第八章「トラック到着、アメリカの陰謀」
試験後久々の投稿です。
本編が少なめなのであとがきの文量を少々増やしました。
更新のほうは一月いっぱいまで部活が忙しいので、しばらくやらないと思います。
本当にすみません。
《登場人物紹介》
「久瀬 康弘」
所属
瑞鶴空戦闘機隊隊長
階級
海軍少佐
年齢
26歳(1941年12月1日現在)
誕生日
8月12日
瑞鶴航空隊の戦闘機隊隊長。
軽そうに見えるが、実は現実主義者であり、時たま冷酷な一面も見せる。
防衛大学では主席卒業で、緋村とは同期。
彼との関係は本人曰く『腐れ縁』。
以前、ドイツへ軍事関係で留学していたことがある。
『ハル・ノート』
それは昭和16年11月26日に、コーデル・ハル米国務長官から渡された文書である。
以下にその内容の一部を記す。
・真珠湾燃料タンク爆破事件を帝國の工作と認め、賠償金を払う
・帝國の中国大陸からの即時撤兵
・帝國の遼東半島などの中国大陸の権益の完全放棄
・米国の支援する南京国民政府(汪兆銘政権)以外の中国に存在する政府を認めない
・米国による帝國の資産凍結を解除、帝國による米国資産の凍結の解除
・円ドル為替レート安定に関する協定締結と通貨基金の設立
これを見れば分かるとおり、『ハル・ノート』は米国からの最後通牒であった。
当然、これらの要求を帝國が呑むはずも無く、これを契機に反米運動が激化。
帝國は貴族院と衆議院で対米開戦を問うたところ、両院とも満場一致で開戦を決議した。
そのため、日米の対立は決定的になり、後に日米開戦の一大要因といわれるものであった。
そして、日本時間の12月8日午前4時。
帝國は米国に戦線を布告したのであった‥‥‥
トラック環礁はマリアナ諸島の南に位置し、『東洋のジブラルタル』と言われるほどの要衝で、帝國軍の主要な根拠地の一つである。
現在トラックの泊地には、第二艦隊の先発隊とトラック守備艦隊の他に、数十隻の輸送艦やタンカーが停泊していた。
一方、地上に目を移してみると、滑走路や燃料タンクなどの拡張工事が急ピッチで進められており、開戦が間近に迫っていることを暗示させている。
そして、この日ようやく第二艦隊の後発隊が到着して、トラックの兵力はさらに増える事となった。
現在、第二艦隊の旗艦である『長門』の艦上では、艦魂の着任式が行われている。
「気をつけっ!第二艦隊司令に敬礼っ!!」
ビシッ!!
後発隊の全艦魂は一斉に長門に向かって敬礼する。
「ご苦労様、楽にしていいわ。遠路はるばるお疲れ様。
早速だけど、いいニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?」
「じゃあ、悪いほうから。」
後発隊の旗艦である慧龍が即答した。
「そう。じゃあこれを見て頂戴。説明はそれからよ。」
長門はそう言って懐から紙を取り出して慧龍に渡した。
慧龍はそれを見て顔から血の気が引くのを感じた。
「こっ、これって‥‥宣戦布告と変わらないじゃないの!」
慧龍は思わず大声を上げてしまった。
周りの艦魂が思わず彼女を見る。
いつも冷静な彼女が動揺しているのを見て、周りの艦魂もその紙に書かれていることの重大性に気づいた。
彼女‥‥いや、帝國の国民にとって『ハル・ノート』はそれほど衝撃的で恥知らずな文書であるのである。
「そうよ。残念ながら米国はわが国との開戦を望んでいるわ。」
心なしか長門の表情も暗い。
慧龍は他の艦魂にもその紙を見せたところ、彼女たちは例外なく驚愕の表情を顔に浮かべた。
「‥‥‥結局、政府の努力は無駄になったわね。」
珍しく瑞鶴が口を挟む。
「ええ、でもしょうがないわ。戦争を望む相手にいくら交渉を重ねても無駄だもの‥‥‥」
長門は悲しそうに呟いた。
「そう‥‥‥ところで、いいニュースって何なの?」
慧龍は先ほどまでの重苦しい空気を振り払うように明るく言う。
「呉にいる第一艦隊がトラックに派遣されるらしいわ。」
長門もそれに合わせてわざと明るい声で言うと、後発隊の巡洋艦や駆逐艦たちが歓声を挙げた。
彼女らは普段違う場所にいて滅多に会うことができない姉妹に会えるので、そうなるのも無理はない。
