5節 古代インドのモヘンジョ・ダロ(5)
「そうだ、さっきの飛行物体はどうなったんだろう」
ケンが慌てて役場の外に出て空を見上げた。
空には炎の形をした大きな飛行物体が浮かんでいる。
「あれは大きな炎のように見えるけど、オレンジ色の飛行物体が数十機集まって炎の形を作っているよ」
目のいいヒロが説明すると、空を見上げてミウが言った。
「さっき地面に激突した飛行物体の仲間が上空をゆっくり旋回しているみたいに見えるよ」
「あの飛行物体には、操縦士が乗っていない!なのに、数十機がまとまって地球から離れようとしている」
ヒロには千里眼の能力が備わったのか、飛行物体の中まで見えてきた。
「あーっ、あの飛行物体は宇宙のどこかの惑星から放射能廃棄物を積んできた小型宇宙船だ。放射能が安全なレベルに下がるまで宇宙を放浪しているらしい」
信じられないことをヒロがしゃべり始めたので、ケンが慌てて遮った。
「どうしてそんなことが分かるんだい?ヒロ!」
「あの飛行物体の方から、そんな声が聞こえてくるんだよ。他の惑星に衝突しないように宇宙船を運転してきたけど、一つの宇宙船が制御不能になったそうだ。何か外部から強い力が働いたから、一機が古代都市の近くに衝突したと言っているよ」
ヒロは、ますます信じられないことを話し始めた。
「それはアンコクの仕業じゃないの?」
なぜかミウはそんな気がして、ヒロの顔を見た。
「きっと、そうだよ!でも危険な放射能廃棄物を、どうやってその惑星から発射させたんだろう?」
そう言ってケンが空を見上げると、スガワラ先生が口を開いた。
「この前の授業で教えた重力操縦羽と同じ原理だよ。その惑星には、重力を自由に制御できる技術があるから、危険なものでも宇宙船に乗せて発射できるんだよ」
「でも、そんな技術があるんだったら、その惑星の太陽に向かって放射能廃棄物を発射すればいいんじゃないの?太陽はいつも核爆発しているんだから」
ミウは宇宙のことを少し知っているが、スガワラ先生はその惑星の文化を推測して答えた。
「確かにその太陽に放射能廃棄物を放り込んでもいいが、その惑星の人達は自分達の太陽を汚したくなかったんだろうな。自分達の太陽とその周りを回っているいろんな惑星が汚れないよう、10万年以上宇宙を放浪するように宇宙船を発射させたんだと思う」
「じゃあ、あの宇宙船はまとまって地球から離れていくんだな」
ケンが空を見上げてつぶやくと、ヒロが落ち着かない表情で応えた。
「宇宙船は、また宇宙を放浪するつもりだけど、アンコクが強い力で妨害するかもしれない。でも僕達はどうすることも出来ないから、早くサーヤを探しに行こうよ」
「そうね、四匹の竜に乗ってサーヤを探しにいきましょう」
ミウが四匹の竜を探して天を見上げると、既に四匹の竜は天から顔を出していた。
*** ずっと様子を見ていたんだよ。みんな、早く俺達の背中に乗って!・・・
タリュウがうながすと、みんなは四匹の竜に乗って影宇宙に戻った。
*** サーヤのいる場所は分かったのかい、ヒロ、サスケ?・・・
タリュウがヒロとサスケに話しかけたが、ヒロは不満げに答えた。
「サスケが見つけてくれたのは、この緑色のきれいなヒスイの玉だけなんだ」
*** ヒロ、何言ってるんだい。井戸に落ちて、そのヒスイの玉を見つけた時に、サーヤの匂いを感じたんだよ・・・
「サスケは僕に突き飛ばされて、偶然井戸に落ちたんじゃないか」
*** いや、井戸に落ちる前からサーヤの匂いを感じていたのさ・・・
サスケが自信に満ちた顔をヒロに向けている。
ヒロとサスケの会話を聞いていたミウは、おかしなことに気づいた。
「サスケはまだサーヤに会ったことがないのに、どうしてサーヤの匂いが分かるの?」
*** おいらは、サーヤだけじゃなくて、ヒロの父さんと母さんの匂いも分かるよ。会ったことがなくても、ばあちゃんの家にいっぱい匂いが残っているから・・・
「サスケは鼻がいいだけじゃなくて、頭もいいんだね。じゃあ、ヒスイの玉からサーヤの匂いがするのは何故だか分かる?」
*** きっとどこかで、サーヤがヒスイの玉を触って遊んだんだよ・・・
「エーッ、四千五百年前よりもっと過去の時代に、サーヤが来ていたなんて考えられないよ」
サスケの話を聞いていたケンは驚いた。
そこにジリュウが話に加わってきた。
*** とにかくそのヒスイの玉が、サーヤを捜す手掛りになるってことだ。それに、ヒスイの玉が反射する光を見ると、おいらたちはヒスイの玉に何故か引き寄せられるんだよ・・・