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5節 古代インドのモヘンジョ・ダロ(6)

「じゃあ、そのヒスイの玉が造られた時代までさかのぼってみれば、サーヤのいる場所が分かるだけじゃなくて、ヒスイの玉の秘密が分かるかもしれないぞ」


スガワラ先生には、まだ確信はなかったが、もっと過去に遡ればサーヤのいる場所が分かるような気がしていた。

それを聞いたシリュウは、困惑してサブリュウに話しかけた。


*** どんな過去に行けばいいんだろう、サブリュウ?・・・

*** そりゃあ、誰にも分からないから、時々地上の様子を見ながら過去に遡ればいいんじゃないか、シリュウ?・・・


スガワラ先生も同じことを考えていたので、サブリュウのアイデアに賛成した。

「それはいい方法だ。じゃあ、この都市の七千年前の様子を見てみよう」


「どうして七千年前なんですか?モヘンジョ・ダロの都市の起原が六千年前か七千年前と言われているからですか?」

ヒロは以前の授業で習ったことを言ったのだが、スガワラ先生は喜んで大きくうなづいた。


「そうだ、ヒロ、よく憶えていたな!七千年前のモヘンジョ・ダロを見せてくれ、シリュウ!」

*** スガワラ先生、そろそろ七千年前のモヘンジョ・ダロが見えてくるよ・・・


宇宙ステーションから地球を見ているくらい遠くに見えていたのに、どんどんインドの海岸線から内陸に近づいて行き、モヘンジョ・ダロの都市がはっきりと見えてきた。


レンガ造りの建物、沐浴場、舗装された道路など、四千五百年前と同じように整然としていた。

しかし、それらの配置は四千五百年前と違っており、城壁に囲まれた都市の面積は四千五百年前よりずいぶん小さい。


「やはり七千年前にはモヘンジョ・ダロの都市が造られていたんだ!でも、まだ丘の上の神殿が造られていないから、この都市は始まったばかりだ。見ろ、建物が新しいし、建築中の建物もあるじゃないか!」


スガワラ先生はシリュウから身を乗り出して、初期のモヘンジョ・ダロを詳しく観察しようとしている。

しかし、ヒロは早くサーヤのいる所に行きたかった。


「スガワラ先生、モヘンジョ・ダロの起源より、サーヤを捜すことが大事ですよ!タリュウ、サスケ、早くサーヤのいる所へ連れて行ってくれよ!」


*** ヒスイの玉がもっと過去に行きたがっている・・・そう思わないか、ジリュウ?・・・

*** そうだなタリュウ、ヒスイの玉はしゃべらないが、遠い過去に何かがあるようだ・・・サブリュウは何か感じるかい?・・・


*** ヒスイの玉の光が過去に向かって伸びている。もっと過去に行こうよ!・・・

四匹の竜は、光が伸びている方向へ上昇して行く。


地球が遠くなったり近くなったりして、時間を遡って行く。

「ちょっと待ってくれ。シリュウ、八千年前のモヘンジョ・ダロはどこに見えるかな?」


*** スガワラ先生、八千年前のモヘンジョ・ダロがもうすぐ見えてくるはずだけど、街が消えているね・・・


七千年前のモヘンジョ・ダロと同じ場所に近づいたが、そこには農耕地に囲まれた低い丘が見えるだけだった。


遠くの山には雪のような白いものが見えるが、氷河ではないだろうか。

さらに地表から離れて全体を見渡すと、七千年前より海岸線が遠くに見える。


「やっぱり、八千年前は寒い時代だったんだ。地球の水が氷河になって陸上にあるから、海の水が少なかった。だから、海岸線が遠くに見えるんだ」


スガワラ先生は、陸地にあった氷河が二万年前に融け始めて海面が上昇したことを知っている。

海面の上昇は六千年前まで続いて、現在の高さになったのだ。


「ヒスイの玉の光が海岸の方向に伸びているよ。タリュウ、あっちに行けばサーヤの手掛りが見つかるはずだよ!」

ヒロは、こんなことをしているのがもどかしかった。


ミウにはヒロの気持ちがよく分かる。

「ジリュウ、もっと速く海岸まで行ってよ!ヒスイの玉の光が伸びている方向は、あっちだよ!」


*** 分かっているよ、ミウ。早くサーヤに会えるように、海岸線を見ながら過去に遡ろう・・・

地表が大きく見えるようになると、氷河の形がはっきりしてきた。


「八千年前には、こんなに広くて分厚い氷河が山を削って動いていたのかあ!」

ケンは想像を絶する氷河の破壊力に驚いていた。


海岸線に近づくと、いくつかの大きな川が注ぎ込む広い湾が見えてきた。

その広い湾を見ながら過去に遡ると海面が低くなって行き、海中からモヘンジョ・ダロのような古代都市が浮上してきた。


「これはカンベイ湾に沈んだ超古代都市だ!誰がいつ造ったんだろう?シリュウ、もっと過去に遡ってくれ」

スガワラ先生が興奮している。


今度はミウが先生に注意した。

「サーヤを捜すのが大事です、先生!ヒスイの玉の光はどっちに向かっているの、ジリュウ?」


*** この古代都市のもっと過去に向かっているよ、ミウ。もっと急ごうぜ、みんな!・・・

四匹の竜はぐんぐん上昇して行く。


「ずっと不思議に思っていたんだけど、影宇宙の中で上昇すると過去に遡れるのは何故なんだ?」

サブリュウの背中に乗って回りを見渡していたケンが四匹の竜に訊いた。


*** 何故かと言われても、説明するのは難しいなあ、ジリュウ・・・

*** そうだな、サブリュウ。俺たちは影宇宙育ちだから、ケンの育った宇宙のことを知らないからなあ。タリュウは説明できるかい?・・・


*** 詳しいことは分からないけど、影宇宙の中を上昇して宇宙に出れば、そこは過去の宇宙なんだ。その反対に影宇宙の中を下降して宇宙に出ると、そこは未来の宇宙なんだよ・・・


四匹の竜の中で一番しっかりしているタリュウが、少ない経験を思い出して説明した。

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