2章4節 アトランティスと古代エジプト(3)
校長の話が途切れないので、ヒロが質問する。
「国家という概念が消えて惑星の住人が平和になるって、すごいことですね。その知恵もスフィンクスの中に隠されているんですか?」
「多分、隠されていると思うが、探してみないと分からんな」
そう言って、校長は話を続ける。
「しかし、大国になろうとするアトといくつかの大国が戦争になり、敗れたアトは大国リカに支配されたんじゃ」
「復興国キチは小国チスを侵略したが大国リカが阻止したため、キチとリカは小国チスをチョキとチョカに分割してしまった。
チョキは新興大国キチと、チョカは大国リカと同盟国になることで、生き延びたんじゃ」
「小国チョキとチョカの国王たちは、新興大国キチと大国リカを恨んでいるが、何もできない。数年後には敗戦国アトが大国リカの同盟国として復興した」
「小国チョキとチョカの国王たちは、アトに対する恨みを晴らすために国民を扇動し始めた。
その扇動によって、小国チョキとチョカの国民は、百年以上もアトを恨み続けているのじゃ」
「国王のラーは自分で区切りをつけたいと決意した。しかし、百年前のアトの神官マツが、戦争犯罪者として処刑された軍人達を軍神として神殿に祀ったことが事態を複雑にしている」
「その神殿にアトの政治家達が参拝するたびに、小国チョキとチョカの国民は恨みを募らせておる。しかしアトの中では、戦犯として処刑された軍人達の末裔の多くが、神殿に祀っていてほしいと思っているのじゃ」
「ラーの時代になると、大国リカは力が衰えて自国の利益を確保することに躍起になり、アトの支援をできなくなった。
その機を逃さず、新興大国キチが小国チョキとチョカの国民を扇動して、アトの国境の街を侵略し始めたんじゃ」
「アトは百年前の敗戦によって軍隊を持たない国になったので、侵略に対抗するため急遽自衛軍を組織した。ラーはその自衛軍を指揮して侵略軍に立ち向かったが、殺されそうになる。
そこに影宇宙からケンとヒロが現れて侵略軍を追い払うんじゃ」
じっと校長先生の声を聞いていたケンが、笑顔をみせる。
「やっと、俺の出番がまわってきたぞーっ」
一息ついた校長が、また話し始める。
「しかし、自衛軍の内部で対立が起こる。神殿に祀った戦犯を神殿から各自の遺族の墓に移すというグループと、その動きを阻止するグループの対立じゃ」
「どちらのグループもラーを取り合って、内戦に発展する。
そこで、ヒロとケンが双方を説得して、戦犯を各自の遺族の墓に移すことにするんじゃ」
「その後、小国チョキとチョカの国民が恨みの攻撃対象を見失ったので、アトに束の間の平和が訪れた」
「ヒロ達は、スフィンクスに隠されたアトランティスとスフィンクス惑星の叡智をラーに見せてもらう。しかし、高齢になったラーの後継者争いで内乱が起こり、ヒロ達は影宇宙に逃れることになるんじゃ」