こころなしか戦艦や空母の艦魂も嬉しそうだ。
ちなみに、第一艦隊とは、『越後』級戦艦や『大鳳』級装甲空母などの最新鋭艦が所属する帝國の主力艦隊である。
『越後』級戦艦は50口径の16インチ砲を12門搭載し、31ノットの速力を持っている艦であり、現時点において帝國海軍最強の戦艦である。
これらの艦については前章で述べているので説明は省略する。
「そういえば第三艦隊と第四艦隊はどうなるの?」
第三艦隊とは日本海の守備を担当しており、第一、二艦隊と比べれば小規模な機動部隊ではあるが、基幹戦力は戦艦4隻、正規空母2隻、軽空母4隻という充実したものとなっている。
第四艦隊は、旧式艦が集められて主に乗員の訓練などを行っている部隊で、
現役は最古参の『金剛』級戦艦や日本初の空母である『鳳翔』が所属している。
「第三艦隊からは第三直衛戦隊と九航戦、一〇航戦以外が、第四艦隊は『金剛』級と四水戦以外がこっちに来るわ。」
「よかった〜。わたし、金剛さんって苦手なのよね〜。」
心底安心したように翔龍が言う。
彼女が言う金剛とは、連合艦隊の現役戦艦の中では最古参である『金剛』の艦魂である。
金剛は外見こそイギリス人であるが、中身は生粋の日本人であり、もちろん日本語も普通に話せる。
性格はよく言えば真面目、悪く言えば融通が利かないので、翔龍はその性格からか金剛には度々睨まれているのだ。
「それは姉さんが演習中に自室で変なコスプレしてるからでしょ。」
翔龍に慧龍が冷静に突っ込む。
以前、演習の最中に、翔龍が自室でプ○キ○アのコスプレをしている時に、たまたま彼女に用事があった金剛が、彼女の部屋に入ってきてしまったのだ。
それを見た金剛は当然のように激怒。
騒ぎを聞きつけた他の艦魂が来るまで、一時間にも渡って翔龍に殴る蹴るなどの暴行をし、それ以降も彼女は何かと翔龍の言動をチェックすようになったのだ。
ちなみに、そのときの翔龍のやられ具合を見た仙龍は、それ以降金剛を師として仰ぐようになってしまったのだが、それは別の話。
「え〜、別に自分の部屋で何してもいいじゃない。なんなら、長門さんもねこみ‥‥」
ドカッ!
「はいはい、姉さんはあっちに行こうな〜」
ズルズルズル〜
「え〜ん、いたいよ〜、ひきずらないでよ〜」
翔龍は仙龍に引きずられて、涙を流しながらどこかへ行ってしまった。
「あらら、あの子達はいつもあんな感じね。」
長門はそんな二人を微笑みながら見る。
「まったく、あの二人は‥‥‥」
幻龍は呆れたように言う。
「あら、元気なのはいいことよ。」
「でも、その元気をほかの事に使ったらもっといいのに‥‥‥」
そう言って幻龍はため息をつく。
「ふふふ‥‥それより慧龍、後でわたしの部屋に来てちょうだい。」
長門は急に表情を引き締め、真剣な表情で言った。
「分かりました。」
慧龍も話の重大さを悟ったのか顔を引き締める。
「じゃあ、わたしは部屋に戻って仕事をするわ。」
「長官に敬礼ッ!」
「いいわよ、敬礼しなくても。」
慧龍が敬礼しようとするのを止めて長門は自室に戻った。
それを合図に、他の艦魂たちも次第に自艦に戻っていく。
慧龍は一瞬、『長門』の艦橋を見た後、自艦に戻った。
それから数十分後、長門は誰かが自室のドアをノックする音を聞いた。
「いいわよ。入ってちょうだい。」
「失礼します。」
入ってきたのは慧龍だった。
彼女は丁度仕事がひと段落するのを見計らったのだろう。
長門もそろそろ休憩をしようと思っていたところだ。
「いいのよ、堅苦しくしないで。これから嫌でも重い話をしなきゃいけないから。
それよりそこの椅子に座ってくれない?」
敬礼しようとする慧龍を止めて部屋の真ん中にあるソファに座らせる。
「用件はだいぶ前のことで、『国東』から連絡があった事なんだけどね‥‥‥
本当は秘密なんだけど、開戦になりそうだから公開してもいい、ってことになったわ。」
『国東』とは帝國海軍の特務艦であり揚陸艦でもあるが、その存在は最高機密に包まれており、その艦の詳細は長門でさえも知らないほどだ。
「それはいったい何なのですか?」
慧龍が興味深そうに聞く。
