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3節 超古代の四つの謎(2)

「先生、じゃなかったガイドさん!警備員に捕まってしまいますよー!」

すぐそこまで近づいて来た警備員を見て、生徒達が大声をあげた。


一人の警備員がジャンプして絨毯をつかもうとした時、絨毯はフワフワと少しだけ高く浮上したので届かなかった。


「ううーん、エネルギーが足りないから、これ以上浮上できない。みんなのエネルギーを集中して、一緒に絨毯を浮上させてくれっ!」


現地ガイドの姿のまま、声だけスガワラ先生に戻ってしまった。

先生はかなり焦っている。


「ハーッ」、「ヤアッ」、「フーッ」、「ムッ」、生徒達がそれぞれ気合いを入れると、絨毯がフワーッと浮上した。


「いいぞ、みんな、良くやった!よーし、ここから脱出しよう」

ホッとした顔になって先生が前を見ると、その視線の先に向かって絨毯が飛んで行った。


「もう一つ大きな謎があります。何故、こんな巨大な文明が崩壊して滅んでいったのかという謎です。その謎を、これから皆さんに調べてもらいます」

先生の声が現地ガイドに戻っている。


絨毯は誰もいない所を選んで飛んで行った。

博物館に近い空き地に誰もいないことを確かめて、絨毯からみんなが降りた。


「目の前に遺跡も博物館もあるから、変装術、心理術、侵入術、幻術の総合力を使って、自分の力で謎を調べてください」

先生が静かな声で指示すると、観光客に変装した生徒達は各自それぞれ動き出した。


しばらくして、自分の父親に変身したケンが戻ってきて、先生に報告しようとした。

すると、向こうから自分の母親に変身したミウも戻ってきた。


その後から、ばあちゃんに変身したヒロも戻ってきた。

そして、マリもジョウもミキも・・・全員戻ってきて、先生の周りに集まった。


「じゃあ、早く戻ってきた順に報告してもらいましょう。最初はソラノさん」

現地ガイドの声で、先生がケンを指名した。


「三人の観光客から別々に、こんな話を聞きました。モヘンジョ・ダロの謎の一つとして、黒いガラス質の石がびっしりと地面を覆っている場所があるそうです。その八百メートル四方の場所の表面は、砂やレンガが瞬間的に二千度以上の高熱を浴びた結果、融けてガラス状に固まったと推測されています。しかも、その場所では、通常の五十倍も高い濃度の放射能が検出されたそうです。 その場所で何千年も前に、核爆発が起きたのではないかと言われているそうです。でも、三人の観光客は、その場所がどこにあるのか知りませんでした」


ケンが父親に似た太い声で報告すると、十人の生徒達が口々に、同じ話を聞いたと言った。


「その話は、もっと詳しく調べる必要がありそうですね。次は、クロイワさん、報告してください」

先生がミウを指名すると、ミウが自分の母親と同じ落ち着いた声で話した。


「博物館の中の展示物や資料を調べて、分かったことを報告します。古代インドの二大叙事詩を知っていますか?マハーバーラタとラーマーヤナですが、その中には、神々の戦争シーンが描かれた箇所があります。水銀と強風を動力にして滑空するヴィマナという飛行機は、強烈に輝く火炎を噴射して、もの凄い轟音ごうおんとともに空高く雲の上に昇って行くということです。 その飛行機に乗っていた神々の一人が都市に向かってアグネアの矢を投げると、その都市は太陽よりも激しく輝いて、生物は死に絶えて灰になってしまったと書かれています。

二つの叙事詩に描かれていることと、ケンが報告した高熱を浴びた場所との関係は不明ですが、叙事詩の中にモヘンジョ・ダロの滅亡の謎を解く鍵がかくされていると、博物館の人が言っていました」


ミウの報告を聞いて、九人の生徒達が同じような話を聞いたと言った。


「興味深い内容ですが、モヘンジョ・ダロ滅亡の謎は益々深まりますね。次は、アオヤマのおばあちゃん、報告してください」

先生は興奮した様子で、ばあちゃんに変身したヒロを指名した。


「インド人の観光客と博物館の人から聞いたことを報告しますよ。このモヘンジョ・ダロ古代都市の起原は六千年前か七千年前と推測されるので、世界最古の都市文明ということになるそうです。だけどね、今から十年前に、インドのカンベイ湾の深さ四十メートルの海底から、九千五百年前の超古代都市の遺跡が発見されたということですよ。その都市遺跡の建物跡や道路跡の様子はモヘンジョ・ダロ遺跡に似ているそうです。しかもその都市は、一万三千年前に造られたと推測されているので、カンベイ湾の古代都市が世界最古の都市文明ということになりますねえ」


ばあちゃんらしい静かな声でヒロが報告すると、七人の生徒達が似たような話を聞いたと言った。


「モヘンジョ・ダロの最古の遺跡が七千年前なのに、それより六千年も前にカンベイ湾の超古代都市が造られていたというのは驚きだな。しかも、その超古代都市が海に沈んだ理由も謎だ。超古代インドの謎を解くのは時間がかかるということが分かったので、一度教室に戻ろう。さあ、みんな、この指先を見ろ!」


スガワラ先生が突き出した左手の人差指を、生徒達が見た瞬間に、モヘンジョ・ダロの遺跡も博物館も消えて、生徒達は元の教室の中に戻っていた。


ヒロが何気なく窓の方を見ると、外からサスケとカゲマルが教室の中をのぞいていた。

スガワラ先生は、もの凄い速さで幻PCのキーボードを叩いている。


ヒロはミウに合図をして、先生に内緒でサスケとカゲマルを教室の中に入れた。コタロウも後からついて中に入ったが、生徒達は黙ってその様子を見ていた。


気がつくと、教室前方の奥の空間にエジプトのピラミッドらしい三次元映像が現れた。

先生がキーボードから顔を上げて、生徒達に言った。


「今度は、超古代エジプトの謎を勉強するぞ。みんなは、ギザの三大ピラミッドがいつ頃造られたか知ってるな?ギザの大スフィンクスは、それより以前に造られたんだが、謎が多い。大スフィンクスの建造年代は、九千年前から七千年前ということになっている」


「大スフィンクスを造ったのは誰だったんですか?」

科学好きのロンが身を乗り出して質問すると、先生は両手を広げて答えた。

「これまでの研究では、造ったのは古代エジプト人ではないという説が有力だ」


「古代エジプト人じゃなければ、誰なんですか?」

大柄なミキが立ち上がって質問すると、先生は待ってました、という顔で言った。


「それが今日勉強する謎だ!七千年前より古い時代の記録は、ほとんど残されていない。しかし、古い時代の記録が大スフィンクスの中に隠されていると考える研究者がいるんだ。その記録を見つけて解読すれば、大スフィンクスを造ったのが誰か分かるはずだ!」


「でも、どうやって大スフィンクスの中にある記録を見つけるんですか?」

身軽なヨウが腰を浮かして質問すると、先生は生徒達を見回しながら話を続けた。


「ヘロドトスというギリシャの歴史家のことは、みんな知っているな?ヘロドトスは二千四百年前にエジプトを訪れて、三大ピラミッドの地下にある隠し通路と隠し部屋について記述している。その隠し通路は、大スフィンクスの地下まで続いていると記述されているんだ。大スフィンクスの前足の後ろに隠し通路の入り口があるから、そこから中に入って古い記録を見つけよう」

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