8節 女神ラクシュミー(8)
「ケン、あの円盤じゃなくて、大きい黒い船を破壊しなきゃ・・・エイッ!」
ヒロが大声をあげると同時に強く念じると、八つのミサイルが次々と黒い船に向かって発射された。
「おーっ、ヒロ、すごいぞ!どうやってミサイルを発射したんだ?」
ケンはヒロの力に感激した。
しかし、強く念じる方法がわからない。
「見ろ、ケン!ミサイルが黒い船に命中したぞ!」
ヒロがケンに向かって片手を突き上げた。
「あれ・・・大きい船が二つの船になったぞ・・・二つ目のミサイルも命中したけど・・・」
信じられないことが起こった。
ケンは、二機になった黒い船がさらに割れる様子を見ている。
「また、黒い船が割れて四つの船になった・・・黒い船はミサイルを飲み込むのか?」
ヒロが困惑している間にも、三発目から八発目のミサイルが次々と黒い船の集団に飲み込まれていった。
そして、黒い船は八、十六、三十二・・・と増えて、ついに二百五十六機になってしまった。
「うわわっ、大変だあー!二百機以上の敵船に囲まれてしまった」
ケンがミサイルで対抗しようと身構えるが、既にヒロが八発すべて発射したので何も残っていない。
「仕方がない、敵の船団の中を飛び回って混乱させるしか戦う方法はない!」
ヒロが強く念じると、二人の乗った円盤が、二百機以上の黒い船団の中に突入していった。
「あっ、上の船からミサイルが飛んで来るぞ!」
ケンが叫ぶと、ヒロが強く念じて円盤を別の黒い船の後に動かした。
ミサイルは、その黒い船に命中した。
「よし、やったぞ!敵にもっと同士討ちをさせよう」
ヒロが自慢げな顔をケンに向ける。
しかし、二百機以上の船から次々とミサイルが飛んでくる。
「ヒロ、あちこちからミサイルが飛んで来るぞ!あっ、あぶない!!」
ケンが八つの窓全てを指差して叫んだ。
すると、二人の乗った円盤が数十機の黒い船それぞれの後に回り込みながら移動したので、ミサイルを避けることができた。
「ケン、すごいぞ!ミサイルが当たった船が消えたから、残っている船は百機くらいになったぞ!」
ヒロの言葉を聞いて、ケンは握りこぶしを突き上げた。
「今度は黒い船をつかまえて、僕たちが操縦するぞ!」
ヒロが円盤の中で強く念じると、円盤はスーッと動いて一機の黒い船の底に張り付いた。
「船の底が割れているから、円盤ごと船の中に入ってしまおう」
ケンが、船の底にある円盤の出入り口を見つけて、ヒロに教えた。
「この船の中にも誰もいないぞ。操縦方法もきっと円盤と同じだろう・・・」
そう言って、ヒロが強く念じると、この船のミサイルが四方八方に向かって発射された。
「おおー、ヒロ、やったぞ!ミサイルがつぎつぎ黒い船に命中している」
ケンが興奮して、船の中を走り回る。
「もう、残っている敵船は少ないぞ!」
ヒロがケンに笑顔を向けた。
その直後、二人が乗った船が激しく揺れると同時に、船のすべての窓から強烈な閃光が見えた。
「うわわー、船がバラバラになったー。敵のミサイルにやられたのか?」
「わわっ、二人とも落ちてしまうー」
ヒロとケンの乗った黒い船が破壊され、二人は空中に放り出された。
「ケン、落ち着け!僕たちは空を飛べるんだよ!」
「そうだった。でも、武器を持たずに黒い船と戦えないぞ!」
二人は空中で態勢を立て直した。
「僕たちの真上にいる黒い船の底に穴が開いている。あの船の中に入って操縦しよう!」
ヒロが真上に向かって飛ぶと、ケンがその後に続く。
「あれ・・・ヒロ、黒い船の後から光るものが飛んで来るぞー!」
ケンが叫んだ。
その直後、太陽の何万倍も強い光の塊が二人に襲いかかった。
*** ヒロ、ケン、しっかりしろ・・・
強い光の塊に撃たれる直前にヒロとケンはタリュウに助けられた。
二人は気を失ったが、タリュウとともに影宇宙の中にいる。
「あっ、タリュウが助けてくれたのか・・・うーん・・・ケン、だいじょうぶか?」
「ああ・・・ヒロ、ケガしなかったか?・・・ラクシュミーや街の人たちは?」
「ミウやサスケたち、子どもたちは、どうなった?」
タリュウの背中につかまったまま、ヒロが周りを探した。
*** ジリュウとサブリュウが、助けに行っているよ・・・
タリュウの声がヒロとケンに聞こえた。