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5節 古代インドのモヘンジョ・ダロ(1)

ミウ、ケン、スガワラ先生は、カゲマル、コタロウと共に、三匹の竜から降りて、街のはずれの小さな岩山の洞から出てきた。

三人は岩山の頂上に登って、街全体を見渡した。


「これは・・・インドのモヘンジョ・ダロだ!うーん、四千五百年前のモヘンジョ・ダロだーっ!」


スガワラ先生が興奮して叫んだ。

その声が、街に向かって歩いていたヒロとサスケに聞こえた。


「サスケ、あれはスガワラ先生の声じゃないか?」

サスケは自信を持ってワンと応えた。


すぐにヒロは、サスケと一緒に岩山に向かって引き返した。

「あーっ、あれはヒロとサスケじゃないの?」


遠くから走ってくるヒロとサスケを見つけたミウが、跳ぶようにして岩山を駆け下りた。


ケンは岩山の頂上からヒロに向かって叫んだ。

「おーい、ヒロー!俺たちも一緒にサーヤを捜すぞー!」


「おーっ、ミウ、ケン、それに、スガワラ先生!」

岩山の下まで戻ったヒロは、みんなが来てくれて嬉しかったので宙返りしてみせた。


「ヒロ、どうして先に行っちゃったの?みんな心配してたんだよ・・・」

ミウは、ヒロの頭をコツンとたたいてほほ笑んだが、目が潤んでいる。


「サーヤのいる場所は、分かっているのか、ヒロ?」

岩山から下りて来たスガワラ先生が、ヒロの肩に手をおいて話しかけた。


「過去のインドの山奥にいるはずなんだけど、詳しいことは分からないんです。この街に出て捜したらサーヤの居所が分かるかも知れないってサスケが言うから、影宇宙から出たんです」


「ヒロが詳しいことを知らないのに、どうしてサスケがサーヤを捜せるんだい?」

ケンはそう言いながら、ヒロとスガワラ先生の顔を交互に見た。


すると、サスケがワンと吠えて、街に向かって歩き出した。


「影宇宙の中にいるシュウジが、サスケを誘導しているんじゃないか?とにかく、古代インド人の家族に変装して街に入ろう。俺が父親、ケンは大きいから長男、次がミウで、ヒロは末っ子ということにするぞ」


スガワラ先生は三人の顔を見ながら、古代インドの中年男に変装した。

「先生、どうして僕がミウの弟なんですか?」


「ヒロよりわたしの方が大人に見えるからよ」

三人もそれぞれ変装して、サスケの後を追って街に向かった。


「向こうの丘の上に、立派な神殿が見えるぞ。あそこには二千年後の仏教時代に、ストゥーパが建てられたんだ」


スガワラ先生が指差す先に、ギリシャのパルテノン神殿に似た大きな神殿が見えた。


「街を囲む城壁の工事をしてますね。もっと高くするみたいだなあ。しかも分厚く」

ヒロは街の治安状況が気になったが、誰にも止められずに城門を通って街の中に入ることができた。


「道路が舗装されていて綺麗!建物もレンガ造りで素敵!」

ミウの目には、街の道路や建物が近代的で素晴しいものに見えた。


すれ違う人々の服装は質素だが、清潔でセンスがいい。

街の中心に近づくにつれてにぎやかになって来た。


「あそこに、野菜や果物の市場があるよ。人がいっぱいいるなあ」

ケンが先頭になって、人ごみをかき分けて進んで行く。


みんなも人ごみに苦労しながらついて行った。

「芋、葉野菜、大根、人参、トマト、キノコ類・・・今と同じ野菜が昔からあったんだね」


「イチジク、ブドウ、梨、みかんもあったのか」

ミウとヒロは、美味しそうな果物を見て空腹を感じた。

スガワラ先生も空腹なのか、財布からお金を出そうとしている。


「地方からこの街に出て来た者達だな。あっちの役場に行って、先に手続をして来なさい」


市場の中の穏やかそうな初老の男がスガワラ先生達を見て、地方から出て来た家族と思ったようだ。

この街は、地方から移住してくる人々で人口が増えている。


「あっちの役場ですか・・・ありがとう。みんな、あっちへ行こう」

スガワラ先生は我に返った。財布から現代のお金を出していたら、怪しまれただろう。


丘の上の神殿に向かって少し上っていくと、なだらかな丘の中腹にレンガ造りの役場があった。


後を振り返ると、下の方にさっきの市場があり、左の方には広い沐浴場が見える。

縦横に整然と走る道路には人々が行き交い、堅固な城壁に守られたこの街には活気があふれている。


「この古代都市の周囲は五キロ、人口は三万人くらいだろう。やはり四千五百年前の絶頂期だと言って間違いない」


スガワラ先生は、満足そうに街を見下ろした。

みんなが役場の中に入ると、案内係の中年の女が声をかけて来た。


「この街に住みたい人達ですか?じゃあ、あの扉の向こうに行ってください」

言われた通りに扉の向こうに行くと、手続を終えた三人家族に、役人が新しい住居の場所を教えていた。


三人家族が部屋を出て行くと、役人はこちらを向いて声を掛けた。

「あなた達もこの街に住みたいのですか?どんな仕事ができますか?」

役人は、薄いベージュ色の服を着た大きな目の中年の男だ。


「学校の先生、建物の修理、城壁の工事など、いろいろなことができますよ」

スガワラ先生が答えると、役人は驚いたように大きな目をさらに大きくして質問した。


「学校の先生だって?地方から来たあなたが、この街の子供達に何を教えられるのか?」


スガワラ先生が一瞬プライドを傷つけられたような顔をしたので、ヒロがとっさに話しかけた。


「お父さんは僕たちの街では尊敬されている先生だけど、こんなすごい街ですぐに教えるのは大変なんじゃないの?」


「そうか、あなたは学校の先生だったのか。これは失礼した」

役人が頭を下げて謝ると、スガワラ先生は気を取り直して話を戻した。


「いやいや、とんでもない。あの、そうですね・・・今、城壁の工事が行われているので、私も工事の仕事をしたいと思います。子供達も手伝えますので」


「あー、それなら城壁工事の仕事をお願いしよう。最近は物騒な噂が広まっているから、城壁をもっと高く頑丈にしなくてはいけない」


役人が何気なく口にした言葉を聞いて、ミウが不安そうな表情をして質問した。

「あのー、その物騒な噂って、どんな噂ですか?」


すると、役人は余計なことを言ってしまったと後悔した。

「アンコクと呼ばれる地方の独裁者がこの都市を攻撃するという噂なんだが、誰にも言ってはいけないよ。何も知らないお年寄りや子供達を不安がらせてはいけないからな」


「分かりました。誰にも言いませんよ。子供達も誰にも言いません」

スガワラ先生が答えると、三人の子供達も役人の顔を見てうなづいた。


納得した役人から、移住者用の住居の鍵をもらった四人は、役場を出て住居に向かった。

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