2章1節 アトランティスの最期(10)
ほとんどの人たちが不安な表情をしているので、ディプレ王は話を続ける。
「そこで、みんなでこれから準備を始めよう。南の大陸に移住する準備だ。南の大陸の山脈は、ここから見えている。その山脈の南側には広大な砂漠があるから、山脈の北側には危険な獣たちが近づけない」
「北の大陸には、千年以上前に移住したガディル王の一族が住んでいます。我々も北の大陸に移住してはいけませんか?」
王のお供の一人が、みんなの疑問を代表して口にした。
「なるほど、それもよいだろう。しかし、北の大陸では、氷河が溶けて大洪水が起きたり、狼などの危険な獣たちが襲ってきたりして、豊かな街造りができていないようだ。一方、南の大陸なら、洪水や獣たちの危険が小さいから、安全な街を造れるはずだ」
みんなはディプレ王の言葉に納得したようだ。
「やっぱり、アトランティスからアフリカ大陸に移住したんだ。そうだよな、ヒロ」
ケンがヒロに同意を求める。
「うん、モロッコに行ったのか、エジプトに行ったのかはわからないけどね。それより、ロンのことが心配だよ」
ヒロがそっと神殿の前の人々から離れると、ケンも同じように離れ、二人はロンのいる大型船に向かった。
大型船の船室の中に、ミウ、マリ、サーヤの姿が見える。
近づくと、床に横たわったロンの頭をサーヤの両手が包んでいた。
「サーヤ、ロンの容体はどうなの?」
ヒロがたずねると、サーヤはゆっくり首を横に振った。
「意識が回復して、ケガも治るはずだけど、時間がかかりそうね」
*** おーい、ヒロ、影宇宙の中にケガ人用のベッドがあるよ・・・
突然、タリュウが天から顔を出した。
「あっ、タリュウ、ちょうど良かった」
ヒロがほっとした表情で天をあおぐと、タリュウの口の中にロンとサーヤが吸い込まれた。
「俺たちも影宇宙に戻りたいな」
ケンの声に応えて、ジリュウ、サブリュウ、シリュウが天から顔を出した。
三匹の竜の口の中に、ヒロ、ケン、ミウ、マリ、サスケ、カゲマル、コタロウ、ヒショウ、ハンゾウが吸い込まれた。
ー「2章 2節 オリンポス惑星の住人」に続く ー