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6節 超古代のカンベイ湾(6)

「そうかも知れない。そうすると、シュウジはデウスがどうやってブラフマーに啓示を与えているか、知っていることになるなあ」

そう言いながら、スガワラ先生は家の中に入っていった。


数日後、みんながブラフマーの家で食事をしていると、ブラフマーがデウスから授かった新しい啓示を説明した。


「イルカのように泳ぐ能力だけじゃなくて、私が持っている知識や能力を誰かに即座に修得させる訓練方法を授かったんだよ。そして、誰かが誰かに知識や能力を伝えるための学校という仕組みを作ると、この街のみんなの能力が高まって、街全体が発展するというんだ」


「それはいい方法だ。まずこの街の主だった者たちにブラフマーの知識と訓練方法を伝授すればいい。最初の学校は、隣の大きな建物だ」


スガワラ先生がブラフマーの話を具体化すると、ブラフマーは両手を広げて喜んだ。


「そうだ、そうだ。最初十人に私の知識や能力を伝授すると、その十人が先生になって百人に教えられる。その百人が先生になると学校の建物が足りなくなるから、街のあちこちに新しい建物を建てて千人に教えることが出来るようにする。それから・・・」


「あなた、また夢が大きくなりすぎて、ついていけない人達から苦情を言われますよ。この街のみんなが納得するように、気をつけて進めましょう。もちろん主だった最初の十人に私を含めてくれますよね!」

サラスが優しく笑いながら話をまとめた。


ブラフマーが教えた最初の十人は、サラスのように高い能力の持ち主だった。

その中の一人、シャンカラは海沿いの街からはるか遠くの海に出て漁をしたり、その先の街と交易をしたりする一族の出身だ。


シャンカラは子供の頃から太陽や星の方角を見て、自分の位置を正確に認識する能力に優れていた。


大人になる頃には、星の見えない時でも周囲の地磁気を察知して、自分の位置や向いている方位を認識できるまでに能力が高まった。


「シャンカラ、その特別な知識と能力をこの子達に伝授してくれよ。この子達は普通の子達より高い運動能力と学習能力を持っているぞ」


スガワラ先生はシャンカラと仲がいいので遠慮がない。

ヒロ、ミウ、ケンが目を輝かせて見つめると、シャンカラは大きくうなづいた。


「シャンカラさんからスーパー方向感覚の能力を授かったから、どこに行っても不安がないよ」

翌日、街はずれの林を走りながらケンが言うと、ミウが応じた。


「ほんと!こんなに簡単にすごい能力を修得できるのなら、ヒロのつむじ風になる能力も伝授してほしいな、ヒロ」


「そうだね、能力の伝授方法をマスターしたから二人に僕の特殊能力を伝授してあげるよ」


「つむじ風だけじゃなくて、すぐにケガが治る体と千里眼の能力も伝授してくれよ」


ヒロの特殊能力を羨ましく思っていたケンが、真剣な眼差しでヒロに頼むとヒロは笑って答えた。


「オーケイ。その代わりにケンの武術とミウの薬草の能力や知識を伝授してくれよ」

「もちろんだよ!じゃあ最初に俺が武術の能力を伝授するぞ」


ケンが立ち止まりヒロと向かい合って立つと、ケンの頭から光る糸のようなものが出て、ヒロの頭の中に入って行く。


「次は私に伝授してね、ケン」

ミウの求めに応じて、ケンの武術の能力がミウにも伝授された。


「よーし、今度は僕のつむじ風だね」

ヒロからケン、そしてミウに、つむじ風になる能力が伝授された。


「わーっ!つむじ風になれるぞ、それーっ!」

嬉しさを抑えきれなくなったケンが、全速力で走って空に向かって飛び上がった。


続いてミウも飛び上がった。

二人ともつむじ風になったが、ケンは低いところをクルクル回っていて、ミウは高いところをフラフラ飛んでいる。


「能力はすぐに伝授できても、筋力や体力はすぐに変化できないから、うまく飛べないんだよ」


ヒロはそう言って、ケンに飛び蹴りを仕掛けた。

見事にケンの肩に当ったが、ケンは平気な顔をしている。


「全然痛くないぞ、ヒロ!やっぱり、体力と筋力も鍛えないと俺と同じレベルにならないぞ」

お互いの変化を楽しみながら、三人はそれぞれの能力を伝授しあった。


「もうそろそろ家に帰ろうか」

ヒロが駆け出してつむじ風になると、ミウとケンも後に続いた。


「どうも俺は高く飛べないなあ。体が重すぎるのか?」

ケンが不満そうに言うと、ミウが笑って応じた。

「筋肉が多すぎて体が重いのよ。無駄な筋肉を減らしたら?」


後ろの二人から視線を前に移したヒロが大声を上げた。

「あれ、大変だ!誰かが川で溺れてるぞ!」


急降下したヒロが頭から川に飛び込んだ。

溺れているのはパールヴァだ。


「パールヴァ、しっかりしろ!」

気を失っているパールヴァを抱きかかえて、ヒロはイルカのように泳いで岸辺に着いた。


ミウとケンが岸辺に降り立ち、パールヴァを介抱するが、気を失ったまま目を覚まさない。


そこにサスケが後ろから二人を飛び越えて、パールヴァの胸を軽く押して降りた。


「あっ、パールヴァが水を噴き出して目を覚ました。すごいね、サスケ!」

ミウがサスケの首に抱きついてめると、サスケの表情が緩んだ。


「パールヴァ、このお薬を飲むと元気になるよ」

ミウが手で水をすくって、忍者の薬をパールヴァに飲ませると、パールヴァはヒロの手を握った。


「助けてくれてありがとう、ヒロ、ミウ、サスケ・・・」


「無事で良かったね、パールヴァ(でも、どうしてヒロの手を握るの?)」

ミウは自分が焼きもちをやいていることに気づいた。


「さあパールヴァ、家に帰ろう」

ケンがパールヴァを抱きかかえてブラフマーの家に着くと、驚いたサラスが駆け寄ってきた。


「ヒロ、ケン、ミウ、本当にありがとう。パールヴァ、どうして勝手に川に行ったの?」

「だって、お母様がイルカのように泳ぐ方法を教えてくれないから・・・」


「そうかそうか、もう少し待っていれば教えてもらえたのに。パールヴァ、もう危ないことはしないと約束しておくれ」


家から出てきたブラフマーが優しく諭すと、こっくりうなづいたパールヴァの目から涙があふれた。

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