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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
6章 青年期III 王都1年目の冬休み編
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96話 買い出し!

なんでしょう。イベントのの準備買い出しって、普通の時と違ったテンションになるんですけど。

まあ、イベントが楽しいからに違いないですが。遠足のお菓子とか(遠い目)

イベントの前日でも楽しいのは、心理学的に証明できるんですよね、きっと。



 朝食の後。

 明日からの遠征に備えて、買い出しをすることにした。

 ローザとアリーは市場に食料品を、俺とサラはその他だ。


 東門前広場へ向かい、2人で歩く。


「あっ、あのう。おめでとうございます」

「ん?」

「ああ。そのう、師匠とのご婚約の件です。昨夜はアリーさんが居らしたので、申し上げられなくて」

 そういうことか。


「ああ、ありがとう」

 サラはにっこり笑った。良い子だな……いやサラの方が年上だった。


「そうだ! ラルフ様は、魔術で荷物が運べるのでしたね。申し訳ないですが。お買い物した後は、別行動でよろしいですか? 薬師ギルドへ寄りたいので」

「構わないが……ああ、いや。そっちを先に行こうか」

「え? でも」


「俺も薬師ギルドの建物へ入れるよな?」

「はあ……以前も申し上げましたが、部外者でも入場有料の専門書庫がありますから入れますけど。行って楽しいところではないと思いますよ、薬自体も売ってませんし」


「いや、是非。サラの邪魔はしないから」

「はあ……私の用は1時間は掛からないと思いますが、30分は掛かります。それでもよろしければ」

 肯いて行くことになった。


 サラ行きつけの薬師ギルドは、東門から出て南門へ向かう周回路から一筋奥に入った通りにあった。たったこれだけの距離で喧噪が静まり、馬車の往来も少なく、城内と言われてもそうかなと思える瀟洒な通りだ。


「こちらです」

「ほう……」


 冒険者ギルドに比べるとこぢんまりしてるが、煉瓦造りの3階建てだ。


「ああ、1階は受付と奥に売店と書庫、2階はギルド員向けの窓口で、私はそちらに行きますけど」

「じゃあ、1階の書庫に居る。ああ、大丈夫。サラが降りてきたら分かるから。急がなくて良いぞ!」

「はい。書庫の利用は、あちらの受付に申し出て下さい。では、また。」


 サラは不審そうな表情を浮かべて、階段を昇っていった。まあそうだろうな。一般人は用のない場所だ。


 受付にはやや年配の女性が座っている。


「非ギルド員だが、書庫を利用したいのだが」

「はい。ご入場には、3スリング申し受けます。よろしいですか?」


 なかなか良い値段だ。3スリングあれば、昼食2回はいける。

 ローブの懐に手を突っ込み、魔収納から小銀貨を3枚取り出して支払う。


「確かに。では、こちらを、首から提げて下さい。

 木札に輪になった紐が付いたものを渡された。札の真ん中に魔石が嵌め込まれている。盗難防止の魔導具らしい。


「あと注意点ですが、魔導鞄をお使いになりますと、警報が鳴る仕組みになっております。お使いになる場合は、ご面倒でも、こちらへ戻ってお使い下さい。書庫はこの廊下の突き当たりを右です。閉庫は17時です」


「ありがとう」

 冒険者ギルドの受付と違って愛想がない。必要も無いのだろう。


 ところで魔導鞄を使ったかどうか、どうやって感知するのだろう。気になるが……まずは本来の目的を果たそう。

 札を首から提げて、書庫に入る。


「むっ!」

 ビリっと来た。

 危ない。僅かだが魔導波を感じて、一瞬反撃しそうになった。この札が念頭にあったから咄嗟に思い留まったが。


 この魔導波で、札の紋章魔術が起動するということだな。発動した術式は……俺の重量を測ったようだ。ここを出るときに重くなっていたら、発報するのだろう。本を盗って替わりの重さの物を置いてくれば……やらないけど。


 書棚が集まる方へ歩いて行くと、チリチリする。魔導波が皮膚を撫でていくようだ。服を脱ぐときピリピリくるヤツに近い。気にしないようにもできるが……いや、そうしよう。


 こっちが書棚の並び、あっちが閲覧机か。真ん中に司書がいるな。何か睨まれた。薬師はローブ着ないのか?


 俺が見たいのは……有った。

 生薬──


 棚と棚の間に入る。

 背表紙を眺めながら、一冊の厚い本を引っ張り出す。3ダパルダ(2.2kg)はあるが、軽い物だ。


 ジギタリス、マオウ、ベラドンナ、キナ……薬種も興味深いが……載ってないな。

 本を戻す。


 ん? なんだ?

