第九章「嗚呼、十二月八日朝」
新年あけましておめでとうございます。
作者の霜月龍牙でございます。
カナタの幻想は現在第十章まで書きあがりましたが、作者自身が部活のコンクール等があるのために、なかなか投稿できないのでストックにしてます。
更新速度は相も変わらずメチャクチャ遅いですが、一生懸命書きますので本年もよろしくお願いします。
1941年12月7日午前6時(現地時間) オアフ島レーダーサイト
「おい、ジョン!レーダーに多数の機影が映っているぞ!」
レーダーの操作員がスクリーンに映る多数の輝点を見て叫ぶ。
「ふぁ〜あ、なんだマイケルは聞いてなかったのか。
それは味方のB−17で、ここの戦力を増やすためにステイツから転属した部隊さ。
なんでも夜間飛行の訓練を兼ねて、こんな朝早くに着くようにしたんだとよ。」
ジョンと呼ばれた男は眠そうに目を擦りながら言う。
「なんだ、てっきりジャップの奇襲かと思っちまったぜ。焦って損した。」
マイケルは安心したように伸びをして、イスから降りてストレッチを始める。
「おい、噂をすればB−17がそろそろ真上につく頃だぜ。」
二人は耳を澄ませると、かすかに爆音が聞こえてくる。
次第に爆音は大きくなり、やがてだんだん小さくなる。
「海軍や航空隊の連中は大変だな。開戦してもしなくても毎日訓練だとよ。」
マイケルが呆れたように言う。
「まったくだ。画面とにらめっこしてるだけでいい俺らは勝ち組だな。」
そして二人は爆笑した。
何のことはない。
それはいつもの光景であり、日本軍の攻撃がない限りこれからも続くやりとりであった。
ハワイ列島の島であるオアフ島は、アメリカが持つ太平洋の基地の中でも本土の西海岸に次ぐ規模の基地である。
そこには、アメリカ海軍太平洋艦隊の司令部があり、飛行場や艦艇用の燃料タンク、ドックなどをはじめとする多彩な設備がある。
また、同島の他の場所には戦艦の主砲と同じである16インチ砲などを備えた陸上要塞があり、直接上陸して占領するのは困難と見られている。
その真珠湾にはダニエルズ・プランやスタークス・プランで建造された多数の艦艇が並んでいた。
太平洋艦隊長官であるハズバンド・E・キンメル大将は、その真珠湾から程近い太平洋艦隊司令部の建物の窓から外を眺めていた。
外や湾内の艦艇では防空訓練が行われており、機銃や高角砲についた兵たちが忙しそうに移動している。
キンメルは数日前に『12月8日早朝に抜き打ちで防空訓練をせよ』との大統領命令を受け取った。
彼はそれを怪訝に思いながらも、言われたとおりに実行していた。
キンメルは手元の書類を見ていると、ふと窓の外から爆音が聞こえてくるような気がした。
「おい、どうやら航空機が飛んでいるようだが、今日の訓練はまだじゃなかったのか?」
キンメルは参謀長であるスミスの方を向いて聞く。
「あれはジェームズ・H・ハンセン中佐の部隊で、夜間航法訓練も兼ねて移動してきたらしいです。」
「ほう、あれが噂のハンセン中佐か‥‥」
キンメルはそう呟くと、訓練結果のレポートが来るまで机に向かって仕事をすることにした。
真珠湾の上空5千メートルでは、50機ほどのB−17爆撃機が編隊を組んで飛んでいた。
B−17は米陸軍が誇る四発の大型爆撃機で、愛称が『空の要塞』である。
B−17は、多数の防御砲火と高い防弾性が特徴であり、ノルデン爆撃照準器を装備しているので高高度からの投弾でも命中率が高かった。
日本でも九八式爆撃照準器として同じような機器が採用されている。
「おっ、そろそろパールハーバーか‥‥‥それにしても上空にはほとんど戦闘機が上がっていないな。
もう戦争だってのに大丈夫なのかよ‥‥」
そう呟いたのは編隊を束ねるハンセン中佐であった。
彼はシゴキが厳しく、部下の体に痣が無いものはいないということで有名である。
さらに、彼が率いた部隊は練度・士気が高いことでも有名であり、彼は陸軍航空隊きっての編隊長としての地位を築いている。
「そうは言っても、まだわが国は開戦してませんからね。多少の気の緩みはしょうがないでしょう。」
彼の独り言に返事をした男は、この機の主操縦士のロナルドである。
ロナルドは彼とペアを3年前から組んでおり、お互い気心の知れた仲である。
「はぁ?てめぇ、何を言ってるんだ?
