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衝動

作者: 天地 万世

 必要なカロリーや栄養素は、一日の食事で満たしている。


 なのに、夜中に腹が減る。


 そんな理不尽に懊悩する一人である、貴方にお贈りしよう。


 冷蔵庫を開けたその姿勢のまま、男は固まっていた。


 開けてから、もう数分は経っているだろうか。

男がこんな事をしている理由を私は、いや、そんな事は誰もが知っている。



―――小腹が空いてしまったのだ―――



 残念なことに、そのまますぐに食べられそうな物は何も無い。

あるのは肉や魚に野菜、調味料といった材料ばかりだ。


 つまり何らかの料理をしなければ、この小腹が満たされて落ち着く事は無い。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 食材の組み合わせ、味付け、残存する食材の量、賞味期限、栄養価、等々。

考えるべき事案は多岐に及ぶ。時折部屋に戻ってはレシピを検索する。


 なんということだろう。作れる料理は、確かにある。思ったよりもある。

だが、それが今食べたい物かと問われれば、男の答えは否である。

望んだ何を作るにしても必ず、足りない物が一つ二つと出てくるのだ。



 冷蔵庫とレシピサイトの各々、そして己との長い問答を経た答えとして、

男は買い物に行くことを決意した。



 無かったら無かったで、それは、無いという事なのだ。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 近くのコンビニに辿り着く。

もっと近くにスーパーもあったが、この時間では閉まっている。


 それにレモン汁があれば事足りるのだ。どちらで買っても何十円も違うまい。


 見つけたそれを手に取って、足音を立てつつレジの前へと進む。

即座に商品の検品をしていた店員さんが、こちらを見てレジに着く。



「○○円になります。」


 その言葉に躊躇する。金が無い訳ではない。


 これから男が言う言葉は、今までの時間と労力の全てを台無しにするだろう。


 だが降って湧いた衝動は、そんなものはお構いなしに男の口を開かせた。



「あと、からあげクンとポテト下さい。」


 ただ、生きているというだけで腹が減る。


 まこと己とは御し難いものである。

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