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8節 女神ラクシュミー(7)

「丘の上の人達が、今の熱風にやられたんじゃないか?」

「ボサツは大丈夫か?」


ケンとヒロが顔を見合わせる。

すぐに二人は、丘の上のみんなの所に駆け上がった。


大きい船が、ものすごい轟音とともに強烈に光る火炎の尾を残して、東の空に昇って行く。


「やっぱり、あれはヴィマナという恐ろしい飛行機だ・・・」

ケンが東の空を見つめてつぶやいた。


「じゃあ、アンコクがアグネアの矢でこの街を攻撃するのか?」

ヒロが唇をかんで東の空をにらんだ。


二人の前には丘の上にいた街の人達が倒れている。


「うわっ、何十人も倒れているぞ。うーん・・・皆ひどい火傷だ!」

ケンがうなった。


「あっ、ボサツも倒れている・・・、ボサツ、しっかりして!」

ヒロが苦しんでいるボサツに駆け寄った。


「あー・・・、なんてひどいことを・・・」

丘の上の異変に気づいたラクシュミーが、建物を出て駆け上がってきた。


「皆さん、少しの間だけ我慢してください。すぐに痛みが消えて行きますよ」

ラクシュミーは最初にボサツの肩に右手を触れた。


「あー・・・ラクシュミー、痛みが減っていきます。ありがとう」

ボサツが、ラクシュミーの手を握って感謝の気持ちを表した。


ラクシュミーが丘の上に倒れている街の人々の肩や頭に手を触れて歩くと、皆の火傷が治っていった。


「ああー、火傷が治っていく・・・」

「痛みがだんだん消えていくよ、ラクシュミー」


「もう、立って歩ける。ありがとう、ラクシュミー」

倒れていた街の人々には、ラクシュミーが女神のように感じられる。


「ラクシュミー、さっきの熱風でヴァーチュとヴィーナは火傷にならなかったですか?」


疲れた様子のラクシュミーにヒロが問いかけた。


「丘の中腹の頑丈な建物の中にいたから、子ども達もミウも大丈夫よ」

ラクシュミーは落ち着いて答えて、ヒロの向こうに視線を移した。


「あー、大変!街が燃えて、みんなが倒れている!早く助けに行かなくちゃー」

丘の上から街全体を見て、ラクシュミーが悲しい声をあげた。


しかし、東の空から黒い大きな船が、不気味な音と共に近づいて来る。


「あの黒い船を破壊しなきゃ、この街が全滅してしまうぞー!」

初めてヒロが攻撃的になった。


つむじ風になって、上空の黒い船に向かって飛んで行く。


「よーし、俺も一緒に戦うぞ!」

ケンもつむじ風になって、ヒロの後に続いた。


大きな黒い船は、古い海賊船のように傷だらけで汚れている。

船体には大砲発射用の穴らしきものがたくさん開いている。


ヒロとケンが黒い船に近づいていくと、船の底が開いて五機の飛行物体が出て来た。


「あれは何だ?お寺の釣り鐘みたいだな」

「空飛ぶ円盤に似ているぞ。攻撃してくるかもしれない」


ケンとヒロが警戒する。

五機はヒロとケンを包囲するように二人の周りを旋回し始めた。


「こっちから先に攻撃だあー!いくぞおー、地竜!」

ケンが空中で、五機の飛行物体に向けて渾身の地竜を放った。


「おっ、五機の円盤の動きがバラバラになったぞ。円盤をつかまえて僕たちが操縦しよう!」


動きの遅くなった円盤めがけて、ヒロが手裏剣を投げた。

手裏剣が当たった衝撃で、その円盤の入口が少し開いた。


「やったぞ、円盤の入口をこじ開けて中に入ろう!」

ヒロが円盤の入口を開いて中に入ると、ケンがその後に続いた。


円盤の中に入ったヒロとケンは驚いた。

「誰もいないし、ロボットもいないぞ・・・」

「真ん中に太い柱があるけど、何だろう?」


円盤の内部を一周すると、外の見える窓が八つあり、それぞれの窓のそばにミサイル発射装置のようなものがあることが分かった。


「ヒロ、この円盤は、どうやって操縦すればいいんだい?」

ケンが、ミサイル発射装置の一つを触りながら窓の外を見た。


ヒロは、窓の向こうに見える別の円盤の動きを見ていた。


「あっ、あの円盤からミサイルが飛んで来るぞ!あー、危ない!」

ヒロが、真ん中の太い柱に向かって叫ぶと、円盤がスッと瞬間的に横に移動した。


「あれっ、ヒロ、今この円盤が動いたからミサイルに当たらなかったのか?」

ケンが驚いていると、ヒロが大きく息を吐いた。


「あー、危なかった・・・とにかく動けって、強く念じたらミサイルを避けられたんだよ!」


「じゃあ、あの円盤をこっちのミサイルで攻撃しようぜ。よーし、ミサイル・・・発射!」


ケンが真ん中の太い柱に向かって叫んだが、ミサイル発射装置は動かなかった。

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