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4節 命を救える特殊能力(2)

「ばあちゃん、支度できた?そろそろ大仏殿に行かなきゃ、いい席に座れないよ」


ヒロがばあちゃんに声をかけた時、外でサスケがワンワンと激しく吠えた。

「どうしたんだ、サスケ。何かあったのかな?」


「変だね、サスケがあんなに吠えるなんて・・・先に大仏殿に行きなさい、ヒロ」

ばあちゃんは胸騒ぎがして、ヒロとサスケを先に行かせた。


同じ頃、マリの家では、ヒショウが突然三度鳴いて、バサバサと大仏殿の方角に飛び立った。

出掛ける支度をしていたマリの両親は、悪い予感がして慌てて家を出た。


「忍びの近道を通って行った方が早いぞ」

マリの父親がマリの母親の手を引いて忍びの近道に向かって走った。


一方、ケンとミウは大仏殿に向かって歩いていたが、コタロウとカゲマルが突然走り出した。


「何か起こったんじゃないか。急ごう、ミウ」

ケンとミウも大仏殿に向かって走った。

その上をヒロのつむじ風が追い越して行った。


「ヒロとサスケが大仏殿に向かって飛んでるよ。やっぱり大変なことが起こったんだ」

ミウとケンはつむじ風を追って必死に走った。


ヒロより先に飛んできたヒショウが大仏殿の前の池に降りて行く。

「あーっ、マリ!どうしたんだーっ!」


つむじ風になって飛んできたヒロは、ミウの父親がマリを抱きかかえているのを見て、大声で叫んだ。


「マリは大丈夫でしょ?どうしてこんなことに・・・」

マリのすぐそばに降りたヒロは、ミウの父親に訊いた。


「頭と背中を強く打ったようだ。意識がない・・・早く医者に診てもらわないと・・・」

ミウの父親はヒロに答えながら、救急車を捜している。


そこにケンとミウが、息を切らして駆けつけた。

「マリ、マリ、しっかりして!マリ・・・」


ミウは泣き出しそうになった。

そこに、ようやく救急車が一台到着した。


「この子は意識がないから、大至急病院へ運んでくれ!」

ミウの父親が救急車に向かって叫んだ。


「まさか・・・あっマリ、マリ・・・」

息を切らしながら走ってきたマリの母親が、マリに駆け寄ってきた。


「マリ、マリ・・・聞こえるかい?目を開けておくれ・・・」

マリの父親もマリを抱きかかえて必死に声を掛けたが、マリの意識は戻らない。


救急車に乗せられたマリと一緒に、両親も救急車に乗って病院へ向かった。


隣の中学校の六人は、マリがかばったので重体になった生徒はいなかった。

しかし、六人とも大怪我をしていたので、救急車で病院に運ばれた。


「今、救急車とすれ違ったけど、何が起こったの?」

忍びの近道を通ってきたヒロのばあちゃんが、ようやく事故現場に到着した。


「マリと隣の中学校の生徒達が、トラックにはね飛ばされたんだよ。マリが意識不明になって、救急車で病院に運ばれたんだ。ばあちゃん、一緒に志能備病院に行こうよ」


ヒロは、マリのことが心配でたまらない。

ケンとミウも、ヒロ達と一緒に忍びの近道を通って志能備病院に行った。


病院では、マリが緊急手術室に運び込まれ、医師と看護師達が慌しく動いていた。

手術室の扉が閉められると、マリの母親は目を閉じて神様に祈り続け、マリの父親は忍術の呪文を唱えながら廊下を行ったり来たりした。


ヒロもばあちゃんも、黙ったまま手術室の外で、手術がうまくいくように念じている。

ミウとケンは、マリを助けるための忍術の呪文を必死に思い出そうとしていた。


六時間が過ぎて手術室の扉が開き、医師が出てきた。


「先生、マリは助かりますよね!先生・・・助けてください・・・」

マリの母親が医師に走り寄って訴えた。


「できることは全てしましたが、まだ意識が回復しません。頭と背中に強い打撲を受けて、脳内出血を起こしました。その出血によって、生きるための機能に障害が発生したようです。手術によって出血は止めましたが、容態が不安定なので今夜は医師と看護士が見守ります」


医師は長時間の手術で疲れきっていたが、最善を尽くそうとしていた。

手術室から看護士がマリを乗せたベッドを押して出てきた。


「シラカワさん、マリの手を握ってあげてください。ご両親の気持ちをマリに伝えて、意識が回復するのを手伝ってあげてください」

看護士は、マリの家族をよく知っているケンの母親だった。


「マリ、お母さんよ。聞こえる?ねっ、マリ、マリ・・・」

「マリ、お父さんだよ。早く治って、歌を聴かせておくれ・・・」

マリの両親は、しっかりとマリの手を握って必死に話しかけたが、マリの反応はない。


看護士がベッドを押して、マリの両親とともに集中治療室に入って行った。

ヒロとばあちゃんは、集中治療室に入って行くマリを見送るしかなかった。


ミウとケンは、マリを助けるための薬草を捜しに、忍者中学校の薬草園に向かった。


翌日の日曜日の朝、ミウは食事の支度をしている母親のクロイワ先生に薬草の相談をした。


「現代の医療でマリの意識を回復できないんだから、忍者の薬草でも無理よ。それに、志能備病院しのびびょういんのお医者さんは忍者の薬草にも精通しているのよ」

クロイワ先生は、ミウの肩を抱いて優しく言った。


その台所に、ミウの父親が入ってきた。

「昨日マリ達をはね飛ばしたトラックの運転手は、例のヤミに唆されて、有名な国会議員を襲おうとしていたようだ。我々警官が事前に気づいたから国会議員を守ることができたが、マリがその身代わりみたいになってしまった。マリ達を守れなくて、実に悔しい!」


ミウの父親は、野武士のような顔を真っ赤にして悔しがった。


「ヤミって、ヒロのおじいさんを殺した犯人が関係していた謎の組織か人物・・・」

ミウが驚いて父親の顔を見た。


朝ご飯を食べ終わった頃、玄関でケンがミウを呼ぶ声がした。

「ミウ、病院へ行ってマリの意識が戻るように声をかけようよ」


ケンとミウが病院に着いて中に入ると、ヒロがマリの担当医師と話をしていた。

「どうしてマリの意識が戻らないんですか?先生はすごいお医者さんで、しかも忍者でしょ?先生が治せないなら、誰が治せるんですか?」


「私より手術の上手な医者は他の病院に何人かいるよ。でも、マリの場合は、脳の中に致命的な傷が出来たから、自分で呼吸するのも難しいんだ。今は人工呼吸器を着けて生きているけど、脳の中の傷を治さないと、いつか死んでしまう。私の知っている優秀な医者達に、脳の中の傷を治す方法を聞いているんだけど、誰も無理だと言っている」


医師は、昨日の手術の後、マリの治療をしながら、他の病院の専門医師達に連絡をしていたのだ。


「マリの意識が戻るように、声をかけたいんですが・・・」

ケンがヒロの後から医師に話しかると、医師は溜め息をつきながら静かに答えた。


「あっ、ケン。マリは昨日と同じ集中治療室にいるよ。君のお母さんが見守っているから行ってみなさい」

ケンとミウは医師にお礼を言って、ヒロと一緒に集中治療室に向かった。

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