表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/111

2章2節 オリンポス惑星の住人(6)

「それは大変だ。君たちの仲間は、公邸警護の警官に逮捕されるかもしれない」

デウスの言葉にミウが反応する。

「えっ、すぐに助けに行かなくちゃ」


「待ちなさい、モニターで外の様子を見てみよう」

デウスの声に反応して、部屋の壁に公邸の外の様子が映し出された、


「警官たちが門の方から公邸の玄関に戻って来ている。ということは、君たちの仲間は門の外に出てしまったようだな。オリンポスの国民から見れば、君たちは得体の知れない宇宙人だ。大騒ぎにならないうちに、ここに連れ戻そう」


そう言って、デウスが合図をすると、美しい少女が部屋に入ってきた。

「アルテミス、このお客さんたちの仲間を急いでここに連れて来ておくれ」

「はい、お父様。あ、皆さん、ようこそオリンポス国へ。じゃあ、ちょっと行ってきます」


ケンが、アルテミスの後姿をうっとり見つめていると、ミウがケンの背中を軽くたたいた。

「ケン、そんなことしてると、サーヤに嫌われるよ」


「えっ、何言ってるんだよ、モニターを見てるだけなのに」

ケンがドギマギしてモニターを指差すと、公邸の門の外を歩いているヒロたちが映っている。


「あ、もうアルテミスがヒロたちに近づいている。あれ、何なの、ロンがうれしそうな顔してる」

マリが口をとがらせて、ちょっと怒った。


「あなたたち、一般の人たちに見つかると大騒ぎになるから、私と一緒に公邸の中に入りましょう」

アルテミスが近づきながらヒロに声をかけると、ヒロより先にロンが答える。

「そうだね、でも、どうして君は僕たちのことを知っているの?」


「私は、デウスの娘のアルテミスです。皆さん、ようこそオリンポス国へ」

アルテミスが軽くロンをハグした後、ヒロをしっかりハグした。

その様子を見て、サスケが二人の間に割り込んだが、手遅れだった。


「初めまして、アルテミス。僕はヒロ、これは愛犬のサスケです。彼は仲間のロン、そして、ペットのコタロウ、ハンゾウ、ヒショウです」

ヒロはアルテミスを見つめたまま、夢見心地でみんなを紹介した。


サスケが心配してヒロの足を踏んでみたが、ヒロはアルテミスのとりこになってしまったようだ。


「あなたがヒロなのね。昨日、父からみなさんのことを聞いたのよ。早く公邸の中に入って、お話しを聞かせてね」

そう言いながら、アルテミスが公邸の玄関に向かうと、ヒロたちは一列になって後に続いた。


「アルテミスが君たちの仲間をハグしたのは、歓迎の気持ちを表す挨拶だよ」

公邸内のモニターを見て、デウスがさりげなく説明すると、ミウとマリが同時に質問した。

「なぜ、アルテミスはロンを軽く、ヒロをしっかりハグしたんですか?」


「それは・・・アルテミスに聞いてみないと・・・」

デウスはあいまいな返事をしたが、アルテミスがヒロに興味を持っていると気づいていた。


「お父様、みなさんを連れて来ました。こちらがヒロ、そしてロンよ」

アルテミスが、透き通った声で二人をデウスに紹介した。


「アルテミス、ありがとう。ヒロ、ロン、そしてペットたち、ようこそオリンポス国へ。君たちのことは、シュウジから聞いていたよ。」

デウスは、公邸の中に入って来た一人一人に笑顔を向け、最後にヒロを見た。


「シュウジって、ヒロの父さんがここに来たんですか?」

ケンが驚いてたずねると、デウスは笑って答える。

「いや、厳密に言えば、ここに来たのはシュウジのクローンだ。地球の科学水準は、我々と同じレベルに達しているようだな」


「地球では、動物のクローンは作れますが、倫理上の制約があって人間のクローンは作られていません。でも、ヤミやアンコクのたましいと戦うために、父は医学者の母と協力して自身のクローンを作ったのでしょう」

サーヤがそう言うと、デウスはうなづいたが、ヒロは夢見心地でアルテミスを見ている。


「ヒロ、サーヤ、あなたたちのお父様はすごい科学者なのね」

アルテミスが、やさしくヒロに話しかける。


「そうなのかな。オリンポス国の文明は地球よりずっと進んでいて、ぼくたちの父さんよりすごい科学者がいるんじゃないの?」

ヒロが遠慮がちに言うと、アルテミスがほほ笑んで答えた。

「じゃあ、これからあなたを最先端の研究所に案内するから、私についてきてね」


ヒロが、アルテミスに続いて部屋を出ると、二人乗りのカプセル型自動車が待っていた。

「この自動車も自動運転なの?」

ヒロがたずねると、アルテミスは驚いた表情で聞き返す。


「地球では自動運転じゃないの?自動運転じゃないと、ぶつかったり道路の外に飛び出したりするでしょう?」

ヒロがうなづくと、アルテミスはヒロの手を握って自動車の中に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