2章4節 アトランティスと古代エジプト(1)
影宇宙に戻ったヒロ達は、タリュウ、ジリュウ、サブリュウ、シリュウ、それぞれの大きな口から中に入った。
「あれー、どうして皆同じ所にいるんだ?」
ケンが声を上げると、マリもロンも驚いた表情で顔を見合わせる。
「影宇宙の中で移動する間に四匹の竜達がバラバラにならないように、胴体を一つにまとめたんだよ」
サスケの口からシュウジの声が聞こえる。
「今度こそ、地球に戻って母さんのところに行くよ。タリュウ、急いで連れて行っておくれ」
ヒロが強い気持ちを表してタリュウに命じた。
「母さんは、ブッダが生きていた紀元前五百年頃のインドにいるんでしょ?父さん、詳しい場所と時代は分かるの?」
サーヤは、明確な答えを期待して、シュウジに問いかけた。
「ブッダは現在のインドの北部、ヒマラヤ南麓の小さな国カピラの皇子として生まれた。六十歳の頃は近隣のマガダ国とコーサラ国で教えを説いているはずだが、正確な時代は近くまで行ってみないと分からないなあ」
困ったような表情のサスケの口から、シュウジの声が聞こえる。
「ここから何億年も未来に向かって、影宇宙の中を移動するんでしょう?退屈しちゃうな」
マリが何か楽しいことを見つけようと、みんなの顔を見る。
「じゃあ移動中に、ラクシュミーとブッダのことを説明しておこう」
また、サスケの口からシュウジの声が聞こえる。
「ヒロとサーヤの母さんの名前はエミリという。ラクシュミーはエミリに、ブッダはラクシュミーの子孫だと教えた。そして、エミリはブッダの子孫であることも教えた」
マリはサーヤに笑顔を向ける。
「サーヤはラクシュミーとブッダの子孫だから、すごい治癒能力があるんだね。私を助けてくれて、ありがとう」
「ブッダはラクシュミーの子孫だから、人々が苦しんでいる時に治癒能力を得て人々を助けたんだ」
シュウジが話を続ける。
「エミリがブッダの時代に現れた時、ブッダは60歳だった。ラクシュミーがブッダに、エミリは遠い未来から来たブッダの子孫だと教えたので、ブッダはエミリから未来の状況を教えてもらった。そのことがブッダの悟りや教えに役立っている」
サスケの口から聞こえていたシュウジの声が、途絶えた。
しばらくして、シュウジの声がまた聞こえた。
「今、惑星チイの魂から、超古代エジプトの人達を助けてくれという要請があった」
それを聞いて、ヒロが困惑した表情でシュウジの声に問いかける。
「そんなことしてたら、母さんの所に行くのが遅くなっちゃうんじゃ無いの?」
「大丈夫だ、ヒロ。奈良を出発した時に合わせて影宇宙から戻ればいいんだよ」
シュウジの声を聞いて、ケンがみんなを見渡して言った。
「よし、みんな、超古代のエジプトの人達を助けに行こう」