*。*:゜ ニニコ論文 「笑い死に」 ゜:。*
私ことニニコ・スプリングチケットは笑うことが好きだ。
私だって、いっつも怒ってるわけじゃないぞ。
私がキレてるのは論文のなかくらいだ。
と言っても、べつに毎日笑いっぱなしってわけではない。
日常生活は、とにかく上手くいかないことのほうが多い。
リアルなんてそんなもんだと私は思う。
だから、笑うことを大事にしている。
しょうもないことでも笑うようにしてる。
ラノベの流行にケチつける自称上級者じゃないんだしさ。
面白い物へのハードルを、自分で上げるのは窮屈なことだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 待ってね。
ノノ 人С川 w )
ちょっと待ってて。
どこからやり直そうかな……
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● あー、OK。
ノノ 人С川 w )
リアルなんてそんなもんだと私は思う。
だから、笑うことを大事にしている。
しょうもないことでも笑うようにしてる。
美術品を品評するコレクターじゃないんだしさ。
面白い物へのハードルを、自分で上げるのは窮屈なことだ。
だからと言ってだ。
笑うだけの人生で、一生を終えたいってわけじゃない。
まして、死ぬまで笑わせてほしいわけじゃない。
死ぬくらいなら、そこそこ笑える程度で全然OKだ。
私が死ぬときは笑って死にたい。
人間なら、だれでも願うことではあるまいか?
いや人間という言いかたはおかしい。
「笑い」はすべての生物で、人間だけの現象である。
したがって「笑い死に」は、人間にのみ起こる死因のはずだ。
だが、実際にそんな死に方をした人間がいるのだろうか?
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● いるのだ。
ノノ 人С川 w )
歴史を振り返れば、笑い死にの記録は世界中に残されている。
もっとも古い記録は、紀元前3世紀。
どえらい昔の話だな。
「ソロイのクリュシッポス」
古代ギリシアの哲学者だ。
彼は「徳」について研究した偉人である。
クリュシッポスの最大の功績は、フマニタスの研究だ。
人間と動物の最大の違いはなにか?
彼がたどりついた答えが、フマニタスである。
フマニタスとはすなわち、ヒューマニズム。
同情、推論、知能など「心と知恵」を指す言葉だ。
人間は、まちがいなく動物だ。
だが人間とほかの動物は、明らかにちがう。
「 心と知恵 」だ。
心と知恵こそが人間の証明であると、クリュシッポスは説いた。
そのクリュシッポス。
ある日、悪ふざけでロバにワインを飲ませたらしい。
それも無理やり。
なにがフマニタスやねん。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● アホですかよ。
ノノ 人С川 w )
酔っぱらったロバは、よっぽどノドが渇いたのだろう。
木に実ったイチジクを食べようと必死になった。
まるでパン食い競争のように、ぶら下がったイチジクに首を伸ばす。
だが届かない。
風に揺れるイチジク。
必死で食らいつこうとするロバ。
その様子を見たクリュシッポスは爆笑。
「ギャハハ! あのロバを見ろよ!!」
爆笑。
そして笑い死んだ。
医学的所見から言えば、急性の心臓発作だろうか。
もしくは、呼吸困難による窒息などが直接の死因となる。
だが笑ってる本人以外、まったく笑えたもんじゃない。
クリュシッポス:
「ガハハハ! 死!」
クリュ息子:
「…………父さん?」
遺族は、どんな顔して葬式を出せばいいのか?
弟子たちは、どんな顔してお通夜に行けばいいのか?
ご近所の人:
「父上はまことにお気の毒でした」
クリュ息子:
「お悔やみ、痛み入ります」
ご近所の人:
「お元気そうでしたのに、どうして」
クリュ息子:
「酔ったロバを見て笑い死にしました」
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● 答えるなよ。
ノノ 人С川 w )
クリュシッポスのためにも、ホントの死因はだまっててやれよ。
ていうか、この話を聞いた人まで笑い死にしちまうぞ。
息子が真実を語ったせいで、言わんこっちゃない。
現代でもクリュシッポス、笑い死にした人と伝わってるぞ。
さて、笑い死にの記録は他にもある。
1660年である。
スコットランドの貴族「トーマス・アーカート」。
彼は、チャールズ2世が王位についたと聞いて笑い死にした。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ・・・・・・
ノノ 人С川 w )
いや、どこに笑うところが?
