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8節 女神ラクシュミー(6)

その夜、ヒロは父さんに教わったことをケンとミウに話した。


「オリンポスのデウスが二億年以上前に治癒ちゆの惑星の古代人に知恵を授けていたなんて・・・」

ケンが暗い空を見上げて、つぶやいた。


「ゴータマに知恵を授けた慈愛の国の神様も、治癒の惑星に現れていたのかしら・・・」

ミウが首をかしげて、ヒロの顔を見た。


「そうかもしれない・・・、父さんに教えてもらえればいいんだけど・・・」

ヒロが小さくため息をつくと、またサスケの方から父さんの声が聞こえる。


「オリンポスはある星の惑星で、その星が六億年前に膨張し始めた。高度な文明を持った生命体は、熱くなったオリンポス惑星から避難したんだ。慈愛の惑星にもオリンポス惑星と同じようなことが起きた。それは、四億年前のことだ。慈愛の惑星から避難した生命体は、二億年以上前に治癒の惑星の古代人に知恵を授けていた」


父さんの声は、ミウにも聞こえた。

「じゃあ、モヘンジョ・ダロの近くで独裁者を育てようとしたアンコクも、二億年以上前に治癒の惑星の古代人を独裁者にしようとしたのかしら?」


「いや、高度な文明を持った生命体がアンコク惑星から避難したのは、二千万年ほど前のことだよ。アンコク惑星は我々の太陽の何倍も大きい星の惑星だった。大きい星ほど寿命が短く、最後には超新星爆発を起こして消滅してしまう。アンコク惑星の寿命も短かったが、生物の進化が速く進み、知能の発達した生命体が急速に高度な文明を築き上げたんだ・・・」


父さんの説明を聞いていたヒロが、アンコクの横暴を非難する。

「アンコク惑星の文明が高度でも、独裁者に平和な街を攻撃させるなんて許せないよ!」


「ヒロの言うとおりだ。だが、アンコクの文明は、今の我々より進んだ技術も持っていた。重力を自在にコントロールすることもできたんだ」


父さんが話している途中で、ケンが声をあげた。


「あっ、アンコクが重力を操作して何十機もの飛行物体を一挙にぶつけたから、巨大な光の塊が地面に激突したのか!」


「そうだ。アンコクは、そんな恐ろしいことも実行するんだ。この後もアンコクが何を仕掛けてくるか分からないから、みんな気をつけるんだよ」


父さんの声が小さくなったのでサスケを見ると、眠そうな顔をして横になっていた。


翌日から街の復興が始まった。

市役所の主な幹部が亡くなったので、ボサツが副市長になり市長ラクシュミーを支えることになった。


「ヒロ、ミウ、ケン、街の建物と道路を復興するのを手伝ってください。ボサツは街の皆さんと協力して記念碑を建てようとしていますよ」


ラクシュミーが丘の上から街全体を見渡した後、記念碑を建てる場所に歩いて行った。


「神殿を復興するには大変な労力が必要だから、記念碑を先に建てましょう」

ボサツの計画を聞いて、街の人々が大きな拍手をした。


「では、街の建物と道路を復興する具体的な計画を立てましょう」


ラクシュミーが街を見渡しながら、ヒロ、ミウ、ケンに話しかけた時、遠くから小さな音が聞こえて来た。


「西の方から、今まで聞いたこともない変な音がするよ・・・」

ミウには、不吉なものが近づいてくるように感じられた。


「何か黒っぽい大きな船のようなものが、西の空から近づいてくるぞ・・・」

ヒロが千里眼の力を使って、詳しい形を確認しようとしている。


「まさか・・・、ヴィマナという恐ろしい飛行機か?」

ケンがラーマーヤナに書かれていることを思い出して、つぶやいた。


「あー・・・、見えた!黒い船が、空を飛んでこっちに向かって来るー!」

ミウが声をあげると、ラクシュミーがヴァーチュとヴィーナを抱きかかえる。


「急いで安全なところに逃げよう!」

ケンとヒロがラクシュミー達三人を連れて、丘の中腹の頑丈な建物の中に非難させた。


「丘の上にいる街のみんなも早く非難させなくちゃあ!」

ラクシュミーが建物の外に出ようとする。


「ラクシュミー、僕たちが非難させるから、あなたはミウと一緒にヴァーチュとヴィーナを守っていてください!」


ヒロがラクシュミーを説得して、外に駈け出した。

ケンもすぐ後に続いた。


「うわっ、黒い船が近づいて来るぞー!なんで、あんな大きい船が空を飛ぶんだ?」

上を見上げて、ケンが驚いている。


大きい船が丘の真上を高速で通過する。

ゴオオーッと高温の爆風が丘全体を襲って来る。


「ケン、伏せろ!そこの崩れた建物の陰に隠れよう!」


ヒロがケンの腕をつかんで建物の陰に飛び込んだ。

同時に、丘の上でいくつもの悲鳴があがった。

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