もしかすると今ジャップがここに奇襲攻撃をかけてくるかもしれないんだぞ。」
ハンセンは少し怒ったように言う。
「大丈夫ですよ。ハワイは我が軍が常時哨戒機を飛ばしてジャップの攻撃を警戒してますから。」
ロナルドは楽観的な口調で言う。
彼は元々そのような性格なので、ハンセンはこれ以上彼と議論するのをやめた。
「だといいがな‥‥」
ハンセンはそう呟いて北の空に目を向けた。
ハンセンが見つめた遥か先には一群の機動部隊が航行していた。
その機動部隊には空母が2隻おり、その周りを数隻の駆逐艦が囲んでいた。
ちょうど今、その内の1隻である空母『サラトガ』の飛行甲板上では、艦載機がエレベーターで上げられており、整備員が忙しそうに駆け回っている。
そこから少し離れた機銃座の近くには一人の青年がいた。
「なあ、サラ。俺たちっって何でわざわざこんな所に来て訓練してるのかな?」
青年は隣にいる15、6歳くらいに見えるブロンドの髪の少女に話しかける。
「知らないわよ。というか、何であんたがここにいるのよ。」
サラと呼ばれた少女は『サラトガ』の艦魂であった。
「別にいいじゃないか。いつも一緒にいるんだし。」
そう言って青年はサラトガの頭を撫でる。
「ひゃぁっ!なっ、何するのよぉ!」
サラトガは顔を真っ赤にして青年をポカポカと殴る。
「わっ、痛いっ、やめろって!う〜ん、僕はサラトガ‥‥‥が好きなんだけどな。」
青年は残念そうに言う。
「!?わっ、わたしも‥‥あんたが好きよ。」
サラトガはなぜか顔を真っ赤にしたまま俯く。
「そう?ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて。」
そう言うと青年は再びサラトガの頭を撫でる。
サラトガは今度は気持ちよさそうに、されるがままにしている。
だが、その時間は長くは続かなかった。
《戦闘機搭乗員は全員艦橋前飛行甲板へ集合せよ!繰り返す‥‥》
「ごめん、もう行かなきゃ。」
青年はすまなそうに言う。
「別にいいわ。あのね‥‥またあんたがあたしの頭を撫でたいっていうなら、撫でてもいいわよ。
かっ、勘違いしないでよね!あんたがそれをやらないと、本当に惨めで可哀想だからしょーがなくやってあげてるだけなんだからね!」
サラトガは顔を真っ赤にしながらプイっと横を向く。
「ははは、分かったよ。後でまた撫でさせてもらうよ。」
青年はそう言ってサラトガの頭をわしゃわしゃとなでた後、ラッタルを登っていく。
残されたサラトガは彼が見えなくなると、だらしなく頬を緩ませる。
「キャ〜、わたし『好き』っていわれちゃったぁ☆
って別にわたしはアイツのことを好きじゃないんだからね!」
サラトガは自分で言って自分に突っ込むが、やはりニヤけている。
「なにニヤけてるのサラ?気持ち悪いわよ。」
サラトガはその声に後ろを振り向くと、そこには姉であるレキシントンが立っていた。
「う、うるさいわね!なんでもないわよ!」
「あらら〜、サラは愛しのアル君に『好き』とか言われちゃったから喜んでるのかな〜?」
レキシントンはニヤニヤしながらサラトガをいじる。
ちなみに、アル君とは先ほどの青年で、名前をアルフレッド・J・ウェーバーといい、階級は中尉である。
彼は戦闘機パイロットであり、一個中隊を率いる中隊長でもある。
「!?バカ姉!どこから聞いてたのよ!」
レキシントンが言ったことがほとんど当たっていたため、サラトガは顔を真っ赤にして怒る。
「ん〜っと、『なあ、サラ。俺たちっって何でわざわざこんな所に来て訓練してるのかな?』ってとこからかな。」
「最初からじゃないのー!」
サラトガはレキシントンをポカポカ殴る。
「え〜、だってわたしの妹があんな可愛い仕草をするなんて、面白くてずっと見てるに決まってるじゃない。」
「見るなー!バカ姉ぇー!」
サラトガはさらに殴り続ける。
「ちょっ、痛っ、やめてってば。もう、ちょっとからかっただけじゃないの〜。」
レキシントンがそういうと、サラトガはようやく手を下ろした。
