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9節 不思議な能力を持つ妹(1)

*** サーヤの所に行く方法は簡単じゃないのよ・・・

ヒロがまだ聞いたことのない声が聞こえた。


*** あっ、母さんの声だ・・・、そうだ母さんだ・・・

タリュウ、ジリュウ、サブリュウ、シリュウが一斉に声をあげた。


「お前たちの母さんの声なのかー・・・どこにいるんだ?」

ケンが影宇宙の中で上や横を見るが、竜の母親の姿は見えない。


「サーヤとインドのばあちゃんは過去の時代にいるから、外部の人は誰も近づけないって、母さんが言ってたよ。誰も近づけない所に行く方法ってあるの?」


ヒロがずーっと疑問に思っていたことを口にすると、斜め下方から竜の母親の声が聞こえた。


*** それは、私の声のする方へ来れば教えてあげるわ・・・


影宇宙の中を下降すると、四千五百年前の時代から未来に行ける。


斜め下方に進むということは、サーヤとインドのばあちゃんがいる時代のヒマラヤの山岳地帯に向かうということだ。


タリュウを先頭に、みんなが影宇宙の中を下降していると、ラクシュミーの声が聞こえてきた。


「ボサツが私の娘達を大切に育ててくれたので、ヴァーチュは、優しくて美しい娘に育ちました。そして、ヴィーナは素晴しい歌声の持主になりました」


「あっ、 ラクシュミー・・・あなたはどこにいるんですか?どうして影宇宙の中に声が届くんですか?」


ラクシュミーの声にミウが問いかけると、答えが返って来た。


「いつの間にか私は治癒の惑星のたましいの中に入って、ヴァーチュとヴィーナを見守っていたの。成長した二人は、ボサツに教えてもらったことを詩のような物語にしたの。マハーバーラタとラーマーヤナよ。二千年後には二人とも伝説の中の女神になっているのよ」


「じゃあ、あなたはヴァーチュとヴィーナの子孫も見守っているんですか?」


タリュウに乗っているヒロが、ラクシュミーに話しかけると、彼女の声が聞こえた。


「モヘンジョ・ダロを破壊したアンコクのたましいは、あの後、何度も独裁者の国を作ったのよ。その度に戦争でたくさんの人たちがケガをしたり死んだりしたわ。私のようにケガを治せる能力が必要な時に、ヴァーチュとヴィーナの子孫の中から選んだ人に治癒能力を授けてきたのよ」


ラクシュミーの子孫に治癒能力が遺伝することはないが、その能力が必要な時代に、治癒の惑星のたましいが適切な人を選び、治癒能力を授けていたのだ。


サーヤとヒロの母エミリはラクシュミーの遠い子孫だった。


*** あれっ、急に何も見えなくなった・・・

タリュウが両目を大きく見開いて、進行方向を見つめるが、何も見えない。


「過去の時代から、どれくらい未来に進んだかわかるの?」

ミウがジリュウに聞いた。


*** えーっと、モヘンジョ・ダロが破壊された時代から四千年くらい未来に進んだよ・・・


ジリュウが考えながら答えると、すぐそばで竜の母親の声が聞こえた。


*** この時代の影宇宙と宇宙の間は行き来ができないのよ。この時代は現代より五百年くらい前だから、宇宙の中から近づくことはできないわ。影宇宙の中を通って近づこうとしても、宇宙への出口が閉ざされているの・・・


「ということは、サーヤとインドのばあちゃんはこの時代にいるのか。でも、どうすればサーヤのところに行けるの?」


ヒロは一刻も早くサーヤに会いたいのに、竜の母親は落ち着いて答える。


*** この時代の宇宙への出口を開けられるのは、ヒロとサーヤだけよ。ヒロがサーヤに呼びかけなくてはならないの・・・


「サーヤがアンコクやヤミのたましいに襲われないように、父さんが影宇宙の出口を閉じたんだね。今、サーヤは近くにいるのかな?サーヤ、僕だよ、ヒロだよー!」


はやる気持ちをおさえて、ヒロがサーヤに呼びかけた。


しかし、サーヤから何の反応もない。


「サーヤに聞こえたのかなあ?ヒロ、もっと大声を出せよ!」

サブリュウに乗ったケンが、ヒロに近づいて肩をたたく。


「私の千里眼ではサーヤの姿が見えないよ。ヒロなら見えるんじゃないの?」

ミウが上下左右を見回してから、ヒロに笑顔を向けた。


「そうだね、すごく高い山の下にある田舎の村は見えるけど、サーヤとインドのばあちゃんの姿は見えないよ」


ヒロが首を振ると、サスケの口から父さんの声が聞こえた。


「みんながサーヤを奈良に連れて帰った後なら、ここにサーヤはいないんじゃないか?」


「あっ、そうか!どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだろう」

ケンが自分の頭をコツンとたたいた。


「タリュウ、ゆっくり過去に戻ってくれよ。千里眼でサーヤの姿を見つけたら、合図をするよ」


ヒロがそう言うと、タリュウはゆっくりと過去に向かって上昇し始めた。


ヒロが高い山のふもとにある村を見つめていると、サーヤとインドのばあちゃんの姿が見えた。


「あっ・・・えー?・・・うーん・・・」

ヒロは言葉にならない声を出した。

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