「米大統領のアンダーソン‥‥彼はイレギュラーよ。」
長門は先ほどとは声色を変えて慧龍に言った。
所変わって、ここはワシントンDCにあるホワイトハウスである。
現在、ここの主であるチャック・E・アンダーソン大統領の執務室のドアの前に海軍の制服を着た男が立っている。
その男は、第一空母戦隊の司令長官であるウィリアム・F・ハルゼー中将だ。
彼は内外の海軍関係者から猛将として知られる有名人である。
その彼が有名なのは日ごろの大胆不敵な発言もそうであるが、数々の伝説のお陰(?)でもある。
その中の一例を紹介しよう。
1921年の春にロングビーチで行われた演習があった。
当時、彼は空母ではなく駆逐艦6隻を率いている水雷戦隊の指揮官であった。
その演習では、相手役の戦艦4隻に対して味方は彼の率いる6隻の駆逐艦のみという非常に不利な状況であった。
にもかかわらず彼は配下の駆逐艦たちを縦横無尽に操って戦艦を翻弄、発射した模擬魚雷36本の内22本を命中させるという『大戦果』を挙げた。
しかし、発射距離が近すぎたために、命中した内の数本が魚雷内に大量に残っていた燃料の爆発を引き起こし、『実際に』戦艦を中破させてしまったのだ。
その後、彼が上層部から大目玉を食らったのはいうまでもない。
他にも、彼には数々の伝説があるのだが、ここでは省略させていただく。
さて、そのハルゼーは大統領直々の呼び出しでかなり緊張していた。
(俺は何の用事で大統領に呼ばれたのだろうか‥‥‥
キンメルの悪口とか、演習中の独断専行とか‥‥‥思い当たる節がありすぎるな。)
彼はしばらくそうやっていたが、やがて覚悟を決めて執務室のドアをノックする。
「ああ、入りたまえ。」
ドアの向こう側から大統領の声が聞こえる。
「失礼します。」
ハルゼーが執務室に入ると、大統領は書類にサインをしている所だった。
「おお、ハルゼー君か。早速だが君に頼みたいことがあってな。どうぞそこに座りたまえ。」
「はっ」
ハルゼーがソファに座ると、大統領はおもむろに席を立って窓の外を見る。
窓の外には曇り空が広がっており、下を見るともう葉が散ってしまった桜並木があった。
「ハルゼー君、我々の敵は何だね?」
「へ?」
ハルゼーは予想とは違う言葉についそのように返事してしまった。
「ん?何か問題があるかね?」
大統領が不思議そうに彼に尋ねる。
「い、いえ。私はてっきりなにか注意されるのではないかと‥‥‥」
「はっはっはっ、大丈夫さ。我が合衆国はそんな細かいことで君のような有能な人材を失わせないよ。それより、私の質問に答えてくれないかね?」
大統領は窓の外を見ながら言った。
「はっ、我々の敵は自由と平和を謳歌する合衆国民の‥‥‥」
「そんな教科書どおりの答えじゃなくていい。君の思っていることを言ってくれたまえ。」
大統領はハルゼーの言葉を遮る。
ハルゼーは腹を括って本音を話すことにした。
「はっ、僭越ながら我々の敵はナチスのチョビ髭野郎ではなく、ジャップのクソ猿だと思います。」
「ほう、それはどういった理由かね?」
ハルゼーの熱弁に大統領は彼のほうを振り向いて興味深そうに見る。
「はっ、クソ猿‥‥もとい、ジャップは我々が自国防衛の為にワシントン条約の破棄を申したときには真っ向から批判していましたが、実は条約中に影でコソコソ新鋭艦を造り、あたかも条約後に建造したと言っておるのです。
さらに、我々が中国の‥‥‥」
「もういい、分かった。噂どおり君の日本嫌いは相当なものだな。
よし、今から簡単な質問をする。ああ、そんなに堅くしなくていい。
あくまで君が思っていることを言いたまえ。」
ハルゼーが熱く語ろうとするのを手で静止し、大統領はさらに彼に質問をする。
「はっ。」
「君の嫌いなものを三つ上げてくれ。」
ハルゼーはまたも戸惑った。
大統領の真意がいまいち分からないが、とりあえず彼は思ったままを答えることにした。
「そうですね‥‥まずはジャップ、次に融通が利かない上官、そして役立たずの味方です。」
「よろしい、合格だ。やはり君は私の見込んだとおりだったよ。」
大統領は喜色満面に言うと、金庫の鍵を開けて中から書類を取り出した。