「まったく。あ、言い忘れたけどあんた物凄い勘違いしてるわよ。」
「え?」
「アル君が言ったのは『あなたの頭を撫でることが好き』っていう事で、『あなたのことが好き』という事ではないのよ。」
レキシントンにそう言われてサラトガは先ほどの会話を思い出す。
《「なあ、サラ。俺たちっって何でわざわざこんな所に来て訓練してるのかな?」
「知らないわよ。というか、何であんたがここにいるのよ。」
「別にいいじゃないか。いつも一緒にいるんだし。」
そう言ってアルはサラトガの頭を撫でる。
「ひゃぁっ!なっ、何するのよぉ!」
サラトガは顔を真っ赤にしてアルをポカポカと殴る。
「痛っ、やめろって。う〜ん‥‥僕はサラトガ《の頭を撫でるの》が好きなんだけどな。」
アルは残念そうに言う。
「!?わっ、わたしも‥‥あんたが好きよ。」
サラトガはなぜか顔を真っ赤にしたまま俯く。
「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。」
そう言うとアルは再びサラトガの頭を撫でる‥‥‥》
サラトガはよくよく考えてみると、確かにレキシントンの言っていることが正しいと思える。
「えっ、それじゃあわたしは勝手に自爆しただけってこと?」
「まあ、確かにそうね。でも、あなたが好きって言ったのは髪を撫でられることだとアル君は勘違いしてるし‥‥‥」
レキシントンはそう言うが、サラトガはもう彼女の話を聞いてはいなかった。
「よっ、よよよよ、よくも乙女の恋心を踏みにじってくれたわね‥‥覚悟しなさいっ!バカ犬ー!」
サラトガがそう言うのと同時にグラマンがカタパルトから打ち出される。
グラマンは見事離艦に成功し、空高く昇っていく。
「あんたはル○ズか。」というレキシントンのツッコミを乗せて‥‥‥
三笠「せ〜の」
作者+艦魂一同『新年あけましておめでとうございます!』
霜月「いや〜、この作品を書き始めてから早くも二ヶ月と少し。飽きっぽい僕としてはよくここまで書けたな〜と思いますね。」
宝鶴「まあ、作者にしてはよくやったとは思うけど。最初の二日置きの更新が今では月三回なのはどうかと思うわ。」
三笠「わたしの外伝まだ〜?」
霜月「現在検討中です。なるべく前向きに善処したいと思っております。」
三笠「書く気ないの?」
霜月「まあ、はっきり言えば‥‥あります!やりましょう!」←三笠の無言の圧力に屈した。
三笠「よろしい。で、他の作品の艦魂がゲストで来てたりするの?」
宝鶴「そんなの超チキンでリトルハートな作者には無理じゃない。どうせメッセージに書く勇気がなかったんでしょ?」
霜月「うぐっ、言い返せないのが悔しい。」
三笠「というわけで、もし『このあとがきに艦魂を出したい!』という奇特な方がいましたら、作者に連絡をください。先着順であとがきに書かせていただきますので。」
霜月「ああ〜っ、なんてことを!僕の文章力じゃ他の作者の艦魂を書ける訳ないってば!」
宝鶴「うるさいっ!あんたそれでも文系なの?」
霜月「文系と文章力は関係ないんじゃ‥‥‥」
宝鶴「いいのよ別に。あんたはさっさと書く!これ決定事項よ!」
幻龍「ねえ、正月スペシャルなんだからわたしたち脇役も出してよ。」
長門「まあまあ、そうカリカリしない。ほら、翔鶴たちが彼方君を取り合ってるわよ。」
幻龍「なにっ?わたしを差し置いて何いいことしてるのよー!」
幻龍は退場した。
三笠「いや〜、長門っち久しぶり〜」
長門「お久しぶりです、三笠長官。」
三笠「っと、積もる話は後にして、もうすぐ時間が迫ってるわ。」
宝鶴「作者はカウントダウンと同時に投稿しようとしてるからね。」
長門「あと、このあとがきに自分の作品の艦魂載せて欲しいという作者さんがいらっしゃいましたら、作者に連絡してください。ホテルに缶詰にしてでも書かせますので。」
三笠「長門っちさりげなくわたしの台詞取ってるし‥‥」
霜月「それではっ!」
一同『本年もよろしくお願いします!』