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2章1節 アトランティスの最期(7)

「そうなんですか。でも、王国が繁栄しているから、あの立派な神殿を建設できたんじゃないですか?」

不思議に思ったケンが問いかけると、中年の男は無念の表情を浮かべて答えた。


「私の名前はディプレ、この国の王だが、恐らく最後の王になるだろう。あの神殿の中に、この国の歴史が描かれているから、皆に見せてあげよう」


皆が丘の頂上に登ると、目の前に堅固な石造りの神殿が現れた。近づくと、数百年、いや数千年前に建設されたように見える。


「言い伝えによれば、この神殿は五千年以上前のアンペル王の時代に、初代の王であるアトラス神に感謝して建設されたものだ」


ディプレ王が説明すると、すぐにサーヤが質問する。

「そのアンペル王の時代に、どうしてこんな立派な神殿を建設できたんですか?」


「言い伝えだけでは詳しいことはわからないが、神殿の中に入れば貴重な物を見ることができる」

そう言って、ディプレ王が神殿の中に入って行った。


「おーっ、立派な建物や街のイメージと建設方法のような絵が描かれている」

ロンが驚いていると、マリも声をはずませる。

「こっちには飛行機、あっ、そっちには自動車みたいな絵があるよ」


「ヒコウキ、ジドウシャ、と言ったのか?君達は、ここに描かれているものが何なのかわかるのか?」

ディプレ王が驚いて、皆をじっと見つめている。


「はい、飛行機や自動車はわかります。信じてもらえないかもしれないけど、ぼくたちの国には飛行機や自動車があります」

ディプレ王の様子を見ながら、ヒロがゆっくりと話すと、お供の八人の男たちがざわついた。


「そうか。では、これが何かわかるか?」

ディプレ王が指し示した壁面に、家系図のような絵と解説文と思われる古代文字が描かれていた。


「うーん、あの文字はスフィンクスの中の古代エジプト文字に似ているね」

ヒロが小声でささやくと、ケンが大きくうなづいた。


「それはよくわからないので、説明して頂けませんか?」

ミウが機転をきかせて、ディプレ王たちに笑顔を向けた。


「一番上に書かれているのは、アトラス神の父と母、ポセイドン神とクレイト神だ」

ディプレ王の言葉にケンが思わず大きな声をあげた。


「えーっ、ポセイドンって?!」

「なぜ、そんなに驚いているのか?」

ディプレ王が、ケンの顔をじっと見つめると、ヒロが話し始めた。


「実は、ある国に行った時に、ポセイドンという神の話を聞いたことがあるんです。その国の指導者は、デウスという神から街造りや建物建設の技術を授かったそうです」


「おーっ、これは驚いた。君たちが最初に見た建物や街の絵の上に文字が書いてあるだろう。それは、デウス神に教えてもらったものだ、と書いてあるのだ」

ディプレ王が、その文字の方に近づいて、文字と絵を指し示した。


その時、地面がゆっくりと揺れて、神殿の外の人々が騒ぎ始めた。

皆が神殿の外に出ると、東の空が暗くなった。


「十年前の津波の時より、揺れ方が大きい。ひょっとしたら大津波が来るぞー」

「地中海の火山島が大爆発したんじゃないかー。十年前の時より、東の空が暗いぞー」


神殿のまわりに集まっていた人々が、不安な気持ちを口に出してディプレ王の言葉を待っている。


「みんな、子供と年寄りを丘の頂上に集めて神殿の中に避難させよう。他の者たちは全ての船を出して、東の方角に向けてゆっくりと進めよう。最初の津波が船の下を通り過ぎても油断せず、最後の津波が通り過ぎたのを確認してから港に戻るんだ」


ディプレ王がそう言うと、すぐにケンが声をあげた。

「俺たちも手伝います。子供たちをハンゾウに乗せて避難させよう、サーヤ」


「ケン、わかった。私について来て、ハンゾウ」

ケンとサーヤがアトランティスの人々の後から走り出すと、コタロウとハンゾウが後を追った。


「僕たちも手伝おうよ、マリ」

そう言って、ロンがマリの手を引いて走り出す。ヒショウはマリの上を飛んで行く。


「神殿が津波に飲み込まれたら大変なことになるよ、ヒロ」

暗くなってくる空を見上げてミウが心配すると、ヒロが千里眼の術を使って東の海を見つめる。


「津波が、大きい津波が、東の方からこっちに向かって来てるぞ。ほんとに神殿が飲み込まれるかもしれない」

ヒロの言葉を聞いて、ミウがディプレ王に駆けよって行く。


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