 再び引っ張り出して、裏表紙をめくって見る。こっちも紋章か、装丁の内部にミスリルの箔で捺された図形が、感知魔術で透けて見える。


 えーと。こっちは何だ……魔導波が来たら共鳴するだけか。魔石が付いてない段階で完全に受動的だし出力も弱いな。意味が分からないな……って、薬を調べに来たのに。うゎぁ気になって仕方が無い。


 戻そう……あれ、まただ? この本が、魔導波を発した。いや、さっきのピリピリ、魔導波だ。その周波数が変動していくので、気持ち悪いんだ。自然だとほぼ変動しないからな。集中できんな。魔術師に嫌がらせしているのか。


 しばらく本を持って居るとまた共鳴した。約10秒ごとに共鳴してるっていうか、こっちの本もだ。全ての本に紋章が忍ばされていて、微妙に違う時点で共鳴してるわけか。盗難除けの仕組みなんだろうけど、機能が分からないな。

 逆か!

 共鳴が起こらなくなれば、魔収納に入庫したと判断される。つまり魔収納除けの防犯の仕組みか。


 ふむふむ。空間は気持ち悪いけど、疑問はなくなって少しすっきりした。

 本来やるべきことに戻ろう。


 どうも上手く調べられないなあ。薬の材料である薬種じゃなくて、薬効の分類から調べた方が良いのか。


 こっちかな……おお、あるある。回復薬、回復薬……現代回復薬の典型的薬効成分か。装丁の汚れと痛み具合で、この本がよく読まれていることが分かる。

 閲覧机へ持って行って、じっくり読むとしよう。


 薬学の書籍を読み込んでいると、司書の女性に眉を顰められた。


 どうやら、本の扱いのようだ。大丈夫!

 本を痛め無い程度までページを繰る速度を落としている我慢している。慣れているからな。

 5冊ほど読んで、俺が知りたいことは、大体分かってきた。

 傍証の強化のために、もう1冊を読むか、どうするか。少し喉が渇いたなと思った時、サラが1階に戻ってきたと感知魔法が知らせてきた。

 まあ、よく使われている薬の、まあ下級薬までだが、薬効成分と製造方法は憶えた。館に帰って、エルフの遺産と比較してみよう。


 書庫を出て、受付に戻ってくるとサラが待っていた。窓口に入庫札を返却する。


「へえ。やはり書庫に行かれていたんですね。薬にご興味があるんですか?」

「ああ、少しな。じゃあ、買い出しに行くか」

「はい」


 東門前広場から周回馬車に乗って、西門前広場へやって来た。

 見た感じは、東門とよく似ている。設計が対称だからだ。


 初めて来たわけではないが、あまり歩き回ったことはない。完全に対称ならば市場はこっちだが……。


「やはり市場はこっちだな。行ってみよう」


 結構賑わっているな。長く続く煉瓦造りの常設市場を進んでいく。この辺りは食料品の店舗が並んでいる。人並みを掻き分けていくが、女性ばかりだ。すれ違う度にチラチラと、俺の方を見ていく。


「ラルフ様。こちらのようです」

 サラの言葉にしたがって、一筋北側に移る。

 ふうう。

 さっきまでの喧噪が嘘のように人出がまばらになり、気温が季節相応に下がった。


 店の種類も変わった。古着屋、雑貨屋の類いが主体になっている。似たような店が多いので、看板を確認しながら。


 有った。ギデオン商会。


「サラ、ここだ!」

「はあ。何やら東方趣味の店構えですね」

「うむ。まあ、趣味じゃないんだがな」


 扉を開けて店舗に入る。


「いらっしゃいませ」

 年配の男が奥から出て来た。


「ああ。スワレス伯領の商人バロックの紹介で来た」


 深い眼窩の奥から、黒い瞳で俺を眺める。


「タニィ ネル、ラルフ?」

 お? 


テイーム(そうです)! ウグローニー(おはよう) メンドゥ(ございます)

 横でサラが、目を丸くしている。

「ははは。ウグローニー メンドゥ。古い友人が手紙に書いていた通りの方のようだ。どんな御用でしょう。このギデオンがお役に立てることなら、よろしいのですが」


 へえ。何て書いてあったんだか。



「ご店主。こちらに東方の物品が多くあると聞いたが」

「まあ、それなりに」

「では、ゲルという物が有れば、購入したいのだが」


 店主は口角を上げて笑った。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2018/07/14 誤字(Knight2Kさん,ありがとうございます)

2021/05/08 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

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