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9節 不思議な能力を持つ妹(8)

マリの両親を集中治療室に残して、ヒロ達は病院の庭に出た。

そこには、サスケ、カゲマル、コタロウ、そしてマリのペットのヒショウがいた。


「みんな、マリは助かったよ」

ヒロがサスケを抱き上げると、カゲマルとコタロウがジャンプし、ヒショウが空に舞い上がって、喜んだ。


「でも、マリの記憶が消えちゃったみたいだな・・・」

ケンが上を見上げてつぶやいた。


「私たちの記憶をマリに教えたら、いいんじゃないの?」

ミウがケンの肩をポンとたたく。


「そうだ!ブラフマーさんに教えてもらった術を使えば、すごいスピードでマリに記憶を伝えられるよ!」

ヒロがミウとハイタッチして喜んだ。


数日後、マリは体力が回復し、退院することになった。

その日の午後、両親に連れられて自宅に戻り、庭に出てヒショウと遊んでいた。


そこへヒロがサスケを連れてやって来た。

「マリ、退院できてよかったね。マリの消えた記憶の代わりに僕の記憶をマリに伝えるよ」


ブラフマーから修得した方法で、ヒロの脳からマリの脳へ記憶が伝えられた。

その後、ミウとケンがカゲマルとコタロウを連れて、庭に入って来た。


「マリ、今の気分はどう?」

ミウがマリの肩に手をおいてたずねると、マリは目を輝かせて答える。


「うん、すごく大人になった気分だよ」

マリは、ヒロの記憶の中に自分やミウとケンが頻繁に登場するので、皆と一緒に成長したことを実感した。


「じゃあ、わたしの記憶もマリに伝えるよ」

今度は、ミウの脳からマリの脳へ記憶が伝えられた。


ミウの記憶の中でも、自分やヒロとケンが一緒に遊んだり勉強したりしているので、マリは自分も中学生なんだという気持ちになった。


マリが静かに目を開けると、ケンがマリの頭に手をおいて声をかける。

「マリ、俺の記憶は武術と戦いでいっぱいだから、受け継げばすごく強くなれるぞ」


「いいよ、ケン・・・わたしは強くならなくてもいいから」

マリに断られてがっかりしたケンが庭の向こうを見ると、サーヤがこちらに歩いて来る。


「サーヤは5歳の時に日本を離れたから、日本の学校で習うことを教わっていないんじゃないか?」

ケンがサーヤの方を向いたまま、ヒロに話しかけた。


「そうだね、ケン。サーヤにも僕たちの記憶を伝えて、学校で一緒に勉強しよう」

ヒロはそう言って、ブラフマーから修得した術のことをサーヤに説明した。


「わあ、すごい!日本の学校で習う七年分の知識が、あっという間にわたしの頭に入ってくるなんて!」

サーヤは目を輝かせてヒロやケンを見た。


「じゃあ、俺から始めるよ」

今度は断られないように、ケンが一番初めに記憶を伝えることにした。


サーヤの脳に自分の記憶を伝えている間ずっと、ケンは緊張していた。

「ありがとう、ケン。忍者学校ではいろんな武術の修行をしたんだね。わたしも強くなれた気がする」


サーヤに感謝されて、ケンは気分が良かった。

「どういたしまして、サーヤ。わからないことがあれば、何でも俺に聞いて!」


「じゃあ、小学生の頃からケンはミウが好きだったのに、どうして言わなかったの?」

外国育ちのサーヤがストレートに聞くと、ケンはどぎまぎして上ずった声を出した。


「そんな記憶までサーヤに伝わったのか・・・いや、自分じゃよくわからないんだよ、サーヤ」


困っているケンを助けようとして、ヒロがサーヤに話しかける。

「忍者学校では武術以外のこともたくさん修行したから、僕の記憶をサーヤに伝えるよ」


ヒロは父母やサーヤと離れ離れになった後から、サーヤに再会するまでの記憶を丁寧にサーヤに伝えた。


「ヒロはいつも父さん母さんやわたしを捜していたんだね。わたしは安全なところにいて、いつも父さんが見守ってくれていたから、いつかヒロに会えると信じていたよ」


サーヤが目に涙を浮かべてヒロの肩を抱いた。


「サーヤ、今度はわたしの忍者学校の知識を伝えるよ」

ミウは、ケンのように学校の知識以外のことまで伝えてしまうことのないように、気をつけてサーヤに伝えた。


ミウの知識を伝えてもらったサーヤが、にこにこしてミウにささやく。

「ありがとう、ミウ。わたしの頭は、忍者学校の知識でいっぱいになったよ。でも、ミウはヒロのことが気になったり、心配になったりするんだね」


「えーっ、あんなに気をつけていたのに!」

ミウは、思わずヒロの方を見た後、あわててサーヤに視線を移す。


「大丈夫だよ、ミウ。ヒロは気づいていないけど、可能性ありだと思うよ」

サーヤは笑顔のまま、落ち着いていた。

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