「さあ、これを読みたまえ。言っておくが、これは超S級の機密書類だ。くれぐれも口外はしないでくれよ。」
ハルゼーはさっそく書類を受け取って中を読み始める。
「大統領っ、これは!」
数分後、ハルゼーは驚愕の表情で大統領を見ていた。
「そうだ、これを成功させた暁には君は英雄として凱旋することになるだろう。」
大統領はニヤリとしながらハルゼーに言った。
ハルゼーはただ呆然としながら手元の書類を見続けていた。
その書類の表紙には『作戦名:オーバー・ザ・レインボー』と書かれていた‥‥‥
霜月「ふぃ〜、ようやく第八章をupできたぁ!」
三笠「いつも通り更新遅いね。」
宝鶴「しかも今回分量少ないし‥‥」
霜月「うっ‥‥なんですかそのジト目は。」
三笠「いや〜特に何も。ねぇ?」
宝鶴「ねぇ?」
霜月「さ、さて、次からはいよいよ日米開戦です。次はアメリカ側の話を書こうと思っていたり、いなかったり‥‥」
宝鶴「あっ、話そらした‥‥というかどっちなのよ!」
霜月「あくまでも予定なので‥‥」
瑞鶴「‥‥予定は未定。」
三笠「おっ、瑞鶴ちゃんうまい事言うね〜」
翔龍「いや〜作者も大変だね。更新速度遅い上にストック存在しないってヤバイんじゃない?」
霜月「まあ、執筆する気分のときは三千文字は軽く打てるんだけど、気分が乗らないときはゼロ文字という極端な書き方ですから。というか、いつの間にかここにいるキャラが増えてない?」
慧龍「なんか今日はクリスマスだっていうから、三笠さんがみんなを呼んだらしいです。」
三笠「何か文句ある?」
霜月「いえ、別に‥‥」
三笠「あ、忘れてた。作者から皆にクリスマスプレゼントとして何かひとつだけ要望をかなえてくれるって!」
霜月「えっ!?そんなの聞いてな‥‥」
艦魂一同『やった〜!』
三笠「じゃあ、私メインの外伝を書いて!」
霜月「疲れるんで拒否。」
三笠「あぁ?あんたロクに更新してないくせにそんなこと言う権利あるの?」
霜月「いえ、ですが‥‥」
三笠「はい、決定!他に何かあるひとー!」
霜月「人の話を聞いちゃいないな‥‥」
幻龍「じゃあ、わたしは本編での登場を増やして!」
霜月「そういえば第四章しかマトモな台詞がなかったっけ‥‥じゃあ、次の次くらいで出番を作るよう努力します。」
幻龍「やたー!」
翔鶴「じゃあ、わたしはその‥‥彼方さんと‥‥キスなんてしてみたかったり‥‥」
霜月「う〜ん、前向きに検討するとだけ言います。じゃあ、次」
宝鶴「何だかんだ言ってあんたも乗り気じゃない。とりあえずわたしは役に立つ下僕が欲しいわ。」
霜月「余裕があったら書きます。次。」
瑞鶴「‥‥お腹いっぱい料理が食べたい。」
霜月「その内書くと思います。次。」
・・・一時間後・・・
霜月「はーっ、はーっ、ようやく終わった‥‥」
翔龍「作者乙。それにしても、コ○ケ並みの行列だったね。あっ、そうだ。冬○ミいかなきゃ!」
仙龍「姉さん、念のため言うけどコ○ケに行ったらいかんで〜。」
翔龍「もっ、もちろん、部下が代わりに買ってくるから問題なしだよ。」
仙龍「じゃあ、そのカタログはなに?」
翔龍「ギクッ‥‥いや、その、これは‥‥」
仙龍「どうして嘘をつくのかな、かな?」
翔龍「ひぃ!オ○シロモードだ‥‥」
仙龍は翔龍に一歩ずつ迫っていく。
翔龍は次第に後退してゆき、作者のすぐ隣まで来る。
翔龍「この鉈女め‥‥作者ガード!」
霜月「えっ!?ちょっ、おまっ!」
仙龍「わたしの右手が真っ赤に燃えるぅ、お前を倒せと輝き叫ぶぅ‥‥必殺、シャ○ニン○フィ○ガー!」
バチコーン!
霜月「時報はもう嫌だぁー!」
キュピーン
作者は星になった。
翔龍「くっ、馬鹿な‥‥このわたしが負けるなんて。」
仙龍「わたしの戦闘力数は、53万やで。負けて当然や。」
翔龍「ふざけるなよ、猿野郎!」
幻龍「はいはい、フ○ーザとかひ○ぐらしはもういいから。で、結局次回は何やるんだっけ?」
宝鶴「次はアメリカの艦魂について書くらしいわ。わたしは彼女たちに会ったことはないからよく分からないけど‥‥」
幻龍「ほんとに書くのかなぁ‥‥それでは、ご意見・感想待ってます!」