2章6節 シュメールの神々(1)
「ヒロたち皆は四千年前の古代メソポタミアに現れたが、その少し前に洪水が起こっていたのじゃ」
校長が話し始める。
「五千五百年前の大洪水の後も洪水は繰り返し起こった。
四千年前の洪水の後には、やっかいな感染症が流行したのじゃ」
「その危機に乗じて、ジゴクの魂が高度な医療技術で感染症を抑える方法を地方の豪族に教えた。
さらにジゴクは、感染症の作り出し方、蔓延させ方を教え、混乱に乗じて都市国家を征服させようとしているのじゃ」
「ジゴクの魂って、何のことですか?早く教えてください」
我慢できなくなったマリが声を上げた。
「シュメール惑星のアンは、スフィンクス惑星から移住した者達と人工知能ロボット達を統治していたシュメール惑星の最後の指導者じゃ。
アンは魂を作って、高度に発達したシュメール文明を未来につないだ」
「シュメールの魂の中には、スフィンクス惑星のホルス、アモン、シュメール惑星のヌト、アテンという偉大な指導者がいた。
シュメールの魂は、高度な文明を受け継ぐことのできる惑星を探して宇宙に旅立ったのじゃ」
「その前に、アンは耐久性に優れた材質でロボットを作り、高度な人工知能を組み込んだ。
そうして多数作ったロボットを高速ロケットに乗せて、近い距離にある惑星に送ったのじゃ」
「その惑星に降り立ったロボットたちは、その惑星にある材料で自分に似たロボットを製作した。
シュメール惑星生まれのロボットたちは、製作したロボットを子孫として教育したのじゃ」
「しかし、子孫達は期待に反して独裁的な国家を複数作って、互いに激しく争った。
最終的にその惑星を支配したのが、独裁者ヤミじゃ」
「ヤミって、父さんが戦っている巨大な敵のことですか?でも・・・」
サーヤが疑問を口にする前に、ヒロが校長に質問する。
「ロボットのヤミが、どうしてヤミの魂になったんですか?」
校長の説明が始まる、
「その惑星が数千万年前に消滅する前に、ヤミはアンを真似て魂を作り始めた。モヘンジョ・ダロに現れたアンコク、そしてシュメールの地方豪族を唆すジゴクじゃ」
「さらにヨミ、エンマ、アクマ、グレンという四つの魂を宇宙に放った。いずれヒロ、サーヤ、ミウ、ケンが戦うことになる敵じゃ」
「最後にヤミは強烈な独裁者の魂になって、宇宙に旅立った。ヤミの魂は独裁が最善の制度だと信じて、宇宙の中に独裁者の世界を広げようとしているのじゃ」
「そうか、ヤミがアンコクとジゴクを作ったのか」
ケンがつぶやくと、ミウが校長に話の続きを促す。
「ジゴクが作り出したシュメールの混乱はどうなるんですか?」
「うん、ヒロたち皆は、感染症の予防法を都市国家の神官たちに教えるのじゃ。
サーヤは、治癒能力を使って多くの感染者を助けるぞ」
「ミウは、母親に教えてもらった知識を生かして薬草を作った。その薬草を神官たちに与え、治療薬の作り方を教えたのじゃ」
「しかし、ミウに教えられた新しい治療薬を取り入れようとする神官は壁に突き当たる。シュメールの魂に教えられた薬だけを使う神官たちが、ミウの治療薬を認めないのじゃ」
「地方の豪族は、ジゴクに教えられた医療技術で感染症を抑えることができた。そこで、混乱しているシュメールの都市国家を侵略し始めるのじゃ」