たとえこのとき一命を取りとめても、王室侮辱罪で死刑になったと思う。
あんま状況が変わっとらん。
……なんかさっきから、ロクでもない理由で他界してるぞ。
ちょっと待って。
みんな、笑い死にをなんだと思ってるんだ?
ほかの人を笑わせようとして死ぬことじゃないぞ。
後世の人間をドン引きさせてどうする。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● ふう……
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ さあて……
ノノ 人С川 w )
そろそろ、アレの話をせねばなるまい。
笑い死にとくれば、アレの話をしなくちゃな。
「 ワライタケ 」
ヒカゲタケ属の毒キノコだ。
もう一度言うぞ、毒キノコだ。
おそろしいことに世界中に広く生えているらしい。
その毒性たるや、悪い冗談としか言いようがない。
食べると体がシビレはじめる。
そして、とつぜん大笑いして止まらなくなるのだ。
そのまま、笑って笑って笑い続けるという。
恐ろしいキノコである。
こんなもんが晩ゴハンに出てきたら怖い。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ いや、マジよ。
ノノ 人С川 w )
冗談じゃないのよ、いまの。
1917年の石川県で、ホントにあった話なの。
とある夫婦が、晩ごはんにワライタケを食べちゃったのよ。
毒キノコと知らずに、おみそ汁に入れちゃったそうだ。
そのあとはもうメチャクチャだ。
ハダカで歌い、朝まで夫婦で踊りつづけたという。
10か月後、ロッケンロールな赤ちゃんが……いや知らんけど。
ひとまず安心してほしい。
ワライタケを食べて死んだ人はいない。
少なくとも日本には、ワライタケの中毒死は記録にないようだ。
ワライタケの毒は、シロシビンという物質だ。
これは麻薬の一種であり、幻覚症状を引き起こす性質がある。
ようするにワライタケの症状は、麻薬による反応だ。
なんのことはない。
笑いが止まらないなどの作用が出て、当たり前なのだ。
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ● さて……
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ● ●
ノノ 人С川 w )
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ さて、聞いて。
ノノ 人С川 w )
■■■■■■ ガチ注意報 ■■■■■■
いまからする話は、おふざけなし。
大マジメに、真剣に聞いてください。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
◆◆/ ハ""人"ハ人
/ |ハ川 ⦿ ⦿ 聞いてくれ。
ノノ 人С川 w )
ワライタケ。
さっきも言ったが、麻薬成分を含んだキノコだ。
含んでるっていうか、麻薬そのものだ。
たとえ話でもなんでもない。
麻薬及び向精神薬取締法って法律で規制されてるのよ。
これ大真面目の話だよ?
ワライタケって、違法薬物に分類されてるのよ。
もしワライタケと知ってて食べたら、マジで逮捕されるぞ。
もちろん栽培したり、ましてや売るなど論外だ。
山でワライタケを見つけても、スルーしろ。
ワライタケを食べて死んだ者はいないと、さっき書いたな。
麻薬に関わって死ぬ可能性は、なにも中毒だけじゃないぞ?
もう一度言うぞ。
ワライタケを見つけてもスルーしろ。
……せっかくの笑いの空気がどっか行っちゃったな。
メンゴメンゴ。
ちょっと話を変えようか。
「人生でいちばん笑った出来事」って覚えてる?
あなたは思い出せるだろうか?
私はかつて、本当に死ぬんじゃないかってほど笑ったことがある。
これ冗談抜き。
生命に関わるんじゃないかってくらい笑った。
あれは去年の夏、「力強い」という文字を見たときである。
なんのことかわからないよな。
いや、誤字なのよ。
古川アモロの親戚に、小学生の男の子がいる。
その子の漢字の宿題だ。
「ちからづよい」を漢字で書けという設問が出たのだ。
彼の回答を見た瞬間、私は全身に電撃が走った―――
゜+*:.。. *:+゜+*:.。
「 強 」 の 「 ム 」 がない。
+*:.。.*:+☆゜+*:.。.*:+゜+*:.
……かゆみむし。
ふっ……
あははははは!
あははははは!
にゃははははは!
お、お父さんは……
あーはははははははははははは!
ははは……ウエッホ!
はー、はー!
ヒュー!
ヒュー!
ヒュー!!
イーッヒッヒッヒヒヒ!
あはははは!
あはははは!
ハッ、ハッ……
ふぅ、ふぅ……
かゆみ虫だって!!
あははは!
きゃははははは!
あは、あは、あはははは……
い、息が……
あは、あは、く、苦し……
だ、だれか……
ゲッホ!




