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7節 神の名前はゴータマ(4)

北の街の独裁者が信じるアンコクとは何者だろう?

北の街があまりに貧しいので、命がけでこの街に逃げてきた者がいる。


「北の街から逃げてきた者が言うには、アンコクという神が独裁者の夢に現れて、街や建物の造り方を教えるそうだ。それだけでなく軍隊の作り方や独裁の方法まで教えてくれるらしい」


ゴータマがあきれたような表情でスガワラ先生に説明した。

先生はヒロ達と一緒に、カルキが二千人の兵士を訓練している様子を見ている。


「そうであれば、アンコクという神はデウスや慈愛の神と同じように何かを教えてくれる神ということですな。しかし、慈愛の神と違って、アンコクは独裁や戦いを好むので、その街の住民は幸せになれないでしょう」


スガワラ先生の言葉を受けて、ゴータマが何か云おうとした時、一人の兵士が大声を上げた。


「大変だー!北の方から騎馬軍団が近づいて来るぞー!」

兵士達がザワザワし始めると、別の兵士が叫んだ。


「東からも西からも騎馬軍団が攻めて来るぞー!」


「落ち着けー。訓練はもう終わった。ここにいるみんなは、既に立派な騎馬軍団の兵士だ。六百騎ごとに分かれて、それぞれ北、東、西の敵を撃退せよ!残る二百騎は街の中心を守れ!」


白馬にまたがったカルキが号令をかけると、全ての騎馬兵が整然とそれぞれの方向に進んで行った。


この街は外敵の攻撃に対抗できる戦略的な城壁を持っていない。

六百騎ごとに分かれた騎馬兵は城門を出て、それぞれ北、東、西の敵を威圧するようにゆっくりと前進する。


「我々の方が強くて数が多いぞー!叩きのめされる前に逃げ帰った方が身のためだぞー!」


カルキ軍の北のリーダーが大声を上げ、ケンから伝授された「地竜」を敵軍に向けて放つと、敵軍の馬が驚いて多数の兵士が馬から落ちた。


そこへケンが馬に乗って現れ、北の敵軍へ向けて何発も「地竜」を放つ。

敵軍のほとんどの兵士が馬から落ちて総崩れになり、北に向かって敗走し始めた。


東の敵軍も西の敵軍も、北の敵軍と同じように攻めてきた。


「我々は恐ろしい武器を持っているぞー!死にたくなければ、ここを立ち去れ!」


カルキ軍の東のリーダーと西のリーダーが、ケンから伝授された「地竜」を敵軍に向けて放つと、敵軍の多数の兵士が馬から落ちた。


「兵士達に大声で威嚇いかくするように指示してください。僕が飛んでいって敵軍を脅かしますから」


ヒロがつむじ風になって東と西のリーダーに伝えると、カルキ軍の東と西から地響きのような大声が沸きあがる。


その大声に乗って、ヒロが敵軍の兵士達の頭をかすめて飛ぶと、ほとんどの兵士が腰を抜かして座り込んでしまった。


「お前達の独裁者はみんなを苦しめる愚か者だ。街に戻ったら牢屋に閉じ込めてしまえ!」


ヒロがつむじ風になって飛び回りながら、北、東、西の兵士達に幻術をかけると、兵士達はフラフラと立ち上がって、それぞれの街に向かって歩き出した。


「カルキ軍が敵軍を撃退したから、もう安心だよ」

街の中心で騎馬兵に守られていたリグに向かってミウが微笑んだ。


「カルキ兄さんの軍隊は、本当に強いんだね」

リグがほっとした表情で答えると、アムリタがミウに手を合わせて感謝の気持ちを表した。


「あなた方が防御術と撃退術を伝授してくださったから、この街とみんなを守ることができました。ほんとうにありがとう」


「しかし、まだ安心はできませんよ。逃げ帰った独裁者達が、さらに強い軍隊を組織して攻めてくるかもしれません」

カルキ軍の戦いぶりを見ていたスガワラ先生が、小さい声でアムリタに言った。


「まだ安心できないから、あなた方にしばらく留まって頂き、私たちに必要な忍術や武器を教えてほしい。そのお礼に、あなた方の望むものを差し上げよう」

ゴータマが先生とミウに向かって頼んでいるところに、ヒロとケンが帰ってきた。


「敵軍の兵士達に幻術をかけたから、独裁者達は牢獄に閉じ込められるでしょう。しかし、またアンコクが別の者達を唆して独裁者にしてしまうかもしれません」


敗走する敵軍を見つめながら、ヒロが説明すると、ケンが自分の考えを主張する。


「ゴータマさんが禁止するから敵軍を殲滅せんめつできないけど、本当は敵の息の根を止めてしまわないと安心できないよ」


「ケンの言うことは尤もだが、この街は慈愛の国だ。しばらくこの街に留まって我々に足りないものを教えて頂くことにしよう」


スガワラ先生はこの街が気に入ってしまったらしい。

ミウやヒロだけでなく、ケンも同じ気持ちになっていた。


その夜はゴータマの家の隣にある大きな建物で、アンコクの独裁者軍を撃退した祝勝会が催された。


「今日はアンコクの騎馬軍団が攻めてきて、恐ろしいと思った人が多かっただろう。しかし、我々の勇敢な騎馬軍団がみごとに撃退してくれた。騎馬軍団の指導者、リーダー達、そして全ての兵士達は、短期間の訓練で最高の軍団を作ってくれた。我々とこの街を守ってくれて、ありがとう」


ゴータマは、祝勝会に集まった三千人の参加者を見渡して、二千人の騎馬軍団の兵士達に向かって大声で感謝の言葉を伝えた。


「さらに、この感謝の言葉を、我々の騎馬軍団だけでなく、この人達にも捧げたい。もうみんなも知っているスガワラ、ヒロ、ミウ、ケン、そしてサスケ、カゲマル、コタロウだ。この人達の特別な能力によって、カルキをはじめ騎馬軍団の全員が短期間のうちに高度な防御術と撃退術を修得できた。この街が危機に陥る前に、この人達が現れたのは、慈愛の神のご配慮に違いない。この人達と慈愛の神に、みんなで感謝の気持ちを伝えよう!」


ゴータマがスガワラ達に向かって合掌し、次に天に向かって合掌すると、参加者全員が後に続いた。

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