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もしも願いが届くなら  作者: ゆう
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西暦2100年

真夏通り過ぎた昼下がり。

一人の青年が汗だくで飛び起きた。


「またか」


そう一言声を発するとその青年はテーブルの上に重なった一番上のノートをおもむろに開き何かを書き出す。

この青年は明里という女みたいな名前で

180cmはあろうかというスラッとした体型でまぁまぁの美形であろう顔は伸びた癖毛に隠れている。


インターホンのようなものが鳴り続けているが青年は集中し何かを書き続けている。

寝ている間に歌詞が浮かんだのか、それとも小説の一端なのかはわからないがテーブルに置かれたノートにものすごい勢いで書きなぐっている。


「明里~。開けてよ~」

インターホンの鳴り間に聞こえてくる可愛らしい声は幼馴染の香織の声である。


ようやくノートを閉じその声に気づいた青年はおもむろに左耳を触り

「解錠」

とつぶやく。


鍵が開いたのか雪山の如く雪崩こんできたその女は走りながら明里を押し倒し毛布越しに上に飛び乗る。

155cm程のその小柄な体とは裏腹に大人びた容姿に明里の鼓動はいつもの様に高鳴り始めるのだった。


「休み時間あと20分しかないじゃん!また寝てたんでしょ?」

と明里の上でシャンプーのようないい香りを漂わせながらひょっこり顔を出しいたずらっぽく言う。


「うるせぇよ。邪魔だし重いし。そんな毎日来なくても死にぁしないから」

ぷ~っと顔を膨らませて香織が強めの口調で言い返す。


「だって明里はご飯作ってあげないと食べないんだからしょうがないじゃん」


そう言い残すと香織はキッチンの方に流れていく。


ここは西暦2100年の世界。

全ては擬似ドリンクや擬似食物により全ての栄養をまかなえる為それさえ2日に一度程捕食していれば死にはしないのだ。もちろん香織もそれは承知で毎日足を運んでいるようだった。


香織が後ろ姿になると同時に明里がまたノートを開きおもむろにまた何かを書き出し始める。


数分後ガチャっとまた扉の開く音がする。

明里が軽く舌打ちをして扉の方を向くと


「おい明里~。どっか行かね~?」


また下を向き続きを書いているようだった。


「何無視してんだよ~。またなんか見たの~?」


この男は若という名前で明里がノートに書き出している内容の一端を知っているようだった。

体も筋肉質でがっちりした体型だが話方は柔らかくとても愛らしい表情をする男だった。


香織が

「出来たよ~」

と言いながらホクホクに温まったパスタのような物をテーブルに並べる。


いつもの事なのだろうか。

しっかり3人分用意されており明里の作業終わりを狙い皆が手を合わせ食べ始める。


明里も遅れて食べはじめしばし無言で食した後3人で会話始まる。

「ねぇ明里はいつも何をノートに書いてるの?ログじゃだめなの?」

若が続ける

「そうだよ。んな面倒な方法で…ノートだってどこで手に入れてんだ?」


明里が仏頂面で言い返す。

「……いや……書かなきゃいけない気がすんだよな。 それより香織時間大丈夫か?」


香織はこの話題が気になるらしく時計をちらっと見ただけで動こうとはしないのだった。


明里がだらしのない服装で食器を片付けておもむろにすべての積み重なったノートを鷲掴みにする。

「じゃあ手伝えよ。暇なんだろ? もう今日は家から出れねぇと思え!」

何かを手元で引っ張っているようだがテーブルが邪魔して見えない若と香織はのぞき込んでいる。


その瞬間ばさっと投げられたノートの表紙から中身が大量にこぼれ落ち二人の周りに散乱させた。

二人は即座に食器を片し始め少し笑顔になる。


「とりあえず日付順に並べてみよう。」


この世界は15歳のときに左耳の裏にチップを入れる。

それが媒体となり通信手段、生体情報、擬似モニターに至るまでを使用可能となるのだ。

逆に言うと14歳までは一切それらを持たない。 というよりも14歳までにそのチップの電磁効果に耐えられるようにするための体を養わなければならない。

明里は当初両親持ちで何不自由ない暮らしをしていたが、成長期である10歳の頃両親がある事件により他界。

他に身寄りのなくなった子供達は集合施設というアパートのようなものに入れられる。

この施設へ入れられたものは、一室を与えられるのみであとは全て自分で生活をしなければならない。

おそらく犯罪を犯し独房に入った方がよほど生活の保証が取れるようでわざわざ犯罪を犯すものも少なくないのだ。

子供たちをここまで追い込むだけあり、生活の出来なくなった大人はいつの間にか姿を消す。

もちろん15歳でそれらに耐え切れなくなったものもいつの間にか姿を消している。

これはもう『選別』というのではないのかそんな疑問を持つものも少なくなかった。







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