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2節 忍者学校の厳しい訓練(7)

「先生!小さくなるんじゃなくて、ガリバーのように大きくなる術を教えてください」

小さくなりたいとは思っていなかったマリが、誰よりも早く大きくなる術を教えてくれるよう頼んだ。


「なんだ、マリは小さくなることをもうあきらめたのか・・・ 大きくなる術も基本は同じだ。心のエネルギーを集中させて、東大寺の大仏のように大きくなるよう念じるのだ!いんを結んで呪文を唱える時は、 『大仏、大仏、ゾウヤママクロ』と繰り返し唱えて、心のエネルギーを集中するんだ」


かすれ声のスガワラ先生の説明を聞いて、マリは

「ガリバー、ガリバー、ゾウヤママクロ」

と熱心に繰り返した。


マリは、どうしてもガリバーのように大きくなりたいのだ。

教室の中には、まだ小さくなる呪文を繰り返している声と、大きくなる呪文を唱えている声がガヤガヤと入り交じっていた。


「おおっ!スピーカーに変身している。これは誰だ?」

スガワラ先生が、人間とほとんど同じ大きさの丸みを帯びたスピーカーのようなものに近づいて声を掛けた。


すると、丸みを帯びたものが窮屈きゅうくつそうな声で答えた。

「ミキですよー!これ以上小さくなるのは無理ですー」

大柄でふっくらしたミキは、精一杯小さなスピーカーに変身していた。


ミキの集中力をめた後にスガワラ先生が見たものは、人間の二倍くらいの大きさの大仏だった。

「おっ!今度はヒロが大仏に変身できたのか。初心者にしては、上出来だ!」


「はい。変装術を使えば簡単に仏像の形になれるけど、大きくなるのは難しいなあ」

ヒロが悔しそうに答えると、先生はみんなを見渡して言った。


「みんなにはまだ難しいだろうが、ミキとヒロの二人はできたぞ!心のエネルギーを集中すれば必ずできるから、毎日自分で練習しろ。さてと、つぎは最新科学を使った術を教えるぞ」


「先生、クローン技術を使えば、凄い分身の術ができると思います」

早速、科学好きのロンが、嬉しそうに腰を浮かして言った。


「それを実用化するには、時間とカネがかかるんじゃないか、ロン?じゃあ、みんな、これは何だと思う?」

先生は、着物のふところから二枚の羽の生えた丸い小さな物体を取り出して机の上に置いた。


「羽があるから、空を飛ぶ偵察飛行物体でしょう。情報収集に使うものですね?」

まっ先に、ミウが自信ありげに言ったが、先生は首を横に振ってその物体を高く放り上げた。


そして、その物体が途中まで落ちてきた時に、先生が「ヤッ」と掛け声をかけた。

すると、垂直に落ちてきた丸い物体が直角に曲がり、スッと真横に飛んで先生の両手の中に入った。


それを見た生徒達が歓声を上げた。

「オオーッ!凄い、凄い!どうなってるんだ???」


「物体は地球の重力に引き寄せられて落ちるが、二枚の羽に特殊な力を加えると瞬間的に重力の方向が変わるんだ。その方向は、掛け声によって変えられるが、厳しい訓練が必要だ。この二枚の羽は、最新科学を使って作った重力操縦羽という秘密の装置だ」


先生の説明では、二枚の羽と最新科学の関係を生徒達は理解できなかった。

それでも、身軽なヨウは、先生が期待していたアイデアを言った。


「俺が重力操縦羽をつけて高い所から落ちれば、途中で好きな方向に飛べるってことでしょう?やってみたいなあ・・・」


「ヨウ、いい考えだ!しかし、訓練する前に飛び降りたら大怪我をするぞ。小さな丸い物体を自由に操れるようになるまで訓練しろよ」

先生の厳しい言葉に教室のあちこちから溜め息が聞こえた。


しかし、先生は気にする素振りも見せずに教室を歩き回りながら、懐から三ミリメートル四方の小さな四角い薄いものを出した。

「次はこれだ!この凄く小さな四角いものが何だか分かるか?」


「情報収集に使うための、高性能の盗聴器でしょう」

また、科学好きのロンがまっ先に答えたが、先生は首を横に振って自慢げに説明を始めた。


「この中には、中学一年生用の数学の知識が全部入っている。その知識は微弱な電波になって外に出ている。これを額に貼付けて、その知識を自分の脳にコピーすれば、あっという間に数学ができるようになる。しかも数学だけでなく、外国語、理科、国語、その他何でもこんな小さなものに入れてしまうことができる」


「すっごーい!先生、それがあれば学校で勉強しなくてもいいんですね?」

マリが目をキラキラさせて喜んだが、先生は意地悪な顔になって笑った。


「ハッハッハ、知識を自分の脳にコピーする方法は簡単じゃない。基本的な学力と能力が必要だぞ。心のエネルギーを脳に集中させるんだ。できるようになるまで毎日、必死に練習しろよ」


「はい、毎日練習して普通の科目の知識を全部コピーします。そうしたら、武術の訓練に集中できますから」

もっと強い忍者になりたいと思っているケンが、真剣な顔をして言った。


ヒロは、この技術をもっと別なことに使えばいいのにと思ったが、それが何かはっきり分からなかった。


「わたしは難しい忍術の知識をコピーしたいな。普通の科目は、学校で勉強する方が楽しいからね」

ミウは薬学だけでなく、いろいろな忍術の知識をもっと知りたいと思っているが、みんなと一緒に勉強するのも好きだ。


「時間が来たので、今日の残りは明日の歴史の授業で教えてやる。その中で、幻術の応用も実践するから楽しみにしてろよー」

先生は、さっさと荷物を片付けて教室を出たが、振り返ってヒロを呼んだ。

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