8節 女神ラクシュミー(1)
「タリュウ、急いで行ってくれ!」
ヒロの慌てた様子に、タリュウは困惑して答える。
*** どこに行けばいいんだい?それに、どうしてそんなに慌てているの?・・・
「この街の未来にすごい爆発が起きて、神殿が破壊されるんだよ。君達の母さんが言った大変なことっていうのは、きっと、すごい爆発のことだよ!」
ヒロの説明を聞いて、ジリュウ達も慌て始める。
*** そりゃあ大変だ!でも、それはどれくらい未来のことかな?・・・
*** ヒロが見た爆発って、どれくらい激しいの?・・・
ジリュウ、サブリュウが、未来の大惨事のことをヒロに聞いた。
「今まで見たこともないくらい大きな爆発だよ!どれくらい未来なのか分からないから、この街を見ながら急いで未来に行ってくれよ」
ヒロが答えると、タリュウは影宇宙の中を下降して未来に向かった。
ジリュウとサブリュウもタリュウの後を追って未来に向かった。
「うわあー!あれはなんだあ?」
「ああー!光の塊が地面にぶつかるー!!」
ケンとミウが大声で叫んだ。
太陽の何十倍も明るく輝く光の塊だ。
ヒロがモヘンジョ・ダロの街を見ると、その数キロメートル東の地面にオレンジ色に光る巨大な塊が激突した。
「うわっ!あああー!」
ヒロが叫ぶと同時に、凄まじい衝撃波が影宇宙を揺さぶった。
「おおー!コタロウ、大丈夫かー?」
「きゃあー!カゲマルー!」
「うわあー!サスケー!」
ケンもミウもヒロも、コタロウもカゲマルもサスケも、みんな衝撃波に吹き飛ばされて、影宇宙から飛び出してしまった。
タリュウ、ジリュウ、サブリュウは、影宇宙の奥へ吹き飛ばされて見えなくなった。
「ミウ、ヒロ、大丈夫かー?」
ケンがコタロウの手をつかんで叫ぶと、ミウが応える。
「カゲマルも私も大丈夫だよー」
「よかった!みんな、つむじ風になって、丘の上の神殿まで飛んで行こう!」
ヒロがサスケを抱いて飛びながら、ミウとケンに向かって叫んだ。
「わかった、神殿までだね!」
ミウがカゲマルをかかえて飛んでいく。
「おい、ヒロ!神殿が崩れ落ちるぞー!」
ケンがコタロウを背中に乗せて飛びながら、ヒロに向かって叫んだ。
ヒロ達が崩れ落ちたばかりの神殿の傍に降り立つと、頭上を真っ黒な雲が覆った。
「まだ昼なのに、急に暗くなったね。大雨になりそう」
ミウが空を見上げて心配すると、ヒロが答える。
「さっき見たオレンジ色のでっかい塊が地面に激突したから、たくさんの土が上空まで噴き上がったんだ。その土がもとになって、真っ黒い雲ができたんだよ」
丘の上から街を見下ろしたケンが、苦しそうにうなった。
「さっきの衝撃波で、街中の建物や家が壊れて燃えているぞ・・・」
「ケガをした人や動けない人もいっぱいいるよ」
ミウの目に涙があふれてきた。
ヒロが空を見上げたとたん、バケツをひっくり返したような大雨になった。
「この大雨で火事は消えるだろう。でも、ケガをした人達を早くどこかに避難させなくちゃ・・・」
ヒロがつぶやくと、すぐにサスケが走り出した。
サスケが向かった先には、大雨の中で、ケガをした人々を助けている若い女性がいた。
「痛い、痛い・・・、誰か、早く助けて!」
片腕を骨折し頭から血を流している老女が叫ぶと、若い女性が近寄って老女の肩に手を触れた。
この若い女性も顔と腕に傷を負っている。
「もう大丈夫ですよ。しばらく横になっていると楽になりますよ」
若い女性が優しく声をかけると、老女の苦しそうな表情が笑顔に変わった。
「ありがとう、ラクシュミー。血が止まって、痛みが消えていくよ」