2章4節 アトランティスと古代エジプト(2)
「待て、ケン。助けるって、誰を助けるのか、分かってるのか?」
ヒロは、今にも影宇宙から飛び出そうとしているケンを座らせた。
「そうよ、まだ地球に戻っていないのよ」
ミウが厳しい表情でケンを見つめる。
「父さん、超古代エジプトの人達って、いつ頃のどんな人達なの?」
サーヤがサスケの口元に向かってたずねる。
「アトランティスが一万千四百年前に海中に消えた後、アトランティスの古代人達はアフリカ大陸とメソポタミアの沿岸部に移動していった。そのアフリカに移動した人達の子孫がエジプトに国を造った」
サスケの口からシュウジの声が聞こえる。
「その国の国王を助けてほしいそうだ。今から八千年前のエジプトだよ」
ケンがヒロを見て大きくうなづいた。
その時、竜の胴体の奥から奈良の忍者学校の校長の声が響いた。
「こんなにゆっくり物語を進めていては、わしが生きている間に最終話が完結しないぞ」
皆が驚いていると、校長の声が竜の胴体の奥から響いて来る。
「ヒロ達は影宇宙の中を通って、八千年前のエジプトに現れる。
そこに国王のラーがいた。ラーは小国アトの国王じゃった。
小国アトは、アトランティスから逃れて来た人々が造った国じゃ」
「八千年前にエジプトにいた古代人達に惑星チイの魂が啓示を与えて、スフィンクスを築かせた。
古代人達の中で最も良く啓示を理解したラーが小国アトの国王になったんじゃ」
「ラーはアトランティス王家の末裔で、アトランティスの文明や歴史を伝説として知っていた。
ラーは、惑星チイの魂の啓示とアトランティスの伝説を合わせたものをスフィンクスの中に隠した。」
「惑星チイには、ヒロたちが訪れる前に驚くべき歴史があった。
惑星には数多くの国家があったが、少数の強国が覇権争いをしてどの国の国民も幸せではなかった」
「宗教の力で国家の枠を超えてまとまったりした時代もあったが、その宗教を原因として争ったりしていた。
原子力兵器や生物兵器などの恐怖による国家間の支配関係も長くは続かなかった」
「ある時、ある弱小国の中で国民の考え方を変える技術が発明された。それは薬品や催眠術などではないぞ。
その技術によって、国内の政治的な争いがなくなり国家としてまとまった」
「その近隣諸国もその技術によって、自ら望んでその一つの国に統合された。
強国も最初は反目していたが、その技術によって国民の考え方が変わり、最終的に惑星上の全ての国家が統一されて、国家という概念が消えた」
「惑星チイの人々は、国家という概念が消えた自分達の惑星をスフィンクス惑星と呼んだ。
考え方を変える技術とはよくわからないが、国民自身が常に他人や国民の将来を想像して適切に行動することが最も重要だという考え方になることのようじゃ」
「さて、ラーが国王になる千年以上前の超古代エジプトには数十の小国が争いながら存在していた。
長い歴史の間には互いに侵略、支配、被支配を繰り返したこともあった」
「それぞれの国の王は、実権を握っている時代もあれば、臣下の一族が実質的に支配している時代もあった。
有力な国は他の小国を支配して、いくつかの大国が造られていった」
「アトの中では、国民を豊かにするために、近隣の小国を併合するという軍隊の指導者たちが国王から実権を奪って、百年前にチスという小国を併合した。
さらに国土の広いキチの大半を支配し、すでにいくつかの大国に支配されていた小国をアトの支配下に治めたのじゃ」