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4節 命を救える特殊能力(6)

「竜って言えば・・・この前ヒロが影宇宙に入った時に竜が現れたって言っていました」

ケンがミウと顔を見合わせて言った。


すると、スガワラ先生が大きくうなずいて、クロイワ先生を見た。

「クロイワ先生、この二人だけでは危ないから、私も一緒にヒロの後を追いかけます。二、三日で帰ってきますから、私の担当の授業のことは、校長先生に相談してください」


「えっ、そんな・・・」

クロイワ先生が何か言おうとしたが、その前にスガワラ先生は、薬の入ったビンを持って玄関を飛び出していた。


「ミウ、ケン、神社の裏の洞に向かって走るぞーっ。急げー!」

スガワラ先生に続いてケンとミウも駆け出そうとしたが、クロイワ先生がミウを呼び止めた。


「ミウ、この小さなビンに同じ薬が入っているから、もしもの時に使いなさい」


「ありがとう、お母さん。じゃあ、行ってきます」

ミウは、そのビンを帆布で作った小さなポシェットに入れて肩に掛けた。


神社の裏の洞の前に着くと、スガワラ先生が薬の入った茶色いビンのふたを開け、三人は精神を統一して祈った。

いつの間にか、カゲマルとコタロウも三人の後に座って、じっとしている。


「シュウジが巻き込まれた事件と、ヒロに教えた超古代の四つの謎には、どんな関係があるのか?シュウジは、ヒロが成長するのを待っていたのかもしれない。サーヤは何故、過去のインドにいるのか?そこに行く方法を教えてください、八百万の神々!」

スガワラ先生は気持ちが昂って、声が大きくなった。


マリを救いたい一心で影宇宙に入ったヒロの後を追うには、ミウとケンも同じように一心に願わなくてはならない。


「神様、マリを救いたいんです。そのために、早くサーヤに会わせてください。ヒロは今、どこにいるのですか?ヒロのところに連れて行ってください!」

ミウは、ヒロと一緒にマリを救いたいと願った。


「俺は、サーヤを奈良に連れて帰って、マリの命を救ってもらいたいんです。ヒロは先に行っちゃったけど、ミウと一緒に追いつけるようにしてください、神様!」

ケンは、ミウと一緒にヒロに追いついて、マリを救いたいと願った。


祈り続けていた三人は疲れ果てて、洞の入り口で眠ってしまった。

薬の入ったビンの中から強烈な匂いが立ち昇っている。


その匂いに引き寄せられたように、洞の奥から三匹の竜が顔を出した。

三匹の竜は、ヒロが乗った竜の兄弟だった。それぞれ、ジリュウ、サブリュウ、シリュウという名前がある。


ジリュウはミウとカゲマルを乗せ、サブリュウはケンとコタロウを乗せた。

シリュウはスガワラ先生を乗せ、三匹の竜はものすごいスピードで、ヒロを乗せたタリュウの後を追いかけた。


「あれ、今、大きな惑星が目の前を横切ったような気がする。今のは何だったの?」

タリュウに乗ったヒロが、後を振り返りながら言った。


*** ヒロ、今のは月だよ。月は惑星じゃなくて、地球の衛星だよ。おいら達は宇宙の中の同じ場所で時間を遡っているから、地球が離れて月が近づくこともあるんだよ・・・

タリュウは、ヒロが驚いていることを楽しんでいるようだ。


「月が地球を回り、地球が太陽を回っているから、そうかもしれないけど、太陽も銀河の中心を回っているじゃないか。同じ場所にいると、太陽が近づいてきた時、僕たちは呑み込まれてしまうよ」


*** ヒロ、何億年前に太陽系が誕生したか知っているかい?

「太陽も地球もだいたい46億年前にできたって言われているよ」


*** よく知ってるな、ヒロ。太陽が銀河を一周するのに二億五千万年かかるから、太陽は誕生してからこれまでに銀河を十八週したんだよ。時間を何億年も遡るときは銀河の中の同じ場所にいるけど、十年や百年遡るときは太陽系の中の同じ場所にいるから太陽に呑み込まれることはないよ・・・


「それなら安心だけど、僕たちは何年前のインドに行こうとしてるの?」

*** どんどん時間を遡ったから、千年くらい前に来ていると思うよ。サスケ、サーヤの匂いとか声のする方向が分かるかい?・・・


サスケは耳を澄まし、鼻をクンクンさせてサーヤのいる場所を捜しながら答えた。

*** まだ分からない。だけど、影宇宙を出て捜したら分かるかも知れない・・・


*** そうだな、サスケ。じゃあ、あそこに大きな街が見えるから、そこで教えてもらえばいい・・・


「ちょっと待ってよ。サーヤは、こんな街じゃなくて、インドの山奥にいるんだよ」

ヒロが大きな街に出ることを嫌がったが、サスケは何かを感じていた。


*** ヒロ、まだ分からないけど、この街に出てみようよ・・・

*** じゃあ、ここでお別れだな、ヒロ、サスケ・・・


ヒロとサスケは、タリュウから降りて、街のはずれの岩山の洞から出てきた。

小さな岩山だが、頂上に登ると、街全体が見渡せる。


「この街は、スガワラ先生に教えてもらったモヘンジョ・ダロに似ているよ、サスケ」


街を見ながら、ヒロがサスケに話しかけたが、サスケはワンと応えた。

「サスケは、影宇宙の外では人間の言葉を話せないのか・・・」


ヒロを乗せたタリュウの後を追いかけていた三匹の竜は、タリュウがヒロとサスケを影宇宙の外に降ろしたことを感じとった。


*** サブリュウ、シリュウ、もっとスピードを上げよう・・・

*** そうだな、ジリュウ、シリュウ。急がないと、ヒロを見失ってしまう・・・

*** よし、急ごう、ジリュウ、サブリュウ・・・


「エーッ、お前達は人間の言葉を話せるのかあ!」

スガワラ先生は、ビックリしてシリュウから落ちそうになった。


「先生、俺もビックリしました。サブリュウ、お前の名前はサブリュウっていうんだな」

*** そうだよ、ケン。そして、こっちの竜がジリュウ、あっちがシリュウ・・・


*** ケン、影宇宙の中ではおいらも人間の言葉を話せるよ・・・

コタロウがケンの心に直接話しかけてきた。


「えーっ、コタロウも俺たちの言葉を話せるのか!」

「影宇宙の中って、不思議なことばかりだね!カゲマルは、ヒロのいる場所がわかるの?」


*** ミウ、もう少し時間を遡ったらヒロとサスケに追いつけるよ・・・

カゲマルがミウの心に直接応えた。


「ヒロは、どこに向かっているんだろう?危険な場所じゃなきゃ、いいんだけど・・・」

ミウが小さな声でつぶやいた。


三匹の竜はぐんぐんスピードを上げて時間を遡って行く。


*** ミウ、随分ヒロのことを心配しているねえ・・・

ミウを乗せたジリュウが、直接ミウの心に語りかけた。


「だって、ヒロは・・・」

ミウは、ヒロのことを想うと胸が熱くなることに気づいた。


しかし、ヒロはマリを救いたい一心でミウの気持ちに気づいていない。

一方、ケンは幼い頃からミウが好きだった。

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