紳士は、来月結婚する愛娘の写真を。



恩人の手紙を。


いまは亡き愛犬の首輪を。


会社を創業するにいたった、商品第1号の設計書を。



彼らの人生で、もっとも大切なものを手にしていた。


泣けないはずがないではないか。



だが問題はそこではない。


誰がいちばん最初に泣けるかを競う番組だ。


彼らはそのためのアイテムを持参したというわけだ。




そのなかに異色の挑戦者がいた……





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇   アフリカ人だ。

ノノ 人С川   w )





アフリカから来たというその人物は、明らかに浮いていた。


部族の戦士だという黒人青年は、ヤリを持って来たのである。



彼の一族はサバンナに生活し、いまも狩猟で生計を立てているという。

もちろん日本語はまったく話せない。



一体どういう成りゆきで、日本のテレビに出演することになったのか。


どうやってヤリなんか税関を通したのか?






挿絵(By みてみん)





彼のエピソードはすさまじかった。


ライオンを退治したというのだ。



玄関を出たらライオンが歩いていたので、倒したという。






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇    なんだって?

ノノ 人С川   w )




なんで家の前にライオンがいるのか?

そんなとこに住むなよ。



彼はライオンの件で、村いちばんの美人を妻にできた。


若妻の写真を、戦士はみんなに見せびらかす。



ついでに倒したライオンの写真も見せてくれた。






挿絵(By みてみん)






ライオンにはヤリが刺さっていた。



その思い出で泣いて見せるというのだ。







挿絵(By みてみん)





司会者の合図によってスタートが切られる。


10人は、いとおしそうに思い出の品を抱きしめる。



それだけで涙がこぼれそうになるのだ。


スタジオは静まり返る……



はずだった。





「ウオオオオオオオオオオン!」


「オオオオオオオオオン!!」



0.4秒で号泣する戦士。

なにやら現地の言葉で叫んでいる。



「dvwdfqfvhjwdlん!!」



まだ叫んでいる。


どうやら神に来日を感謝し、ついでにライオンの冥福を祈ってるらしい。


字幕にそう書いてあった。

彼の優勝である。





挿絵(By みてみん)





激怒するほかの参加者たち。



「お前のせいで泣けないだろ!」


「おい、こんなの汚ねーぞ!」


「ちょっと、この人ホントに泣いてんの!?」


「きみ、いったん泣きやみたまえ!」


「ウオオオオオオン!」



爆笑する司会者。


「ダーッハッハ! ではまた来週ガハハ!」






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●    以上だ。

ノノ 人С川   w )





ここで番組は終わった。


こういうバラエティを見たような気がするのだ。



ウソじゃない。

ウソじゃないが……


ホントに見たのかと言われたら、なにも言えない。






挿絵(By みてみん)







もうすでにヤバイが……



3つ目行くか?







挿絵(By みてみん)





むかし、深夜に見た番組だ。


これもバラエティである。



そこには若手のコンビ芸人が4組いた。


総勢8人、まったく見たこともない連中だった。



少なくとも私は、名前も顔もはじめて見る若手芸人だ。


彼らがいろんなことに挑戦する、というのが番組のテーマらしい。



その日のお題は、正気とは思えないものだった。



白色火薬、ベビーパウダー、消石灰、セメント……


いろんな粉を小麦粉の代わりにして、クッキーを焼こうというのだ。







挿絵(By みてみん)





イカレすぎて言葉が出ない。


プロデューサーは脳の病気だ。



と、これはもちろん演出だ。


焼きあがったクッキーは、当たり前だが食べられない。



すなわち「 いかに食べないか 」が笑いどころだ。



8人の前に並べられるクッキー……らしき物体。



意外なことに、見た目はふつうのクッキーだった。


食べられないんですけどね。





挿絵(By みてみん)





3組のコンビがリアクションを取りはじめた。



「待ってくださいよ! くっさ!」


「いやこれ毒ですって!」


「重たすぎるって! 投げて遊べるで!」





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●   

ノノ 人С川 ꐦ  ₋ )





 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●    つまらん。

ノノ 人С川 ꐦ  ₋ )







挿絵(By みてみん)





こいつら、ぜんぜん面白くないんだけど。


べつの仕事さがしたほうがいいんじゃないの?



カメラが彼らから離れ、最後のコンビを映す。



そこには、ウソのような光景が広がっていた。







挿絵(By みてみん)




ボケ:

 「すいません、コーヒー下さい。もぐもぐ」



ツッコミ:

 「もぐもぐ。今日の晩メシたすかった」








挿絵(By みてみん)






ボケ:

 「この汚いの一番うまいわ。もぐもぐ」



ツッコミ:

 「もぐもぐ。あ、見て! 差し歯とれよった」






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 ● ●    こ、これが……

ノノ 人С川   w )




 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 〇 〇    これが芸人か!

ノノ 人С川   w )





ボーゼンと彼らを見守るほかの3組。


バカめ、お前たちとは才能がちがうのだ。



ただの無機物を美味しそうに食べる無名のコンビ。


私はその姿に、一種の感動を覚えた。



これがプロフェッショナルの芸人というものか!




その若手は現在、レギュラー番組を何本もかかえる売れっ子だ。


ほかの3組はコンビ名さえ思い出せない。


タレントがどれほど厳しい世界か、見せつけられた気分だ。



……待った。


くり返しになるが、もっかい書くぞ。







挿絵(By みてみん)





マジでこういう番組を見た記憶があるのだ。


あるのだが、だれに聞いても知らないという。


ネットで検索しまくったが出てこない。



あの番組はなんだったのか……?








挿絵(By みてみん)




やっぱり夢だったのだろうか。


今回は3つの番組の思い出について語った。



冷静に考えれば、こんな番組を放送するわけがない。


どんな企業もスポンサーになってくれないだろう。



でも、たしかに私はこの番組を見たんだ。

見たはずなんだ。


そういうことにしておいてくれ。






 ◆◆/ ハ""人"ハ人

 / |ハ川 【 【    ふう……

ノノ 人С川   ₋ )





今回の論文は書いてて疲れた。


ヘトヘトだ。






挿絵(By みてみん)







挿絵(By みてみん)



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チャッカマン

 ↑

ニニコのスピンオフ元よ。





シルバー・ザ・戦隊ヒーロー

 ↑

むかし描いた漫画よ。



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