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2節 忍者学校の厳しい訓練(4)

急いで先生やヒロ達が近寄ってみると、体の大きなミキがジョウを押さえつけて、ジョウの口にハシリドコロの根を突っ込んでいた。


「二人とも、喧嘩けんかをやめなさい!危険だから、その根っこを捨てて、口の中を洗いなさい!」

そう言って、クロイワ先生が二人を引き離した時には、ミキの顔が紅くほてっていた。


「ペッペッ・・・ 何をするんだ、ミキは!」

ジョウが毒草の根を吐き出しながら、フラフラと立ち上がった。


「あーら、体中泥だらけじゃないの、ジョウ。泥を払ってあげるよ」

ミキが急に優しくなって、ジョウの泥を落とそうとしたが、ジョウは気味悪がって逃げ出した。


「やめろよ、ミキ!気持ち悪いじゃないか!」

「ジョウ、待ってよー!どうして逃げるのー?」

酔っぱらったようにヨロヨロしながら、ミキはジョウを追いかけていった。


すると、あっという間にクロイワ先生がミキに追いつき、その手を握って言った。

「ミキはハシリドコロの毒で酔っぱらってしまったから、保健室に連れて行きます。みんなは教室にもどりなさい」


薬学の授業が終わり、昼食の時間になった。

この中学校の生徒達は、栄養バランスの良い美味しい給食を食べることができる。


毒草をかじってしまったミキとジョウは、まだ保健室にいたが、他の生徒達はワイワイガヤガヤ言いながら給食を食べ始めた。


ヒロの隣の席には、ミウがいる。

ミウの父親は、志能備集落しのびしゅうらく生まれの警察官だ。


「ヒロのおじいさんのことだけど、昨日わたしの父が気になることを言ってたのよ」

ミウが顔を近づけて、小さな声でヒロに言った。


「じいちゃんは六年前に事故で死んだんだよ。気になることって?」

「あれは事故じゃなくて、事件だったかもしれないって」


「どういうこと?詳しく教えてよ」

「今はみんながうるさいから、放課後、帰りながら話すよ」


ミウは、そう言った後、しばらく黙っていた。

ヒロはその話が気になったが、薬草と毒草のことをミウに質問した。


給食を食べ終わると、ケンが二人の話に加わってきた。

ケンの母親は、志能備集落育ちの看護士で、志能備病院に勤務している。


「ミウは、ほんとに薬学に詳しいな!ところで、ヒロのおじいさんのことで、俺の母さんがヘンなことを言ってたんだよ」


「じいちゃんが事故にったとき、志能備病院に運び込まれたけど、ケンのお母さんが何か知っているの?」


「うん。ヒロのおじいさんが、うわごとを言っていたらしいんだ。詳しいことは放課後に話すから、一緒に帰ろう」

ケンがそう言って、ヒロからミウに目を移した。


「偶然かもしれないけど、わたしもヒロに詳しい話をするから、三人で一緒に帰ろう・・・ 毒草をかじったミキのことが気になるから、ちょっと保健室に行ってくるね」

ミウは、ケンとヒロにそう言って、教室を出て行った。


午後からは、数学、国語、理科の授業が続いた。

現代の忍者は、時代の変化に合った知識を身につけるため、普通の学校で教える国語や数学なども勉強する。


放課後になって、ヒロはいつも一緒に帰っているマリに声をかけた。

そこに、ケンが軽そうにカバンを持ちながら、ヒロに近寄ってきた。

「ヒロ、帰りながらお昼の話の続きをしよう」


ケンの横から、ミウも三人に声をかけた。

「ヒロ、ケン、お昼の話の続きでしょ?マリも一緒に帰るよね」


「みんな一緒に帰るの?何の話をするの?」

マリは、何の話をするのか知らなかったが、みんな一緒に帰るのが嬉しかった。


「じゃあ、ミウのお父さんの話から聞かせてよ」

校門を出て、すぐにヒロが訊いた。


「ヒロのおじいさんは、六年前に自動車にはねられて亡くなったんだけど、その時の運転手が最近別の事件を起こしたらしいの。警察で調べているうちに、六年前の自動車事故は事故じゃなくて、ヒロのおじいさんを狙ってはねたようだってことが分かったのよ。でもまだ、その犯人が何故ヒロのおじいさんを狙ったのか、分からないんだって」


ミウが手短かに話すと、ケンが驚いたような表情で母親から聞いた話をした。


「六年前にヒロのおじいさんが病院に運び込まれた時、もう手遅れでどうしようもなかったらしい。でも、意識がないはずのおじいさんが、『シュウジ・・・私はシュウジだ・・・ヤミ・・・ヤミ・・・』ってうわごとを言ってたそうだよ。最近、俺の母さんが六年前のことを警察に訊かれて、憶えていたことを話したそうだ」


「ばあちゃんに訊いても、事故だったって言うから、じいちゃんは事故で死んだんだと思ってたよ。でも、シュウジって父さんの名前なのに、どうしてじいちゃんは『私はシュウジだ』って言ったんだろう?」


ヒロが困った顔をして呟くと、マリがミウとケンを見て言った。

「ミウのお父さんと、ケンのお母さんに、もっと詳しく訊けば何か分かるんじゃない?」


「そうだね。週末の土曜日ならミウのお父さんとケンのお母さんに会えるかなあ・・・。ミウ、ケン、家に帰ったら土曜日でいいか訊いてくれないか?」

ヒロは、早く真相を知りたいと焦る気持ちを抑えて、ミウとケンに頼んだ。


土曜日までの毎日、ヒロは志能備中学校で、忍者としての訓練と普通の科目の授業を受けた。


忍者は、体術、剣術、手裏剣術しゅりけんじゅつ、武器術などの武術の他、変装術、心理術、侵入術、薬学、軽業かるわざ幻術げんじゅつなども身につけなければならない。


さらに、現代の優れた忍者になるには、国語、数学、理科、社会、外国語、音楽、美術、体育などの普通の科目を全て理解する必要がある。


ヒロは、好奇心が強く集中力があるので、どんな科目もよく理解している。

しかし、弱気で慎重な性格なので、剣術、手裏剣術、武器術などの武術は好きではない。


ヒロは、土曜日が早く来るように念じながら、毎日の訓練と授業を受けた。


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