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7節 神の名前はゴータマ(3)

早速スガワラ先生は、子供達が遊んでいる居間に入っていった。

「おーい、ヒロ、ミウ、ケン、この街の人々に忍術を教えることになったぞ。明日から始めるとして、今日はカルキとリグに教えよう」


「急に言われても何のことか、さっぱり分かりませんよ」

状況を把握できない子供達を代表するように、ケンが口をとがらせた。


スガワラ先生がアンコクの脅威を説明すると、カルキとヒロ達は納得したが、リグは怖がっている。


「心配しないで、リグ。わたしが自分を守る術と敵を撃退する術を教えるから」

ミウがカゲマルを抱き上げながら笑顔を見せると、リグはほっとした表情に変わった。


「じゃあ、僕がブラフマーさんに教わった方法で、つむじ風、千里眼、ケガが治る体をカルキに教えるよ」

ヒロが高度な忍術を先に教えようとするので、ケンが反対する。


「そんな難しい術の前に、体力と筋力を強くして、武術を修得するべきだよ。俺の得意な地竜という術も教えるよ」


「では、私もゴータマさんとアムリタさんに防御術と撃退術を伝授しましょう」

居間の入口にいるゴータマとアムリタに向かって、スガワラ先生が声を掛けた。


数日のうちにゴータマの家族をはじめ、この街の全員に防御術と撃退術が伝授された。


「北の街はアンコクを信じる独裁者に支配されているそうだ。アンコクに教えられて軍隊を作り、この街を攻撃する準備を進めているらしいから、こちらも自衛団を組織しよう」


スガワラ先生は、北の街の独裁者との対決に備えて、この街の青年達を自衛団の兵士にする必要があることをゴータマに訴えた。


「北の街は貧しくて、住民達は苦労している。この街を支配すれば豊かになると言って、独裁者が軍隊を作ったのだ。独裁者と話し合って、この街の富を少し分けてやってはどうか?」


慈愛の神を信じるゴータマの言葉に、ヒロとミウは賛同したが、ケンが反論した。


「そんなことをしたら、あっという間にこの街を支配されて全ての富を奪われてしまいますよ」


「必ずしもそうなるとは言えないが、自衛団を組織してから独裁者と話し合った方が安全ですよ」


スガワラ先生の提案にゴータマも賛同したので、自衛団が組織されることになった。


二千人ほどの兵士からなる自衛団が最初の訓練を始めた時に、北の街の軍隊が攻めてきた。


独裁者は、この街に強力な自衛団が組織されたことを知らなかったので、五百人ほどの貧弱な軍隊を従えて近づいてきた。


「敵がこの街の城壁に近づく前に、こちらの自衛団の人数を見せて撃退しましょう」


ケンの進言に従って、ゴータマが自衛団の全員に城壁の上から敵に姿を見せるよう指図した。


「自衛団の兵士はまだしっかりした防具を身につけていないから、敵の弓矢や投石に注意するよう指図してください」


ゴータマがヒロの進言どおりに指図をした途端、敵からパラパラと弓矢が飛んできた。

敵からの投石もあったが、自衛団の兵士に被害はなかった。


独裁者が困惑していると判断したゴータマが城壁の上に立って大声で独裁者に話しかける。


「自分達が貧しいからといって、この街の富を奪うことは許されないことだ!そちらが望むなら、我々が支援してそちらが豊になれるよう、共に働こうではないか!」


しかし、独裁者は横を向いてゴータマの提案を拒否した。

そして、五百人ほどの軍隊を指図して北の街に引き返して行く。


それを見たケンが、すぐに自衛団が敵の軍隊を攻撃するようゴータマに進言した。


「敵を攻撃すると、今後仲良くすることが出来なくなる。独裁者の気が変わるのを待って、もう一度話し合いたい」


慈愛の神を信じるゴータマは、独裁者の頭を支配しているアンコクの恐ろしさを想像できなかった。


しばらくして、北の街の軍隊が五百人の騎馬軍団になったという噂が聞こえてきた。


続いて、東の街にも西の街にも独裁者が出現し、それぞれ五百人の騎馬軍団を作っているという噂も届いた。


「北、東、西の騎馬軍団を合わせると千五百人になる。三つの街の独裁者は皆アンコクを信じているから、協力してこの街を攻撃するだろう。それを撃退するためには、この街の自衛団を二千人の騎馬軍団にしなくちゃあ」


ケンは馬に乗って戦うことも得意だから、二千人の兵士を早く訓練したいと思っている。


「ケンが二千人の兵士を直接訓練するより、先にカルキを訓練した方がいいんじゃないか?突然この街に現れたケンより、尊敬されているゴータマさんの家族の方が兵士達は信用するはずだよ」


ヒロの言うことはもっともなので、ケンはすぐにカルキを訓練することにした。


ブラフマーに教えてもらった方法で訓練したので、カルキはアッという間にケンと同じくらい上手に馬に乗って戦えるようになった。


「私が大切にしている白馬をカルキにあげよう。カルキはまだ十五歳だが、立派な白馬に乗っていれば二千人の騎馬軍団の指導者らしく見えるだろう」


カルキの上達ぶりを見ていたゴータマが、満足そうに笑った。

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